VRゲームでも運と愛し合おう!

藤島白兎

文字の大きさ
上 下
225 / 305
第四章 縁と結びで縁結び

第七話 演目 言い方を変えれば戯れ

しおりを挟む
 明らかに可笑しい状況である、誰から見ても相思相愛な2人。
 相手の言った通りに、風月と縁が殺し合いを始めてしまったのだ。
 だがその疑問を投げかける者は居ない。
 そもそも本気で殺し合うなら、全力で絆が止めるはずだ。

「界牙流! ただのけり!」

 風月が何時も通りの先制攻撃、縁はいとも簡単に吹き飛んだ。
 いつだったか、風月がクラリアと手合わせした時と同じ様に。
 木々をなぎ倒し、山に新しいトンネルを掘り、海を割った。
 だがしばらくして、縁は風月の目の前に立っていた。
 見るからに大怪我だが、縁は不敵な笑みを浮かべている。
 そして、風が周りの木々や大地を使って、音を奏でていた。

「やるな」
「ん? 演奏術の移動方法? いつの間に」
「君とずっと一緒に居たんだ、これくらい出来る」
「あらあら、素敵な告白ね~」

 風月が縁に向けて、殺意をむき出しにした顔をした。
 絶対に愛する人にはしない。
 しかし、よく見れば楽しそうに笑ってもみえる。
 まるで『子供同士のごっこ遊び』をしているかの様に。

「縁、ここからはお喋り無しだ、本気で殺してやる」
「面白いな人間、いや仙人か? 神に勝てると本気で思っているのか?」

 もうここからは、神話で語り継がれるような戦いだった。
 お互いの技で、木々は吹き飛び大地は割れる。
 縁も風月も周りは気にせずに、強力な技をガンガン使う。
 焼け野原、いや、荒野になろうとも2人の戦いは終わらない。
 それを呆れた目で見ている絆。

「……お兄様もお姉様も随分と楽しそうですね、というか気付いてますよわね? アレは」

 そしてずっと苦しんでいる娯楽を再び見る絆。
 その瞳は全てを見透かしているようだった。

「さて、娯楽さんに『憑依している』貴方も楽しんでいますか?」
「てめぇ……小賢しい……マネを!」
 
 娯楽は先程とは違う声を発した、だが状況は何も変わらない。
 憑依している何者かが苦しがっている、これだけだ。
 その者は正体がバレたからか、怨み辛みを好き勝手言う。
 絆はため息をして、首を横に振ったのだった。

「あら? 私は何もしていませんわよ? この状況自体が色鳥の手のひら、遊びの加護を甘く見すぎましたわね」

 この状況自体が遊びの加護が引き起こしている。
 おそらく憑依している何者か以外は、この状況を理解しているのだろう。
 だからこそ、縁も風月も好き勝手殺し合い……いや、遊んでいるのだ。
 ある意味でイチャイチャしている2人に、ついに絆が怒った。

「お兄様! お姉様! とっくの昔に気付いているなら『ごっこ遊び』は止めてくださいまし!」
「ありゃ、怒られちゃった」
「そろそろ止めるか」
「だね~未来の妹には嫌われたくないし」

 縁と風月が手を止めた瞬間、辺りの景色が元に戻った。
 まるで最初から何もなかったかのように。
 この状況を見て、完全に理解い出来る人間は居ないだろう。
 神の力は人間の人知を超えているからだ。
 仮に人間に出来るとしても、解説と説明大好きないずみだけか。  

「あ、縁、本気で殺すって言ってごめんよ」
「言葉遊びだろ? 俺もすまなかった」
「はいよ~」
「お帰りなさいませ、お兄様お姉様」
「いや~遊びの加護は凄いね、くぅ~いずみが居れば説明してくれるんだろうけども」
「説明……あ、まさか」
「ん?」

 縁は病院で絆から渡されたメモを取り出した。
 そして、振ったり息を吹きかけたり、太陽にかざしたりした。
 すると、メモに魔法陣が浮かび上がり、半透明の小さいいずみが現れた。
 ドヤ顔でメガネをクイクイしている、どうやら想定内らしい。
 いや、全てを知っている彼女には朝飯前だ。

『流石は縁さん、私の隠したメッセージを見つけるとは! あ、リアルタイムで通信とかではありませんよ? 一方的なメッセージですよ? 今の私はベッドの上でおねんねですからね、ぴえん』
「……」
『もちろんわかってますとも! 縁さんが呆れているのも、絆さんが少々不機嫌なのも、風月さんが知りたがっているのも!』
「……」
『はいはい縁さん、お前随分と余裕だなって? そりゃそうですよ、何回死んだり蘇生したり、気絶したり重体したりしたと思ってるんです?』
「ふ~む、いずみも大変なんだね」
『そうなんですよ風月さん! 慣れって怖いですね、昔みたく痛い思いはしたくないって、大泣きしたいですよ』
「って、それよりもって言い方はいずみに悪いけど、解説してよ~」
『ふっふっふ……そうですね、ではこれから色々と解説しますよ』

 風月以外解説をのぞんでいなくとも、おそらくは必要な事なのだろう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

びるどあっぷ ふり〜と!

高鉢 健太
SF
オンライン海戦ゲームをやっていて自称神さまを名乗る老人に過去へと飛ばされてしまった。 どうやらふと頭に浮かんだとおりに戦前海軍の艦艇設計に関わることになってしまったらしい。 ライバルはあの譲らない有名人。そんな場所で満足いく艦艇ツリーを構築して現世へと戻ることが今の使命となった訳だが、歴史を弄ると予期せぬアクシデントも起こるもので、史実に存在しなかった事態が起こって歴史自体も大幅改変不可避の情勢。これ、本当に帰れるんだよね? ※すでになろうで完結済みの小説です。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
 疲れ切った現実から逃れるため、VRMMORPG「アナザーワールド・オンライン」に没頭する俺。自由度の高いこのゲームで憧れの料理人を選んだものの、気づけばゲーム内でも完全に負け組。戦闘職ではないこの料理人は、ゲームの中で目立つこともなく、ただ地味に日々を過ごしていた。  そんなある日、フレンドの誘いで参加したレベル上げ中に、運悪く出現したネームドモンスター「猛き猪」に遭遇。通常、戦うには3パーティ18人が必要な強敵で、俺たちのパーティはわずか6人。絶望的な状況で、肝心のアタッカーたちは早々に強制ログアウトし、残されたのは熊型獣人のタンク役クマサンとヒーラーのミコトさん、そして料理人の俺だけ。  逃げるよう促されるも、フレンドを見捨てられず、死を覚悟で猛き猪に包丁を振るうことに。すると、驚くべきことに料理スキルが猛き猪に通用し、しかも与えるダメージは並のアタッカーを遥かに超えていた。これを機に、負け組だった俺の新たな冒険が始まる。  猛き猪との戦いを経て、俺はクマサンとミコトさんと共にギルドを結成。さらに、ある出来事をきっかけにクマサンの正体を知り、その秘密に触れる。そして、クマサンとミコトさんと共にVチューバー活動を始めることになり、ゲーム内外で奇跡の連続が繰り広げられる。  リアルでは無職、ゲームでは負け組職業だった俺が、リアルでもゲームでも自らの力で奇跡を起こす――そんな物語がここに始まる。

処理中です...