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藤島白兎

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第四章 縁と結びで縁結び

第二話 演目 神への願い

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 縁とスファーリアは色鳥の呼び掛けに答えた。
 リッツェラ王国という場所に来てほしいと。
 縁達は色鳥と街中で合流する、王国にしては小さい国だ。
 しかし街中は市民の笑顔で溢れている。

「おう、縁、スファーリア」
「どうした? お前にしては顔がこわばってるが」
「縁、神としてお前に救ってもらいたい人達が居る」
「ん? まあ話を聞いてからだな」

 何時もヘラヘラしている色鳥が、真面目な顔をしていた。
 それだけで事の重大さを感じる縁達。
 色鳥の案内で人が多い酒場の一番奥に案内された。

「依頼人はここに居る……王子、カンタパールさん、連れてきました」

 色鳥はノックをして部屋へと入り、縁達もそれに続いた。
 部屋の中にはスキンヘッドで軽装備の老兵。
 隣には一目見て高貴な位と分かる少年が立っている。

「貴方が縁起身丈白兎神縁《えんぎみのたけしろうさぎのかみえにし》様ですか?」
「はい、失礼ですが貴方は?」
「私はアルマルガ・バーリバル、リッツェラ王国の王子です、彼は父の右腕のカンタパール」
「縁起身丈白兎神縁様、どうか私達を……お救い下さい」

 カンタパールとアルマルガが深々と頭を下げると、縁は直ぐに首を振る。

「私は神としては位が低い、頭を上げて下さい」

 縁はウサミミカチューシャを外して、何時もの神様モードへとなった。
 顔を上げる2人、カンタパールは微動だにせず、アルマルガは縁の姿に驚いている。

「だが私に『神として』話を聞いてほしいならば、己の縁の強さを語れ」
「……わかりました、私のお話をさせていただきます」

 カンタパールは一度深呼吸をして、ゆっくりと語り始めた。

「私が一番最初に仕えたのは、リッツェラ王国を建国した、ルフェル・バーリバル様です、私は赤ん坊で捨てられ、運良くルフェル様が見つけて下さりました、4歳の時に高齢だったルフェルはお亡くなりになりました……我が一族を頼むと残して」

 縁は見定める様に話を聞いている、カンタパールの目には徐々に涙が溜まる。

「時が経ちルフェル様の息子、エレダナ様が王になりました、そしてまた……私の命はまた救われたのです、敵に捕らえられた私を、エレダナ様は単身で助けに来てくださいました、理由は『お前は父のお気に入りだった、そして私から見ればお前は息子同然だ』と」

 そして一筋の涙がほほを伝う、その涙に対して縁の神も涙を一筋流した。
 語る言葉からカンタパールの良き縁を感じ取ったのだ。
 数少ない言葉でも縁を司る神には、物語を見るようにカンタパールの人生を見れる。

「……そのエレダナ様も……長生きされましたが……数年前に老衰でお亡くなりになりました」

 カンタパールは震えた声で言い終わると、泣き叫びながら縁に進言した!

「縁起身丈白兎神縁様! 現国王のアチャルリラ・バーリバル様をお救い下さい! 今! 王は敵に捕らえられ! 屈辱に耐えております! この私を兄、兄弟、父と言って下さった我王を! どうか! どうか!」
「私からもお願い申し上げます! 父をお願い致します! 私達の国力では太刀打ちできません!」

 土下座せん勢いでカンタパールとアルマルガは頭を下げようとしている。
 縁はそれを手で止めて、声を震わせながら2人に言った。

「……顔を上げてくれ」

 2人が顔を上げると縁の顔は悪鬼羅刹になっていた。
 スファーリアも無表情だが怒りをあらわにしている。
 色鳥の方をゆっくりと睨みながら向く。

「おい色鳥、どこのどいつだ? 良き縁を汚した奴は……俺の名の下に滅ぼす」
「メレセスカ王国、賭博で有名な大国だ、国としての差は歴然だから俺はお前を……神を呼んだ」
「色鳥、王は何故捕らえられた?」
「王は妻に送った結婚記念の品を取り戻したかったらしい、勝負方法は賭け事だった」
「……どうやら敵は心底俺を怒らせたいらしいな」

 怒りの握り拳から血が流れる、縁はスファーリアを見て一度無理矢理深呼吸をした。 

「すまないスファーリア、音で落ち着かせてくれ」
「わかった」

 トライアングルの音が部屋に響いた。
 その場に居る全員が、落ち着いた表情に戻る。

「そなた達の願い、私が聞き入れよう、話からこの国の縁の素晴らしいさを感じた」
「あ! ありがとうございます! な、なんと……なんといっていいのか!」

 感激の涙を流すカンタパール、対してアルマルガは凛とした顔で縁に話しかけた。 

「縁様、私に出来る事があったら言って下さい」
「リッツェラ王国の剣、カンタパールを貸してもらいたい」
「わかりました、カンタパール」
「ハッ!」
「父を取り戻すまで、縁様を私の言葉として仕えよ」
「仰せのままに」
「他にありませんか?」
「では2つ」
「なんでしょうか」
「落ち着いたらカンタパールとの手合わせを希望したい」
「私と縁様でですか?」
「いや、我が妻となる結びとだ、今は訳あって魂を二つに分かれている、もう一つの半身は界牙流四代目だ」
「なんと! 界牙流! わかりました、お約束します」
「して縁様、もう一つは?」
「成功しても、国を上げて私を祀らないでくれ」
「な、何故ですか!?」
「私は人から祀られる立場には居ない、そして祈る事しかしない奴は嫌いだからだ、誤解ない様に言っておくが、何かを捧げろという訳ではない」

 縁の言葉にアルマルガとカンタパールは驚きを隠せない。
 そしてとても優しい目で2人を見る、神が救いの手を差し伸べる様に。

「私は努力する者達が好きだ、願いは神との約束で私はそれを見守るだけだ……だが、良き縁を汚す者が居るならば話は別だ」
「とても素敵な音、私も微力ながら手伝う」
「色鳥、王子を送り届けろ、自国とはいえ油断はしない方がいい」
「へいよ、カンタパールさんの代役はまかせろ」
「行くぞカンタパール、スファーリア」
「御意」
「ええ」

 神の怒りがメレセスカ王国へと向かうのだった。
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