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第四章 縁と結びで縁結び
第二話 演目 花嫁システム
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風月とクラリアは向かい合っている。
だが風月はずっと難しい顔をしていた。
「いやぁ、どうしたもんか」
「来ないならこちらから行くぞ?」
クラリアは素早く斜めにバッサリと斬った。
風月よりも速く動けるようだ。
だが斬られた風月はクラリアの背後で笑っている。
振り返ると同時に斬るが、それの繰り返しが続く。
「ひょっひょっひょ、危ない危ない」
「……人を斬った感覚だった」
「今の私は運が良いからね~」
「そうか、神ゆえの超常現象か」
「あまり驚いてないね」
「ふっ……神の理不尽など考えるだけ無駄、で、次はどんな手品だ?」
「おおう、縁の力が手品扱いだよ」
「気に障ったか? なら黙らせればいい」
「おりゃ!」
風月はクラリアが刀を振り下ろす両手を掴む。
その勢いを利用して地面に叩き付けた!
「うおりゃ!」
更に顔面を思いっきり踏み込んみ、風月の太ももまで埋まる!
だが何かに気付いた風月は直ぐにクラリアから離れた。
「いやいやいやいや! 本気でやったのに!? なんで!?」
何事もなくクラリアは起き上がった。
「この機械の身体は特別でな、旦那と共に作り上げたシステムが私を守っている」
「それは?」
「『花嫁システム』だ」
「何か御大層なシステムだこと」
「世の中には何かを犠牲にしたり、負の感情で何かを得るシステムが多すぎる」
「確かにそうだね」
「まるで馬鹿の一つ覚えの様に犠牲だの対価だの馬鹿馬鹿しい、まあその技術を否定はしない」
「界牙流も五体満足で伴侶を守る流派だからわかるよ~」
「完成には少々時間がかかった」
「なるほど、でさどんなシステム?」
「ふむ」
素顔はバイザーとマスクで見えずとも、笑っているのがわかる。
「界牙流四代目風野音結び、一言だ」
そして風月にとってもっともわかりやすい回答をした。
「私達の夫婦愛に勝てるか?」
「なるほど、何かに負けてると思ったら……愛か」
クラリアの言った私達の夫婦愛、その言葉で風月は『花嫁システム』感覚で悟った。
今の風月は縁の力を借りている、つまりは相手の縁を見たり感じたりできる。
いつも手が早い風月が難しい顔をしていたのも、クラリアに自分の攻撃が通じないとわかっていたからだ。
そしてその力の源が夫婦愛だと言うならば、風月は勝てない。
縁とは恋人だが夫婦ではない、そして相手は数十年夫婦をしている人達だ。
風月と縁を比べて、酸いも甘いもの経験が段違いだろう。
花嫁システムの作用、条件、用途、今は考える意味が無い。
風月の愛が負けている、これだけで今の状況の説明は済んでしまっているからだ。
「さて、これだけ喋ったんだ私の攻略法は考えたかな?」
「ふーむ、少々賭けだけどね」
「見せてもらおうか」
「血風!」
クラリアの背後に風月の兎術の血風が、界牙流ただの蹴りをしようと現れた!
「む、血を媒体にした幻か? ぬるいぞ」
血風は振り返ったクラリアに一刀両断された。
斬られた血風は血をまき散らす様に飛び散る。
刀にはべったりと『それ』が付着していた。
「何!?」
クラリアの持っていた刀が、一瞬にして錆びてしまった。
何千年経ったかの様に朽果てたのだ。
流石のクラリアもこれには驚きを隠せない。
おそらくはその刀は、凄い技術で出来たからであろう。
「血で錆びちゃったね~」
「なるほど、原理はわからんが」
「縁が言ってたね、神は理解されないから神、理解されたらそれは神じゃないんだとさ」
「なるほど、理解出ないから神、確かに理解が及ぶ神は面白みを感じない」
「ま、それも時と場合だね~」
「さて……私の本領発揮は『素手』だ」
クラリアは錆びた刀を投げ捨てた。
そして左手を前に、右手を腰の近くでそれぞれ握り拳を作る。
風月は思わず一歩引いた、クラリアの本気、自分との力量差を本格的に感じたからだ。
「手加減は出来ない」
「一度味わっておくよ、今の私がどれだけ通じるか」
「そうか、死ぬなよ? 神に恨まれたくない」
「私は死ねない、縁と結婚して、子供も授かり、人生を謳歌するんだ」
「いい顔だ」
風月からふざけた雰囲気が消えた、脱力した状態でクラリアを見ている。
「界牙流四代目風野音結び、よろしくお願いいたします」
「クラリア・ジレシエール、行くぞ!」
今までに無い緊張感が辺りを包んでいた。
誰も何も音を出すものは居ない。
2人の世界に等しい静けさだった。
「はっ!」
先に動いたのはクラリアだった。
風月の居た場所でクラリアは『打ち終わった正拳突き』をしていた。
そして大きな音が近くから遠くなっていくのが聞こえる。
風月が速さで負けた、この言葉を理解出来る者は驚くだろう。
光を超えたや音を超えたよりもインパクトがある。
風月が速さで負けたのだ。
吹き飛ばされた風月は、自身の速さを超える速度で吹き飛ばされている。
森の木々を薙ぎ払い、山に空洞を空け、川を水切りし、海を裂く。
何回か同じことが起き、やっとどこかの山奥で洞窟を作って終わった。
風月は重症、致命傷といってもいい。
血を流し、骨が折れ、内蔵も痛めている。
それでも風月は生きていた。
「か……いが……流……風と……う……さ、ぎの……物……語」
岩盤に埋まりながら放ったその一言。
洞窟内に風が吹く、そして一匹の白兎がどこからともなく現れる。
白兎は風月の身体にそっと吸収されていった。
「……お? おお!? 身体は悲鳴を上げてるけど、喋れるし動ける!」
風月は軽快に岩盤から抜け出した。
「縁の力が無ければやばかった、んでこれが縁が散々言っていた『結びさんの愛』……いや、私の場合は『縁の愛』か、疑似的だけど縁の力を再現出来たね」
いつも縁がやっている瞬間回復を風月はやってのけた。
自分の胸に手を当てて、何やらニヤニヤし始めた。
「なるほどなるほど、これが縁の愛……へへへへ、このあたたかな気持ち、死ぬわけにはいかないな」
風月は大きく深呼吸をした。
「帰るぞ! 待ってろ愛しい未来の旦那様!」
風月は走り出した、上半身を一切微動だにせず。
海の上を走り、川を飛び越え、山を登り下り、森を抜ける。
楽しそうに走っていた、遠足が待ちきれない小学生の様に。
縁の愛がそれだけ嬉しかったのだろう。
一方、縁達はというと。
「おいおいクラリア、あやつは死んだのではないか?」
「何をいうお前さん、あの程度で死んでいたら界牙流四代目は名乗っていない」
「ええ、彼女は死にませんよ。神の力を渡してるんですから」
「いや、そんなもので彼女は奮い立たないだろ? 君の愛があってこそだ」
「他の人からそう言われると恥ずかしいですね」
「縁! まぁーたぁーせぇーたぁーなぁー!」
風月は縁の目の前でピタッと止まった、キラキラとした目で愛しい人を見ている。
「風月、大丈夫か?」
「イチャイチャチュッチュしないと元気が出ない、へへへへ……うへへへへ」
「元気そうだ」
「扱いが雑」
「何を言う、人前で2人の世界は失礼だろ、てか終わりの礼はいいのか?」
「はっ!? 縁の愛が嬉しくてつい!」
クラリアにお辞儀をする風月。
「クラリアさん、ありがとうございました」
「私こそありがとう、やはり界牙流は――」
突然、クラリアの目の前にSFでよくある通信ウインドウが展開した。
「副隊長! そちらに敵機動兵器が向かっています」
「やはりか、私の索敵範囲に微かに反応していた、数は」
「約30」
「ほう? 機体の種類は?」
「1世代、2世代前の型落ち機体です」
「ふむ、その程度なら私一人で十分だ、予測時間は?」
「5分以内です」
「わかった」
通信ウインドウは会話終了と共に閉じた。
「ここは戦場になる、私達に任せてくれ」
「ちょっと手負いだから任せるね~……あ、そいや縁は色鳥に呼ばれてたんだっけ?」
「ああ」
「ちょうどいいから行こうか」
「お前は休め」
「んじゃ、スファーリアに任せよう」
「わかった」
「頑張ってねクラリアさん」
「ああ」
縁達はそよ風を残してその場から消えた。
だが風月はずっと難しい顔をしていた。
「いやぁ、どうしたもんか」
「来ないならこちらから行くぞ?」
クラリアは素早く斜めにバッサリと斬った。
風月よりも速く動けるようだ。
だが斬られた風月はクラリアの背後で笑っている。
振り返ると同時に斬るが、それの繰り返しが続く。
「ひょっひょっひょ、危ない危ない」
「……人を斬った感覚だった」
「今の私は運が良いからね~」
「そうか、神ゆえの超常現象か」
「あまり驚いてないね」
「ふっ……神の理不尽など考えるだけ無駄、で、次はどんな手品だ?」
「おおう、縁の力が手品扱いだよ」
「気に障ったか? なら黙らせればいい」
「おりゃ!」
風月はクラリアが刀を振り下ろす両手を掴む。
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更に顔面を思いっきり踏み込んみ、風月の太ももまで埋まる!
だが何かに気付いた風月は直ぐにクラリアから離れた。
「いやいやいやいや! 本気でやったのに!? なんで!?」
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「それは?」
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「何か御大層なシステムだこと」
「世の中には何かを犠牲にしたり、負の感情で何かを得るシステムが多すぎる」
「確かにそうだね」
「まるで馬鹿の一つ覚えの様に犠牲だの対価だの馬鹿馬鹿しい、まあその技術を否定はしない」
「界牙流も五体満足で伴侶を守る流派だからわかるよ~」
「完成には少々時間がかかった」
「なるほど、でさどんなシステム?」
「ふむ」
素顔はバイザーとマスクで見えずとも、笑っているのがわかる。
「界牙流四代目風野音結び、一言だ」
そして風月にとってもっともわかりやすい回答をした。
「私達の夫婦愛に勝てるか?」
「なるほど、何かに負けてると思ったら……愛か」
クラリアの言った私達の夫婦愛、その言葉で風月は『花嫁システム』感覚で悟った。
今の風月は縁の力を借りている、つまりは相手の縁を見たり感じたりできる。
いつも手が早い風月が難しい顔をしていたのも、クラリアに自分の攻撃が通じないとわかっていたからだ。
そしてその力の源が夫婦愛だと言うならば、風月は勝てない。
縁とは恋人だが夫婦ではない、そして相手は数十年夫婦をしている人達だ。
風月と縁を比べて、酸いも甘いもの経験が段違いだろう。
花嫁システムの作用、条件、用途、今は考える意味が無い。
風月の愛が負けている、これだけで今の状況の説明は済んでしまっているからだ。
「さて、これだけ喋ったんだ私の攻略法は考えたかな?」
「ふーむ、少々賭けだけどね」
「見せてもらおうか」
「血風!」
クラリアの背後に風月の兎術の血風が、界牙流ただの蹴りをしようと現れた!
「む、血を媒体にした幻か? ぬるいぞ」
血風は振り返ったクラリアに一刀両断された。
斬られた血風は血をまき散らす様に飛び散る。
刀にはべったりと『それ』が付着していた。
「何!?」
クラリアの持っていた刀が、一瞬にして錆びてしまった。
何千年経ったかの様に朽果てたのだ。
流石のクラリアもこれには驚きを隠せない。
おそらくはその刀は、凄い技術で出来たからであろう。
「血で錆びちゃったね~」
「なるほど、原理はわからんが」
「縁が言ってたね、神は理解されないから神、理解されたらそれは神じゃないんだとさ」
「なるほど、理解出ないから神、確かに理解が及ぶ神は面白みを感じない」
「ま、それも時と場合だね~」
「さて……私の本領発揮は『素手』だ」
クラリアは錆びた刀を投げ捨てた。
そして左手を前に、右手を腰の近くでそれぞれ握り拳を作る。
風月は思わず一歩引いた、クラリアの本気、自分との力量差を本格的に感じたからだ。
「手加減は出来ない」
「一度味わっておくよ、今の私がどれだけ通じるか」
「そうか、死ぬなよ? 神に恨まれたくない」
「私は死ねない、縁と結婚して、子供も授かり、人生を謳歌するんだ」
「いい顔だ」
風月からふざけた雰囲気が消えた、脱力した状態でクラリアを見ている。
「界牙流四代目風野音結び、よろしくお願いいたします」
「クラリア・ジレシエール、行くぞ!」
今までに無い緊張感が辺りを包んでいた。
誰も何も音を出すものは居ない。
2人の世界に等しい静けさだった。
「はっ!」
先に動いたのはクラリアだった。
風月の居た場所でクラリアは『打ち終わった正拳突き』をしていた。
そして大きな音が近くから遠くなっていくのが聞こえる。
風月が速さで負けた、この言葉を理解出来る者は驚くだろう。
光を超えたや音を超えたよりもインパクトがある。
風月が速さで負けたのだ。
吹き飛ばされた風月は、自身の速さを超える速度で吹き飛ばされている。
森の木々を薙ぎ払い、山に空洞を空け、川を水切りし、海を裂く。
何回か同じことが起き、やっとどこかの山奥で洞窟を作って終わった。
風月は重症、致命傷といってもいい。
血を流し、骨が折れ、内蔵も痛めている。
それでも風月は生きていた。
「か……いが……流……風と……う……さ、ぎの……物……語」
岩盤に埋まりながら放ったその一言。
洞窟内に風が吹く、そして一匹の白兎がどこからともなく現れる。
白兎は風月の身体にそっと吸収されていった。
「……お? おお!? 身体は悲鳴を上げてるけど、喋れるし動ける!」
風月は軽快に岩盤から抜け出した。
「縁の力が無ければやばかった、んでこれが縁が散々言っていた『結びさんの愛』……いや、私の場合は『縁の愛』か、疑似的だけど縁の力を再現出来たね」
いつも縁がやっている瞬間回復を風月はやってのけた。
自分の胸に手を当てて、何やらニヤニヤし始めた。
「なるほどなるほど、これが縁の愛……へへへへ、このあたたかな気持ち、死ぬわけにはいかないな」
風月は大きく深呼吸をした。
「帰るぞ! 待ってろ愛しい未来の旦那様!」
風月は走り出した、上半身を一切微動だにせず。
海の上を走り、川を飛び越え、山を登り下り、森を抜ける。
楽しそうに走っていた、遠足が待ちきれない小学生の様に。
縁の愛がそれだけ嬉しかったのだろう。
一方、縁達はというと。
「おいおいクラリア、あやつは死んだのではないか?」
「何をいうお前さん、あの程度で死んでいたら界牙流四代目は名乗っていない」
「ええ、彼女は死にませんよ。神の力を渡してるんですから」
「いや、そんなもので彼女は奮い立たないだろ? 君の愛があってこそだ」
「他の人からそう言われると恥ずかしいですね」
「縁! まぁーたぁーせぇーたぁーなぁー!」
風月は縁の目の前でピタッと止まった、キラキラとした目で愛しい人を見ている。
「風月、大丈夫か?」
「イチャイチャチュッチュしないと元気が出ない、へへへへ……うへへへへ」
「元気そうだ」
「扱いが雑」
「何を言う、人前で2人の世界は失礼だろ、てか終わりの礼はいいのか?」
「はっ!? 縁の愛が嬉しくてつい!」
クラリアにお辞儀をする風月。
「クラリアさん、ありがとうございました」
「私こそありがとう、やはり界牙流は――」
突然、クラリアの目の前にSFでよくある通信ウインドウが展開した。
「副隊長! そちらに敵機動兵器が向かっています」
「やはりか、私の索敵範囲に微かに反応していた、数は」
「約30」
「ほう? 機体の種類は?」
「1世代、2世代前の型落ち機体です」
「ふむ、その程度なら私一人で十分だ、予測時間は?」
「5分以内です」
「わかった」
通信ウインドウは会話終了と共に閉じた。
「ここは戦場になる、私達に任せてくれ」
「ちょっと手負いだから任せるね~……あ、そいや縁は色鳥に呼ばれてたんだっけ?」
「ああ」
「ちょうどいいから行こうか」
「お前は休め」
「んじゃ、スファーリアに任せよう」
「わかった」
「頑張ってねクラリアさん」
「ああ」
縁達はそよ風を残してその場から消えた。
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