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第四章 縁と結びで縁結び

第一話 演目 神話や絵画にある場面

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「ここだね~」

 2人はルーティアに到着した、どこにでもある普通の街。
 街へと入り目的の演説している人物を探した。

「あれかもね」
「忌まわしき神縁! 名前に騙されてはなりません! 数十年前に人の社会を破滅に追い込んだ神なのです!」

 街の中心の広場で演説をしている人物。
 司教風の男の周りには少年少女達と大人達が居る。
 何人かは足を止めて話を聞いているが、そこまで興味はなさそうだ。

「ふーん」
「どうした風月」
「いや、どんな演説か興味があって」
「中身は無いと思うぞ?」

 縁の言っていた通り、内容は無かった。
 悪い悪い言っているだけ、具体的な事例は数件だけ。
 言っている事が言いかたを変えただけで同じ内容。

「な? 具体的なものは無いだろ?」
「だね~からっぽか~」

 その時司教風の男が縁を見つけて、高らかに宣言した。
 だが風月が負けじと声をあげたのだった。

「貴様は忌まわしき神! このルーティアにも災害をもたらすか!」
「はいはい注目! この縁は私の旦那様に! 界牙流四代目の伴侶になるんだよ!」
「かかか、か、界牙流!?」
「ま、またあの悲劇が!」
「たたたた! 助けてくれ!」

 街の人達は一目散にその場から居なくなった。
 司教風の男達は市民達の行動に驚いていた。

「うんうん、しょーもない話より、歴史は証明してくれるね~」
「な、なんだ貴様は!」
「は? だから縁の伴侶だって言っただろ、演説してる割には頭悪いな? この街の成り立ちも知らんのか?」
「グロム様」

 側近の男が司教風の男に耳打ちをした。
 司教風の男、グロムはニヤリと笑う。

「……なるほど――」
「ぐちぐちうるせぇから殺し合いならさっさとしろや」

 風月は苛立ちを地面にぶつけた、舗装された道が砕ける。

「お前は縁が気に食わないんだろ? 命賭けるほど殺したいんだろ? だったらべちゃくちゃ喋ってないで、縁を殺しにこいよ」
「では……ご期待に応えましょう! さあ光の子供達よ! 悪の根源を倒すのです!」

 周りに居た少年少女達が各々武器を取り出した。
 その時、神々しい光と共に天から声が聞こえる。
 シンフォルトが空から舞い降りて、縁達の前に降り立った。

「そうはさせません! 道徳の神の使い、シンフォルトがあなた達に道徳を教えます!」
「風月、ここは一度シンフォルトに任せよう、道徳の神の慈悲で来たんだろうからな」
「縁が決めたなら従うよ」
「んで風月、神話は好きか?」
「どうしたの急に」
「よく神話や伝説、絵画等で『武器も持たずに、傷つきながら説得しました』とかあるだろ?」
「あ~神秘的なやつね?」
「それが今から起こる」
「ほう」
「……光の子供よ、その女からやってしまいなさい!」

 道徳の神に使えるシスター、シンフォルト。
 彼女は武器を持つ少年少女達を前に、迎え入れるかの様に両手を広げて歩きます。

「死ねー!」

 少年少女達に、次々と刺されたり斬られたりしました。
 でも彼女は血を吹き出しながらも笑顔です。
 
「大丈夫ですよ、さあ、そんな危ない物は捨てなさい」

 少年少女達は怯みました、痛がりもせずに笑っているからです。
 意を決した一人が右腕を切り落としました、それでも笑っています。
 別の子供が左手を切り落としても笑っています。

「さあ――」

 最後に首を切り落とされました。
 首が地面を転がり、胴体は地面に倒れます。
 血の海が広がっていきました。

「よし! 皆! これで大丈夫だ!」

 首を切り落とした少年は仲間を見ました。
 ですが、仲間の少年少女達は恐怖に震えています。
 
「大丈夫ですよ、私はあなた方に危害は加えません、落ち着いて下さい」

 転がっている首が笑い、首と手足が無い胴体が立ち上がります。
 少年少女達は持っている武器を落とし、恐怖に震えています。
 その場に居る大人達も息を飲んでいます。

「さあ! あなた方も道徳を得て! 清き心を!」

 地面に散らばった首と手足は、胴体にくっついて元に戻りました。
 そして辺りに優しい光が放たれて、それに包まれた少年少女達は泣き出ました。
 大人でも泣き出している人がいます、縁と風月は平気の様です。 
 幻想的で後世に残りそうな場面はこれで終わりました。 

「神話と絵画にありそうだろ?」
「確かに言葉や絵とかなら、心にグッとくるんだろうけどさ」
「実際に見ると悲惨だよな」
「だね~変に美化するのはよろしくない」

 風月は泣いている人達をまじまじと見た。

「あーこりゃ悲惨だね~強制的に『良心』を刺激されている」
「ついでに世間一般の『道徳』もな」
「わお、そりゃ泣くわ……罪の意識にさ」
「だがこの……技? は、相手の良心や道徳を増幅させるだけだ」
「はっはーんって事は――」
「なるほど、貴方は泣きもしない……道徳が微塵も無いようですね」

 グロムを見てシンフォルトは冷たい視線を送った。
 視線を縁達に向けてニコニコして言う。

「御二方、道徳の微塵も無いこの方をよろくお願いいたします、私は救える人しか救いません」
「ああ、それは人でも神でも同じだ」
「私はこれで失礼します」

 シンフォルトと泣いている人達は、天使の羽が生えて空へと旅立った。
 残されたのは道徳が無いらしいグロムと縁と風月。 

「縁、一人残ったアイツは殺してもいい?」
「ああ、道徳の神の慈悲ですら救えなかった奴だ」
「縁の慈悲は?」
「せめて苦しまずに殺してやる事だ」
「お~優しい~」

 風月はそれはそれは楽しそうにグロムに近寄っていった。
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