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第二章 ジャスティスジャッジメントの正義
第六話 演目 形見と傭兵達
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ラクギアの街までやって来た3人。
「縁、俺はこの街の警備してる連中に話をしてくる」
「私も行こう」
「経緯を見届けなくていいのか?」
「側に居るといらない事を言いそうだからな」
「ってもお前幽霊だから、普通の人には見えんだろ」
「縁さんにだよ」
「ああ……んじゃ、後でな縁」
斬銀達と別れ、迷うことなく歩き出す縁。
その足は小さい平屋で止めて、ドアをノックする。
「どちら様で……」
出てきたのは、人生に疲れ今にも死にそうな顔をしているロミアの父親だった。
「縁さんじゃないですか、グレモリアル自警団の時はありがとうございました」
「いえ」
「今日はどの様な御用で? 実は息子がこの間死んでしまいまして、妻も体調を崩していましてな」
「これを届けに来ました」
縁は鞄からロミアが持っていたペンダントを取り出した。
透けてはおらず、しっかりとそこにある。
「こ、これは! 息子が持っていたペンダント!」
それを見た父親は縁から奪う様に取り、ペンダントを見つめた。
「ま、間違いない! 私と妻の名前に息子が付けた傷! これを何処で!? 探しても見つからなかったのに!?」
「あの世ですよ」
「あ、あの世……?」
「息子さんは……ご両親に最後の挨拶が出来なかった事を悔やんでいました、いらぬ世話かもしれませんが、助けたかった」
「……いえ、ありがとうございます」
縁の言葉を信じ難い顔をしていたが、形見から意思を直接感じとり、父親はただ黙って泣いていた。
「今すぐには無理でも、お前があの世で元気にやっていけるなら……私達もお前の死を受け入れるよ」
「……では、俺はこれで」
「ありがとうございます、縁さん、このお礼は必ず!」
去ろうとする縁に深々と頭を下げる父親。
「お礼はいいですよ、俺が助けたかっただけですし」
「いやしかし!」
「なら、奥さんと一緒に俺の神社で手を合わせて下さい、お賽銭とか奉納はいらないんで、元気な姿を見せて下さい」
「はい! 必ず!」
生気に満ちた声に満足した縁は、斬銀達と別れた場所に戻る。
斬銀達は縁を待っている様だった。
「おう、どうだった縁?」
「いい親子関係だ、あの縁があるならば、今を乗り越えられるだろう」
「そうか、こっちは話をしに行ったら、敵襲が来るのは察知していたらしい、もう少ししたらシェルターへ避難誘導があるらしい」
「話が早かったって事は仕事するんですね?」
「ああ正門を守る、タダで請け負うつもりだったが、正式に傭兵としてお願いされた」
「報酬は?」
「俺はこの街の人の怒りを前払いで頂いた、それでいい、いくら元犯罪者達の街だからってよ、関係ねー奴らが正義の刃振りかざしてるんじゃねーぞ」
「やつらは元罪人を制裁しに来たとか?」
「それならまだいい、元犯罪者? 再犯しない様に殺してやるぜ! ってのがここを襲った奴らの考えらしい」
「……頭が痛くなってきた」
「私も聞いた時はそうだったよ、現世を騒がせているとは聞いていたが、実際に見聞きするとね」
「俺はこの街を守るって依頼を受けたからな、遠慮なく本気でやらせてもらう」
「縁さん、一つお願いがあるんですが」
「ん? 隼士さんなんですか?」
「私に『縁召喚』をしていただきたい」
「なっ!? 何でそれを知って――いや、冥界の人なら知ってるか」
縁は珍しく驚いた顔をした。
斬銀は興味有りそうなに質問をしだす。
「何だその縁召喚てのは? 名前だけ聞くと縁自身を召喚しそうだな」
「昔俺が作った召喚方法で、対象者と縁が深い者を呼び寄せる」
「ほー使い方によっちゃ便利だな」
「その使い方次第で死者ですら呼び寄せる、自分ながら後先考えてないな」
「いや、お前はどうしてその召喚方法を作ったんだ?」
「例えば、寿命が終わりそうな人が、会いたい人に会えるようにとね」
「なるほど、つまりお前なりの善意だろ?」
「はい」
「ならいんじゃね? てか、考えたら無闇に死者を呼び戻す方法もあるんだから、べつにいいだろ」
「そうですかね?」
「ああ、で隼士、その召喚方法使って何しようってんだ?」
「いやいや、お前とひと暴れする為だろ」
「いや、死者が現世で暴れるのは云々って、言ってなかったか?」
お前とひと暴れする、否定しつつも声色からワクワクしている。
「冥府もお役所仕事な所があってな? 最近死者が急増に増えいる、管理しきれないから、少しでもそれを止めるためなら黙認するとさ」
「本当にお前とまた戦えるのか!?」
「流石に今日だけ、それに敵も弱いがいいか?」
「共に戦えるならなんだっていい!」
夢を見た少年の様な、輝かしい目をして相棒を見ていた。
「やるのは構わないんだけど、縁召喚をしている間は俺が動けない」
「なら万が一を考えて、お前を守りなが――ん?」
斬銀は、縁の袖を引っ張っている合縁奇縁が目に入った。
「ほう、合縁奇縁が任せろって顔をしているな」
「合縁奇縁、お願い出来るか?」
縁が目を合わせると、自信満々な顔をしている。
「よし、話もまとまったし正門に行こうぜ!」
スキップする斬銀を先頭に正門へと歩き出した。
「縁、俺はこの街の警備してる連中に話をしてくる」
「私も行こう」
「経緯を見届けなくていいのか?」
「側に居るといらない事を言いそうだからな」
「ってもお前幽霊だから、普通の人には見えんだろ」
「縁さんにだよ」
「ああ……んじゃ、後でな縁」
斬銀達と別れ、迷うことなく歩き出す縁。
その足は小さい平屋で止めて、ドアをノックする。
「どちら様で……」
出てきたのは、人生に疲れ今にも死にそうな顔をしているロミアの父親だった。
「縁さんじゃないですか、グレモリアル自警団の時はありがとうございました」
「いえ」
「今日はどの様な御用で? 実は息子がこの間死んでしまいまして、妻も体調を崩していましてな」
「これを届けに来ました」
縁は鞄からロミアが持っていたペンダントを取り出した。
透けてはおらず、しっかりとそこにある。
「こ、これは! 息子が持っていたペンダント!」
それを見た父親は縁から奪う様に取り、ペンダントを見つめた。
「ま、間違いない! 私と妻の名前に息子が付けた傷! これを何処で!? 探しても見つからなかったのに!?」
「あの世ですよ」
「あ、あの世……?」
「息子さんは……ご両親に最後の挨拶が出来なかった事を悔やんでいました、いらぬ世話かもしれませんが、助けたかった」
「……いえ、ありがとうございます」
縁の言葉を信じ難い顔をしていたが、形見から意思を直接感じとり、父親はただ黙って泣いていた。
「今すぐには無理でも、お前があの世で元気にやっていけるなら……私達もお前の死を受け入れるよ」
「……では、俺はこれで」
「ありがとうございます、縁さん、このお礼は必ず!」
去ろうとする縁に深々と頭を下げる父親。
「お礼はいいですよ、俺が助けたかっただけですし」
「いやしかし!」
「なら、奥さんと一緒に俺の神社で手を合わせて下さい、お賽銭とか奉納はいらないんで、元気な姿を見せて下さい」
「はい! 必ず!」
生気に満ちた声に満足した縁は、斬銀達と別れた場所に戻る。
斬銀達は縁を待っている様だった。
「おう、どうだった縁?」
「いい親子関係だ、あの縁があるならば、今を乗り越えられるだろう」
「そうか、こっちは話をしに行ったら、敵襲が来るのは察知していたらしい、もう少ししたらシェルターへ避難誘導があるらしい」
「話が早かったって事は仕事するんですね?」
「ああ正門を守る、タダで請け負うつもりだったが、正式に傭兵としてお願いされた」
「報酬は?」
「俺はこの街の人の怒りを前払いで頂いた、それでいい、いくら元犯罪者達の街だからってよ、関係ねー奴らが正義の刃振りかざしてるんじゃねーぞ」
「やつらは元罪人を制裁しに来たとか?」
「それならまだいい、元犯罪者? 再犯しない様に殺してやるぜ! ってのがここを襲った奴らの考えらしい」
「……頭が痛くなってきた」
「私も聞いた時はそうだったよ、現世を騒がせているとは聞いていたが、実際に見聞きするとね」
「俺はこの街を守るって依頼を受けたからな、遠慮なく本気でやらせてもらう」
「縁さん、一つお願いがあるんですが」
「ん? 隼士さんなんですか?」
「私に『縁召喚』をしていただきたい」
「なっ!? 何でそれを知って――いや、冥界の人なら知ってるか」
縁は珍しく驚いた顔をした。
斬銀は興味有りそうなに質問をしだす。
「何だその縁召喚てのは? 名前だけ聞くと縁自身を召喚しそうだな」
「昔俺が作った召喚方法で、対象者と縁が深い者を呼び寄せる」
「ほー使い方によっちゃ便利だな」
「その使い方次第で死者ですら呼び寄せる、自分ながら後先考えてないな」
「いや、お前はどうしてその召喚方法を作ったんだ?」
「例えば、寿命が終わりそうな人が、会いたい人に会えるようにとね」
「なるほど、つまりお前なりの善意だろ?」
「はい」
「ならいんじゃね? てか、考えたら無闇に死者を呼び戻す方法もあるんだから、べつにいいだろ」
「そうですかね?」
「ああ、で隼士、その召喚方法使って何しようってんだ?」
「いやいや、お前とひと暴れする為だろ」
「いや、死者が現世で暴れるのは云々って、言ってなかったか?」
お前とひと暴れする、否定しつつも声色からワクワクしている。
「冥府もお役所仕事な所があってな? 最近死者が急増に増えいる、管理しきれないから、少しでもそれを止めるためなら黙認するとさ」
「本当にお前とまた戦えるのか!?」
「流石に今日だけ、それに敵も弱いがいいか?」
「共に戦えるならなんだっていい!」
夢を見た少年の様な、輝かしい目をして相棒を見ていた。
「やるのは構わないんだけど、縁召喚をしている間は俺が動けない」
「なら万が一を考えて、お前を守りなが――ん?」
斬銀は、縁の袖を引っ張っている合縁奇縁が目に入った。
「ほう、合縁奇縁が任せろって顔をしているな」
「合縁奇縁、お願い出来るか?」
縁が目を合わせると、自信満々な顔をしている。
「よし、話もまとまったし正門に行こうぜ!」
スキップする斬銀を先頭に正門へと歩き出した。
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