上 下
44 / 297
第一章 レアスナタの世界へ!

第五話 後説 少し違う帰り道

しおりを挟む
「っと、自分の目標利用時間ギリギリになってしまった」

 ゴーグルとシートベルトを外した長谷川は腕時計を見た。

「まあそれはさておき、荒野原さんと合流するか……いや? 今日は荒野原さんと一緒に来てなかったな」

 自分の何気ない発言に徐々に難しく何かを考える顔になる。

「これは……もしかするのか?」

 帰り支度をしてゲートを出てその足でファミレスへと向かった。
 小難しい顔をしながら頼んだ商品とにらめっこしている。 

「あれ? どったのさ? 難しい顔をして」

 どことなく長谷川に顔付きが似ている女性が傍に立っていた。

「ん? おお我が妹のあゆさではないか」
「兄貴が真剣に悩んでいるなんて珍しいね、話聞くよ?」
「ああお願いするよ」
「ちょいと失礼」

 あゆさは兄の正面に座る。

「で、何難しい顔をしてるのさ」
「ああ、俺は何時もバイト仲間とレアスナタをしにいってるんだがな?」
「ふむ」
「その人は荒野原さんと言うんだけども、一緒にいるのが何というか普通になっていたというか」
「その人ってゲームでトライアングル振り回してた人?」
「そうそう」
「って事は女性ね?」
「うむ」
「はは~ん、兄貴はその寂しさが『好き』って感情なのか気になるのね?」
「やっぱり好きなのか?」
「それは知らないけど、よく一緒に居るの?」
「ああ、ゲームが終わったりしたらお酒を飲んだりもする」
「なるほどなるほど、少なくとも嫌われてないね」
「うーむ、まあ嫌いだとサシで飲みにとかはいかないよな」
「サシで飲んでるのかいな、でもまあ兄貴が気に入りそうなのはわかるよ」
「え? 何で?」

 兄の本当にわかってなさそうな顔を見てとても深いため息をする。

「その荒野原さんは知らないけども、ゲーム中の……スファーリアだったっけ? が好きなのはわかる」
「何故バレたし」
「簡単に言ってくと長い黒髪、クールな立ち振る舞い、大きなおっぱい、冷たそうな声なんだけど性格は冷たくないとか? 何年兄貴の妹してるとおもってるのさ」
「これは参った」
「でも良かった、兄貴が女性で悩む日が来て」
「その部分だけ聞くと酷いな」
「中学高校とレアスナタ、成人してもレアスナタ、女の影が全くないから心配もするわ!」
「少しは落ち着いたって事で」
「既婚者としてちと言っとくわ」
「どした?」
「好きだからって変に付きまとったり、自分の気持ちを押し付けちゃ駄目だよ?」
「いやしないよ、今の俺の気持ちがふわふわとしてるからな」
「んじゃ、固まったら?」
「ま、迷惑かけない範囲でデートとかに誘うかもな」
「お、お兄様の口からリアルタイムで『デート』という単語を聞けるとは! 絆はこんなにも嬉しい事はございません!」

 自身のキャラクターである絆っぽくハンカチを出してわざとらしく泣く妹のあゆさ。

「そこまでか?」
「……逆に聞きますわ? 10年以上オンラインゲーム三昧の人間がリアル女性に対して興味を持ったのですわよ?」
「本当に字面だけ聞くと酷いな」
「ではお兄様? 解決という事で私はこの『パーフェクトゴージャスパァッフェ』を所望しますわ」

 メニューのスイーツ覧に書いてある期間限定の高いパフェを指さした。

「ったく、好きにしろ」
「ぐへへへ、ゴチになりまーす」

 パフェを食べる妹にちょいちょい荒野原の事を聞かれる兄であった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

シーフードミックス

黒はんぺん
SF
ある日あたしはロブスターそっくりの宇宙人と出会いました。出会ったその日にハンバーガーショップで話し込んでしまいました。 以前からあたしに憑依する何者かがいたけれど、それは宇宙人さんとは無関係らしい。でも、その何者かさんはあたしに警告するために、とうとうあたしの内宇宙に乗り込んできたの。 ちょっとびっくりだけど、あたしの内宇宙には天の川銀河やアンドロメダ銀河があります。よかったら見物してってね。 内なる宇宙にもあたしの住むご町内にも、未知の生命体があふれてる。遭遇の日々ですね。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

江戸時代改装計画 

城闕崇華研究所(呼称は「えねこ」でヨロ
歴史・時代
皇紀2603年7月4日、大和甲板にて。皮肉にもアメリカが独立したとされる日にアメリカ史上最も屈辱的である条約は結ばれることになった。 「では大統領、この降伏文書にサインして貰いたい。まさかペリーを派遣した君等が嫌とは言うまいね?」  頭髪を全て刈り取った男が日本代表として流暢なキングズ・イングリッシュで話していた。後に「白人から世界を解放した男」として讃えられる有名人、石原莞爾だ。  ここはトラック、言うまでも無く日本の内南洋であり、停泊しているのは軍艦大和。その後部甲板でルーズベルトは憤死せんがばかりに震えていた。  (何故だ、どうしてこうなった……!!)  自問自答するも答えは出ず、一年以内には火刑に処される彼はその人生最期の一年を巧妙に憤死しないように体調を管理されながら過ごすことになる。  トラック講和条約と称される講和条約の内容は以下の通り。  ・アメリカ合衆国は満州国を承認  ・アメリカ合衆国は、ウェーキ島、グアム島、アリューシャン島、ハワイ諸島、ライン諸島を大日本帝国へ割譲  ・アメリカ合衆国はフィリピンの国際連盟委任独立準備政府設立の承認  ・アメリカ合衆国は大日本帝国に戦費賠償金300億ドルの支払い  ・アメリカ合衆国の軍備縮小  ・アメリカ合衆国の関税自主権の撤廃  ・アメリカ合衆国の移民法の撤廃  ・アメリカ合衆国首脳部及び戦争煽動者は国際裁判の判決に従うこと  確かに、多少は苛酷な内容であったが、「最も屈辱」とは少々大げさであろう。何せ、彼らの我々の世界に於ける悪行三昧に比べたら、この程度で済んだことに感謝するべきなのだから……。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...