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ダイブ8 オルレアンの乙女 〜ジャンヌ・ダルク編 〜

第63話 セイ、ハマリエルに斬りかかる

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「リアムさん、空気の道をお願いします!」

 セイのリクエストにリアムはすぐに応じた。セイの足元からロアール川の中腹まで空気の絨緞じゅうたんを延ばした。セイは日本刀を構えると、その道の上を全力疾走していった。
 空中を走り抜けたセイが、中空で自分の姿を模索しているハマリエルに切りかかる。

 首を刎ねろ!

 リアムはこころのなかで、渾身の力で叫んだ。

 セイがハマリエルの首元にむかって剣を振り抜く。
 刃がハマリエルの首筋を捉えたと思った瞬間、ハマリエルの変貌がふっととまった。と同時にハマリエルの指先から発射されたレーザービームがセイのからだを貫いた。
 セイのからだが『く』の字に折れる。
 それでもセイはハマリエルの首元で剣を振り抜こうと、腕を必死で伸ばした。

 あとわずか届かなかった。
 セイの剣筋はハマリエルの首の皮の表面に、かすかに触れたがそこまでだった。

 セイは腕を伸ばしたまま、口元から大量の血をはきだしながら、見えない空気の絨緞の上をごろごろと転がった。
「セイっ!」
 
 おもわずリアムは空気の絨緞の上を走りだしていた。セイに駆け寄る。
 セイは心臓近くを撃ち抜かれていた。ハマリエルも両方の指で同時に撃つ余裕はなかったのだろう。
 リアムがセイの上半身をかかげあげると、その場でおびただしい血をふたたび喀血かっけつした。
 
 ゴホッ……

「セイ!  危険だ。はやくダメージ回復を!」
「や……やってます……」

 リアムはセイが撃たれた箇所に目をやった。
 胸にあいた穴からおびただしい血が吹きだしている。心臓を直撃されているか、どこかの動脈を傷つけられた可能性はあった。リアムはセイの胸の穴に、自分の手のひらを押し当てた。
「セイ、おれの精神力を送り込む。そのイメージを取り込め。おれは治癒の能力を使えやしないが、おまえがおれの精神力を修復用の部材として使えば、ダメージからの回復が格段に速くなる」

「す、すみません」

 セイの声は消え入りそうだった。
 リアムはひとりで立ち向かわせてしまったことを後悔したが、頭のなかではけたたましいアラートが鳴っているのがわかっていた。

 この世界から逃げろ! はやく逃げろ!

 勝てない——
 この悪魔に自分は勝てないのだ——

 そう思った瞬間、リアムはセイのからだを抱きあげ、そのまま空気の絨緞の上を駆け降りはじめていた。
 その行為に抗議するようにセイが、顔をしかめて睨みつけてきたのがわかったが、リアムにはそんな余裕はなかった。


 殺される——
 あれは相手にしてはならない敵だ。

 そう出会ってはならないバケモノなのだ——

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