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ダイブ7 第二次ポエニ戦争の巻 〜 ハンニバル・バルカ編 〜

第3話 ハンニバル・バルカは人類史上最高の戦術家だ

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「さく……エヴァ、やめなさい」
 父がすぐさま割ってはいった。父はローガンを目線で注意を促すと、わたしに言った。

「ハンニバル・バルカは人類史上最高の戦術家と言われ、現在でもその戦術は、各国の軍学校の教科書に載っているほどの人物だ」
「へー」

 わたしはこちらにむかってくる兵隊の列のほうへ目をやった。
 兵のだれもが疲れ切った顔をしているようにみえた。この雪山を重装備で登ってきたのだから、当然といえば当然だ。

 ふいに先頭をいく象の一頭が歩みをとめたのがみえた。



 象使いたちが集まりはじめ、なだめすかしながら前に進めようとする。だが象はそれに応じようとしない。見かねた後方の歩兵たちが、象の背後に回り込んで押しはじめた。
 象使いたちは口々に厳しい声を象に投げかけ、ムチをふるった。
 象がそれに従い、ゆっくりと足を上げかけたが、ふいに象がからだをくねらせ暴れはじめた。あわてて象使いが落ちつかせようとしたが遅かった。
 象は鼻をふりまわして、あたりの象使いや歩兵をはじきとばした。彼らはなすすべもなく、谷底に落ちていった。歩兵たちはたずなをつかんで、象を押さえつけようとしたが、それを嫌がった象は足を滑らせ、そのまま荷車と何人もの人間たちを道連れにして、谷底へ消えていった。



 あたりに断末魔の叫びがこだまする。

「落ちたわ」
「ああ、見えてるよ」

「お父様、これがどれほどの戦術家の作戦なのか、わたしにはわからないわ。ただ無謀なことをやってるとしか思えないもの」

「エヴァちゃん。きみの言う通り、無謀そのもの、だれもできっこないと思われていた作戦さ。敵側のローマもそう思っていたからね」
 ビジェイが横から言ってきた。
「だがハンニバルは不可能と言われていたアルプス越えを果たして、全盛期のローマを滅亡寸前までおいやるんだ」
 その顔は浅黒い肌色のせいでわかりにくかったけど、いくぶん上気し興奮しているようにすら感じられた。

「ずいぶん嬉しそうね。ビジェイ」

「ああ、だって……歴史的な作戦を目の当たりにしているんだよ。この作戦の成功をうけて、この160年後にはユリウス・カエサルが今度はローマ側からアルプス越えを敢行し、そして約2000年後には、ナポレオン・ボナパルトがアルプスを越えて、イタリアに攻め入っているんだ」
「ああ、そう……」


「ガードナーCEO……」
 ローガンが腕まくりをするジェスチャーをしながら言った。

「もしかして、オレらは、あの疲れ切ったハンニバル軍を蹴散らせばいいのかね」
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