上 下
534 / 935
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜

第58話 姉の仮説ではひとつしか方法がないそうです

しおりを挟む
「マリア、そういう言い方しないの!。スピロさんに事情があるの知ってるでしょ」
 かがりがすぐさまマリアをたしなめた。
「なんだよぉ、かがり。てめぇ、いちいちうるせぇな。まったく学級委員長みたいに……」
 と言ったところで、マリアはふと思い出して付け足した。
「ま、実際に学級委員長なんだがな」

 モニタの向こう側がちょっとしたもめ事になっていると感じたのか、あわててゾーイが言ってきた。
「マリアさん、申し訳ありません。姉は今、別の場所にいて手が離せないんです」
「ゾーイ、スピロは体調を崩したりしてないよね」
 聖が心配そうな顔をしていた。
「聖さん、ありがとう。でもご心配なく。姉は元気ですわ」
「そうか、よかった」
「だったら、なぜここに顔を見せねぇんだ」
 マリアは強く口調でゾーイに詰問した。それがとがめだてしているようにでも聞こえたのか、かがりが声をはりあげた。
「マリア!。スピロさんの都合も考えてあげなさいよ」
「都合?。いまさらそんなの気にかけてるのがおかしいだろうがぁ」
「失礼よ、マリア。スピロさんはからだが……」
「かがり、てめぇこそ失礼だぞ。スピロが健常者だとかそうじゃねえとか、分けへだてしてるんじゃねぇ。あいつはオレたちの仲間だ。なにを特別扱いする必要がある?」
 マリアは下からかがりを睨みつけてそう言うと、かがりはじっとマリアの目をみてから頭をさげた。
「うん、そうだね。マリア、ごめん。わたしがまちがえてた」
 ささくれだちはじめていた空気がすっと収まっていく。その間なにも言えずにいたエヴァはほっとしたような表情を、聖はとまどったような表情を浮かべている。
 だがモニタのむこうのゾーイはひとり、嬉しそうに顔をほころばせていた。
「マリアさんにそう言ってもらって、わたしはうれしいです。姉もたぶん喜ぶと思います」
「は、別におまえたち姉妹を喜ばせようとしたわけじゃねぇ。で、スピロはどこに行ってるんだ」
「はい。姉はあのダイブから戻ってから、一睡もせずずっと知識を詰め込んでいるんです」
「知識を詰め込んでいる?。一睡もせず?」
 そう言ってエヴァが目をまるくした。
「あのひと、これ以上なにを博識になる必要があるんでしょうか?」
 ゾーイはおもわず苦笑した。
「そうですよね。でも姉に言わせると、あの時代の知識が圧倒的に不足しているそうです。なのでバチカンの『サイコ・ダイバーズ』の権限を使って、世界中の『データ・アーカイブ』にアクセスして情報を集めているんです」
「そんなにまでして、スピロはなにをするつもりなの?」
 かがりはとまどいを隠せないようだった。

 ゾーイは聖、マリア、エヴァの順に顔を見回してから、すこし弱ったような顔を、かがりにむけて言った。
「姉の仮説では、これしか方法がないそうなんです……」



「『切り裂きジャック』をつかまえるって」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語

瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。 長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH! 途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!

秋津皇国興亡記

三笠 陣
ファンタジー
 東洋の端に浮かぶ島国「秋津皇国」。  戦国時代の末期から海洋進出を進めてきたこの国はその後の約二〇〇年間で、北は大陸の凍土から、南は泰平洋の島々を植民地とする広大な領土を持つに至っていた。  だが、国内では産業革命が進み近代化を成し遂げる一方、その支配体制は六大将家「六家」を中心とする諸侯が領国を支配する封建体制が敷かれ続けているという歪な形のままであった。  一方、国外では西洋列強による東洋進出が進み、皇国を取り巻く国際環境は徐々に緊張感を孕むものとなっていく。  六家の一つ、結城家の十七歳となる嫡男・景紀は、父である当主・景忠が病に倒れたため、国論が攘夷と経済振興に割れる中、結城家の政務全般を引き継ぐこととなった。  そして、彼に付き従うシキガミの少女・冬花と彼へと嫁いだ少女・宵姫。  やがて彼らは激動の時代へと呑み込まれていくこととなる。 ※表紙画像・キャラクターデザインはイラストレーターのSioN先生にお願いいたしました。 イラストの著作権はSioN先生に、独占的ライセンス権は筆者にありますので無断での転載・利用はご遠慮下さい。 (本作は、「小説家になろう」様にて連載中の作品を転載したものです。)

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になっていた私。どうやら自分が当主らしい。そこまでわかって不安に覚える事が1つ。それは今私が居るのは天正何年?

俣彦
ファンタジー
旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になった私。 武田家の当主として歴史を覆すべく、父信玄時代の同僚と共に生き残りを図る物語。

処理中です...