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ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
第5話 ヴィクトリア朝時代の紳士スタイル
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「スピロ。ぼく、ちょっと大袈裟じゃないのかい。帽子や杖なんて」
気づくと思ったことが口から漏れでていた。
「なにをおっしゃいます。セイ様。この時代、どんなに貧しかろうが、男性で帽子をかぶらないひとはいませんよ。それが少年であってもです。それに杖は持たなくなった『剣』の名残りで、紳士の証でもあります」
「へぇ、セイさんは隙のない本格的な服装をしてるんだねぇ」
「もちろんですとも、ゾーイ。わたしが見立てたのですから……」
少々得意げに胸をはったスピロに、しびれをきらしたマリアが顔を近づけた。奥歯を噛みしめて、声を押し殺すようにして言った。
「おい、スピロ。これ、オレの服だけこの時代の服じゃねぇーよな」
「ああ、そういうことですか……」
スピロはマリアがなにに憤っているのか、やっと思い当たったらしい。
「ご指摘通りですわ。そちらはマリア様ご用達の『ゴスロリ』……、ゴシック&ロリータ・スタイルの服です」
「おい!、オレだけ現代の服たぁ、どういう了見だ」
「ですが、誰も気にしておりませんよ。しっかりとヴィクトリアン・スタイルに馴染んでいると思いますが……」
「そーいう問題じゃねぇ。これじゃあ、オレの存在そのものがパチモンみたいじゃねぇか」
「そうですか?。ゴスロリファッションは日本発祥ですが、ロココ文化と、このヴィクトリア朝のファッションがルーツだということですから、まぁ、系譜のようなものかと……」
「いや、こりゃどうみてもストリート・ファッションだぜ。浮いてるだろぉ」
「なるほど……。マリア様はわたくしやエヴァ様のように、本格的なヴィクトリアン・スタイルにしたかった、というわけですね……」
「まぁ……、それもわるくない……ってことだ」
マリアが口を尖らせて、すこし恥ずかしそうに答えた。
「では、いまからゾーイにお願いして、コルセットでからだを締めあげさせることとしましょう」
「コルセットぉぉ?」
「えぇ。この時代はいかにウエストの細さを保てるかが重要でしたから、それは気絶しそうになるほど締めあげねばなりません。それでよければ……。ゾーイ!」
スピロがゾーイに合図すると、ゾーイがまえに進み出てきて、マリアの頭のうえに手をかざした。
「ちょ、ちょっと待った」
マリアが手を前に突き出した。
気づくと思ったことが口から漏れでていた。
「なにをおっしゃいます。セイ様。この時代、どんなに貧しかろうが、男性で帽子をかぶらないひとはいませんよ。それが少年であってもです。それに杖は持たなくなった『剣』の名残りで、紳士の証でもあります」
「へぇ、セイさんは隙のない本格的な服装をしてるんだねぇ」
「もちろんですとも、ゾーイ。わたしが見立てたのですから……」
少々得意げに胸をはったスピロに、しびれをきらしたマリアが顔を近づけた。奥歯を噛みしめて、声を押し殺すようにして言った。
「おい、スピロ。これ、オレの服だけこの時代の服じゃねぇーよな」
「ああ、そういうことですか……」
スピロはマリアがなにに憤っているのか、やっと思い当たったらしい。
「ご指摘通りですわ。そちらはマリア様ご用達の『ゴスロリ』……、ゴシック&ロリータ・スタイルの服です」
「おい!、オレだけ現代の服たぁ、どういう了見だ」
「ですが、誰も気にしておりませんよ。しっかりとヴィクトリアン・スタイルに馴染んでいると思いますが……」
「そーいう問題じゃねぇ。これじゃあ、オレの存在そのものがパチモンみたいじゃねぇか」
「そうですか?。ゴスロリファッションは日本発祥ですが、ロココ文化と、このヴィクトリア朝のファッションがルーツだということですから、まぁ、系譜のようなものかと……」
「いや、こりゃどうみてもストリート・ファッションだぜ。浮いてるだろぉ」
「なるほど……。マリア様はわたくしやエヴァ様のように、本格的なヴィクトリアン・スタイルにしたかった、というわけですね……」
「まぁ……、それもわるくない……ってことだ」
マリアが口を尖らせて、すこし恥ずかしそうに答えた。
「では、いまからゾーイにお願いして、コルセットでからだを締めあげさせることとしましょう」
「コルセットぉぉ?」
「えぇ。この時代はいかにウエストの細さを保てるかが重要でしたから、それは気絶しそうになるほど締めあげねばなりません。それでよければ……。ゾーイ!」
スピロがゾーイに合図すると、ゾーイがまえに進み出てきて、マリアの頭のうえに手をかざした。
「ちょ、ちょっと待った」
マリアが手を前に突き出した。
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