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ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
第185話 エヴァは容赦なかった
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だが、エヴァは容赦なかった。
怒濤の勢いで走ってくる怪物たちの群れのど真ん中めがけてミサイル・ランチャーを撃ち込んだ。
オリンピュアの聖域を揺るがすほどの振動と、鼓膜が破れそうなほどの爆発音を轟かせて、あたり一面に怪物たちが吹き飛んだ。その肉片は、干上がったアルフェイオス川に飛び散ったり、評議会場の南の列柱廊まで飛ばされ、その柱や壁に赤い点を刻んでいった。
ゾーイはあまりの威力に思わず耳を覆ったが、すぐさま押し寄せてきた爆風に今度はあわてて顔をそむけるはめになった。だがすぐ横にいた姉スピロは微動もせずにその様子をまんじりと見つめていた。爆風が巻き上げた砂礫で顔を洗われても、表情を変えなかった。
「お姉様!。大丈夫なのかい?」
「無論です。すでにこの爆風は二度も浴びております。慣れたものです」
「二度だってぇ!」
ゾーイはおもわず驚きの声をあげたが、スピロは戦況のほうを注視していた。
「さすが、エヴァ様です。今ので目に見えている怪物たちはあらかた消えてしまいました」 そのことばに促されるように、ゾーイは『聖域』のほうへ目をやった。確かにさきほどヒッポドロームへ殺到してきていた怪物はまばらになっていた。
そこへ走り込んでいこうとしたマリアの怒声が聞こえてきた。
「エヴァ!。半分残しとけって言ったろうが!」
「マリアさん、ごめんなさい。思いのほかあの怪物たちが弱すぎたようですわ」
「だから弱ぇって……。ちっ、とりあえず残りモンはオレに片づけさせろ」
それだけ言うと、エヴァのミサイルの難を逃れた怪物(それでも4~50体はあったが)にマリアが斬り込んでいった。最初のひと振りだけで5、6体の怪物の首やからだが、一刀両断されて刎ねとんだ。さらにそのまま剣の腹側をむけると、反対側にふり戻しながら今度は分厚い幅の刀身を叩きつけた。このひとふりで巨人の足はへし折れたが、人間サイズの怪物はそのままぐしゃっと熟したトマトのように潰れた。
「すごい!」
今度はスピロが驚きの声をあげる番だった。ゾーイはそれくらいの活躍はするだろうと想像していたので声をあげることはなかったが、その無慈悲なまでの圧倒的な力にあらためて圧倒された。
「当然だろうさ。そりゃ、さっきミノタウロスを一刀両断した御仁だからねぇ」
マリアの小さな体躯はよく動いた。
あのばかでかい大剣を苦もなく軽々とふりまわしているのも驚異だったが、なによりその切っ先はすばやくそして正確だった。
エヴァが打ち漏らした怪物はあっという間にマリアの刀の露と消えていた。
怒濤の勢いで走ってくる怪物たちの群れのど真ん中めがけてミサイル・ランチャーを撃ち込んだ。
オリンピュアの聖域を揺るがすほどの振動と、鼓膜が破れそうなほどの爆発音を轟かせて、あたり一面に怪物たちが吹き飛んだ。その肉片は、干上がったアルフェイオス川に飛び散ったり、評議会場の南の列柱廊まで飛ばされ、その柱や壁に赤い点を刻んでいった。
ゾーイはあまりの威力に思わず耳を覆ったが、すぐさま押し寄せてきた爆風に今度はあわてて顔をそむけるはめになった。だがすぐ横にいた姉スピロは微動もせずにその様子をまんじりと見つめていた。爆風が巻き上げた砂礫で顔を洗われても、表情を変えなかった。
「お姉様!。大丈夫なのかい?」
「無論です。すでにこの爆風は二度も浴びております。慣れたものです」
「二度だってぇ!」
ゾーイはおもわず驚きの声をあげたが、スピロは戦況のほうを注視していた。
「さすが、エヴァ様です。今ので目に見えている怪物たちはあらかた消えてしまいました」 そのことばに促されるように、ゾーイは『聖域』のほうへ目をやった。確かにさきほどヒッポドロームへ殺到してきていた怪物はまばらになっていた。
そこへ走り込んでいこうとしたマリアの怒声が聞こえてきた。
「エヴァ!。半分残しとけって言ったろうが!」
「マリアさん、ごめんなさい。思いのほかあの怪物たちが弱すぎたようですわ」
「だから弱ぇって……。ちっ、とりあえず残りモンはオレに片づけさせろ」
それだけ言うと、エヴァのミサイルの難を逃れた怪物(それでも4~50体はあったが)にマリアが斬り込んでいった。最初のひと振りだけで5、6体の怪物の首やからだが、一刀両断されて刎ねとんだ。さらにそのまま剣の腹側をむけると、反対側にふり戻しながら今度は分厚い幅の刀身を叩きつけた。このひとふりで巨人の足はへし折れたが、人間サイズの怪物はそのままぐしゃっと熟したトマトのように潰れた。
「すごい!」
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あのばかでかい大剣を苦もなく軽々とふりまわしているのも驚異だったが、なによりその切っ先はすばやくそして正確だった。
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