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第四章 第四節 ヤマト襲撃される
第1006話 へたに打って出ないほうがいい
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「ヤツラはぼくがこのビルにいることがわかってる?」
ヤマトは草薙に尋ねた。
「おそらく、ビルまで特定できてないと思うわ」
「へたに打って出ないほうがいいってことだね」
「まぁね。ただ向こうにイニシアティブを握られるわけにもいかない。バトーをそちらに向わせているわ」
「バットーさんを? ひとりで?」
「当然。相手はたったの5人。しかもたかが犯罪組織の連中、バトーひとりで充分」
草薙は当然のように言ったが、ダイ・ラッキーの手下がまだ隠し球を見せてない可能性を考えると、最低限の戦力しかさかないのは正解だと思えた。
だが、バットーが手下とコンタクトし、迎撃しはじめると、草薙とヤマトの考えが甘かったことを思い知らされた。手下たちはどうやって日本に持ち込んだのか不明だったが、軍用レベルの武器を用意していた。
ドォォォォォン……
耳を聾するような爆音が轟き、ヤマトたちが潜んでいるビルの近くの建物が崩れ落ちた。
街角に瓦礫が転がり、あたりに粉塵がまいあがる。
『やれやれ。やっこさんども、おっそろしく強力な武器、持ってやがるな。渋谷でぶっぱなすにゃあ、物騒すぎンだろ』
『バトー、ヤツラはなにを装備してる?』
『隊長、今、映像を送りますから、自分の目で確認してみてくださいよ』
ふいに目の前に映像が現われた。インフォグラシズから、網膜へ直接照射された映像が、全部で3面表示されている。そのどれもが粉塵で煙っているが、そこに映っている敵の装備は、なんとか見てとれた。
『多口径携帯バズーカー、マルチプルマシンガン、パルス・ショットガン…… たしかに軍隊並の武器…… いや一部は兵器だな』
草薙がすばやく分析してみせた。
『こちらは警護用の武器しかねぇから、あんな重火器相手じゃあ、さすがに手に余りますぜ』
『バトー、このビルとは反対、12時の方向に敵をひきつけてくれ。こちらから2人出すので、挟撃してくれ』
『挟撃……ねぇ。ま、いいでしょ。しょぼい武器だろうと、性能差くらい、腕前で埋めてみせますぜ』
『頼む』
通信がきれるやいなや、パパパパ……と乾いた銃声が響いた。がその音の残響が消え去る前に、『バシュ』という空気を切り裂くような音がした。
とたんにいくつかのビルが吹き飛ぶ。
形状記憶素材を使った、にわか作りの建物とはいえ、派手に飛び散る様子をみれば、相手の武器の威力が、兵器並であることがわかる。
「バットーさん、大丈夫?」
『タケル、みくびんな。オレはおとりとしても一流なん……』
バットーはそう軽口をたたいたが、ふたたびおおきな爆発音が轟いて、ことばがかき消された。
バットーの顔は粉塵まみれで、真っ白になっていた。
『うは、モロに粉まみれになっちまったぜ。だがヤツラを袋小路に追い込んだ。隊長、援軍のふたりは?』
『すでにその袋小路の入り口に到達している。やってくれ!』
ヤマトは草薙に尋ねた。
「おそらく、ビルまで特定できてないと思うわ」
「へたに打って出ないほうがいいってことだね」
「まぁね。ただ向こうにイニシアティブを握られるわけにもいかない。バトーをそちらに向わせているわ」
「バットーさんを? ひとりで?」
「当然。相手はたったの5人。しかもたかが犯罪組織の連中、バトーひとりで充分」
草薙は当然のように言ったが、ダイ・ラッキーの手下がまだ隠し球を見せてない可能性を考えると、最低限の戦力しかさかないのは正解だと思えた。
だが、バットーが手下とコンタクトし、迎撃しはじめると、草薙とヤマトの考えが甘かったことを思い知らされた。手下たちはどうやって日本に持ち込んだのか不明だったが、軍用レベルの武器を用意していた。
ドォォォォォン……
耳を聾するような爆音が轟き、ヤマトたちが潜んでいるビルの近くの建物が崩れ落ちた。
街角に瓦礫が転がり、あたりに粉塵がまいあがる。
『やれやれ。やっこさんども、おっそろしく強力な武器、持ってやがるな。渋谷でぶっぱなすにゃあ、物騒すぎンだろ』
『バトー、ヤツラはなにを装備してる?』
『隊長、今、映像を送りますから、自分の目で確認してみてくださいよ』
ふいに目の前に映像が現われた。インフォグラシズから、網膜へ直接照射された映像が、全部で3面表示されている。そのどれもが粉塵で煙っているが、そこに映っている敵の装備は、なんとか見てとれた。
『多口径携帯バズーカー、マルチプルマシンガン、パルス・ショットガン…… たしかに軍隊並の武器…… いや一部は兵器だな』
草薙がすばやく分析してみせた。
『こちらは警護用の武器しかねぇから、あんな重火器相手じゃあ、さすがに手に余りますぜ』
『バトー、このビルとは反対、12時の方向に敵をひきつけてくれ。こちらから2人出すので、挟撃してくれ』
『挟撃……ねぇ。ま、いいでしょ。しょぼい武器だろうと、性能差くらい、腕前で埋めてみせますぜ』
『頼む』
通信がきれるやいなや、パパパパ……と乾いた銃声が響いた。がその音の残響が消え去る前に、『バシュ』という空気を切り裂くような音がした。
とたんにいくつかのビルが吹き飛ぶ。
形状記憶素材を使った、にわか作りの建物とはいえ、派手に飛び散る様子をみれば、相手の武器の威力が、兵器並であることがわかる。
「バットーさん、大丈夫?」
『タケル、みくびんな。オレはおとりとしても一流なん……』
バットーはそう軽口をたたいたが、ふたたびおおきな爆発音が轟いて、ことばがかき消された。
バットーの顔は粉塵まみれで、真っ白になっていた。
『うは、モロに粉まみれになっちまったぜ。だがヤツラを袋小路に追い込んだ。隊長、援軍のふたりは?』
『すでにその袋小路の入り口に到達している。やってくれ!』
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