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第四章 第四節 ヤマト襲撃される
第1005話 ダイ・ラッキーの本気
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キラは三階分の階段がそのまま一直線上に延びている構造が恨めしかった。
内階段とおなじように、つづら折れになっていてくれれば、下からの攻撃があっても、重なった階段のステップが防いでくれる。だがビルの端からビルの端まで数十メートルを、斜め一直線に横切っている構造では、下の階からは丸見えで、どうぞ撃ってください、と言わんばかりだ。
スージーは走りながら、ドーム天井と手摺りのあいだの隙間から、下にむけて威嚇の射撃を加えた。だが階段を駆けあがるスピードは緩めようとはしない。
足元のステップに弾があたる、ガンガンという音と振動に、尻の穴が縮こまるような恐怖を感じながら、キラはスージーに続いた。
この程度のおそまつな作りでは、いつステップのシールドを弾丸が突き破って、自分のからだを射ぬくかわからない。
ふいに目の前を走っていたスージーが、横の空間に身を踊らせた。屋上だった。
キラもそのうしろに続いて、倒れ込むようにして屋上の床へ移動した。そのとき一瞬だけ階段のほうがかいま見えた。
数メートルうしろを走っていたはずのクララとサイトーが、まだ階段の中腹あたりにいた。
なにをしてるの?
数秒もたがわず屋上へくると思っていただけに、キラはその光景が信じられなかった。
が、すぐにクララたちが立ち往生している理由がわかった。
クララたちの目の前の階段が崩落していた。
一メートル超程度だが、階段が途中で途切れていて、それ以上進めなかった。下層から銃撃を集中されたせいにちがいなかった。
クララのうしろから続いていたアスカとトグロは、とどまるのは危険と察知してすでに元の場所へ戻りはじめている。
「スージー!!! クララお姉さまが!!」
おもわず大声で叫んだ瞬間、クララの足元のステップがおおきく砕けた。足元のステップがなくなり、クララのからだが落ちる。
クララは壊れたステップのフチに手を伸ばしたが、間に合わなかった。
------------------------------------------------------------
ダイ・ラッキーに囮を使われ、してやられたことに、ヤマト・タケルは驚いた。
エア・バイクという機動力を見せつけられたせいで、伏兵に気づかなかったのは、こちらの落ち度であるのはまちがいない。
だが、それも草薙のような優秀な軍人が相手でなければ、そこまで完全に迎え撃てなかったはずだ。
それだけでダイ・ラッキーの本気を感じられた。
「草薙さん、どうします?」
「タケルくん、あなたはそのまま隠れていて。このビルに向っている連中は、こちらで片づけます」
「敵は何人?」
「監視カメラで確認した限りだと5人。でも相手は『生来者』。『素体に憑依していたら、その姿を目視できないかぎり、数は確定できない」
「人間という個体を生体チップで、AI管理したばかりに、そうでない人間を個体として認識できない、っていうのは、なんとも……」
「ええ。まったく。25世紀にもなるっていうのにね」
内階段とおなじように、つづら折れになっていてくれれば、下からの攻撃があっても、重なった階段のステップが防いでくれる。だがビルの端からビルの端まで数十メートルを、斜め一直線に横切っている構造では、下の階からは丸見えで、どうぞ撃ってください、と言わんばかりだ。
スージーは走りながら、ドーム天井と手摺りのあいだの隙間から、下にむけて威嚇の射撃を加えた。だが階段を駆けあがるスピードは緩めようとはしない。
足元のステップに弾があたる、ガンガンという音と振動に、尻の穴が縮こまるような恐怖を感じながら、キラはスージーに続いた。
この程度のおそまつな作りでは、いつステップのシールドを弾丸が突き破って、自分のからだを射ぬくかわからない。
ふいに目の前を走っていたスージーが、横の空間に身を踊らせた。屋上だった。
キラもそのうしろに続いて、倒れ込むようにして屋上の床へ移動した。そのとき一瞬だけ階段のほうがかいま見えた。
数メートルうしろを走っていたはずのクララとサイトーが、まだ階段の中腹あたりにいた。
なにをしてるの?
数秒もたがわず屋上へくると思っていただけに、キラはその光景が信じられなかった。
が、すぐにクララたちが立ち往生している理由がわかった。
クララたちの目の前の階段が崩落していた。
一メートル超程度だが、階段が途中で途切れていて、それ以上進めなかった。下層から銃撃を集中されたせいにちがいなかった。
クララのうしろから続いていたアスカとトグロは、とどまるのは危険と察知してすでに元の場所へ戻りはじめている。
「スージー!!! クララお姉さまが!!」
おもわず大声で叫んだ瞬間、クララの足元のステップがおおきく砕けた。足元のステップがなくなり、クララのからだが落ちる。
クララは壊れたステップのフチに手を伸ばしたが、間に合わなかった。
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ダイ・ラッキーに囮を使われ、してやられたことに、ヤマト・タケルは驚いた。
エア・バイクという機動力を見せつけられたせいで、伏兵に気づかなかったのは、こちらの落ち度であるのはまちがいない。
だが、それも草薙のような優秀な軍人が相手でなければ、そこまで完全に迎え撃てなかったはずだ。
それだけでダイ・ラッキーの本気を感じられた。
「草薙さん、どうします?」
「タケルくん、あなたはそのまま隠れていて。このビルに向っている連中は、こちらで片づけます」
「敵は何人?」
「監視カメラで確認した限りだと5人。でも相手は『生来者』。『素体に憑依していたら、その姿を目視できないかぎり、数は確定できない」
「人間という個体を生体チップで、AI管理したばかりに、そうでない人間を個体として認識できない、っていうのは、なんとも……」
「ええ。まったく。25世紀にもなるっていうのにね」
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