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第四章 第三節 Z.P.G.(25世紀のルール)
第987話 この亜獣の倒し方はわかった
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「そいつぁ、無理ってぇもんだ」
アルの顔がモニタの中央に広がった。
「博士、今回、用意できた爆弾ってぇのは、キラが火星で使ったものだ。こいつぁ、爆縮を利用して、別の空間に亜獣そのものを送り込むっていうヤツだ。本体に付随した部位を一緒に飛ばすことができても、本体を残してそれ以外をっていうわけにゃあいかねぇ」
「じゃあ、本体ごと……」
「別の空間に送り込んでも、本体が死なねぇから再生してンだろ。うまくすりゃ、別の空間から出てこれない可能性もあるし、いいコンセプトの爆弾なんだが、この亜獣にゃあ、不向きだった」
「だったらアル、どうすればいい?」
「亜獣のからだを組成しているあの粒子状のからだだけを、どこかへ送り込める爆弾かなにかを開発するしかないだろうな。あれに阻まれなけりゃ、ユウキたちゃ、あの核を握りつぶして、この亜獣の命を絶ててたンだからな」
キラはふたりのやりとりを聞きながらも、目の前でみるみる再生していく亜獣の姿から目を離さずにいた。
倒し方はわかった。
だがそのための武器が足りないだけ——
そうなるとやることはひとつしかない。
「ユウキさん! マガンジーをできるだけ遠くへ投げ飛ばしてください」
ユウキは、なぜも、どうやって、も訊かなかった。たぶん自分とおなじことを考えていたのだろう。脊髄反射的といってもいい速さで、掴んだままのマガンジーのからだをふりまわした。すでに生体とおなじ形であったが、まだおおきさが10メートル程度までにしか育っていなかったこともあって、40メートルの巨人なら易々とぶん投げることができた。
キラは爆縮爆弾を取り出すと、中空を飛んで行くマガンジーを追いかけた。
「なにするつもり!」
ミサトが叫んだ。
「火星のときとおなじです。本体ごと別空間に送り込みます」
「そんなことやっても、また戻ってくるわ」
「時間稼ぎですわ」
マガンジーを追ってセラ・マーキュリーを走らせる。重力がさだまらずどうしても足が浮いてふらつく。
「アルさんがあたらしい爆弾を作ってくれれば確実に勝てます。でも今はあれを追い払うのが精いっぱいですわ」
おもいっきりジャンプをすると、マガンジーの尻尾をつかんで、そのまま力の限り下へひっぱった。月面にマガンジーのからだが叩きつけられる。が、重力そのものが弱いため、ただ月の表面の砂ぼこりを軽くまきあげた程度の衝撃だ。
キラは爆縮爆弾のスイッチに手をかけた。
マガンジーの口へ手を突っ込む。
できるだけ奥へ——
あのとき、できるだけ亜獣の中心部へとねじ込んだ爆縮爆弾は、はからずも下半身に潜んでいた核、本体近くで爆発しただけだったのだ。
今度はそれをわかったうえで、それを再現しなければならない。
アルの顔がモニタの中央に広がった。
「博士、今回、用意できた爆弾ってぇのは、キラが火星で使ったものだ。こいつぁ、爆縮を利用して、別の空間に亜獣そのものを送り込むっていうヤツだ。本体に付随した部位を一緒に飛ばすことができても、本体を残してそれ以外をっていうわけにゃあいかねぇ」
「じゃあ、本体ごと……」
「別の空間に送り込んでも、本体が死なねぇから再生してンだろ。うまくすりゃ、別の空間から出てこれない可能性もあるし、いいコンセプトの爆弾なんだが、この亜獣にゃあ、不向きだった」
「だったらアル、どうすればいい?」
「亜獣のからだを組成しているあの粒子状のからだだけを、どこかへ送り込める爆弾かなにかを開発するしかないだろうな。あれに阻まれなけりゃ、ユウキたちゃ、あの核を握りつぶして、この亜獣の命を絶ててたンだからな」
キラはふたりのやりとりを聞きながらも、目の前でみるみる再生していく亜獣の姿から目を離さずにいた。
倒し方はわかった。
だがそのための武器が足りないだけ——
そうなるとやることはひとつしかない。
「ユウキさん! マガンジーをできるだけ遠くへ投げ飛ばしてください」
ユウキは、なぜも、どうやって、も訊かなかった。たぶん自分とおなじことを考えていたのだろう。脊髄反射的といってもいい速さで、掴んだままのマガンジーのからだをふりまわした。すでに生体とおなじ形であったが、まだおおきさが10メートル程度までにしか育っていなかったこともあって、40メートルの巨人なら易々とぶん投げることができた。
キラは爆縮爆弾を取り出すと、中空を飛んで行くマガンジーを追いかけた。
「なにするつもり!」
ミサトが叫んだ。
「火星のときとおなじです。本体ごと別空間に送り込みます」
「そんなことやっても、また戻ってくるわ」
「時間稼ぎですわ」
マガンジーを追ってセラ・マーキュリーを走らせる。重力がさだまらずどうしても足が浮いてふらつく。
「アルさんがあたらしい爆弾を作ってくれれば確実に勝てます。でも今はあれを追い払うのが精いっぱいですわ」
おもいっきりジャンプをすると、マガンジーの尻尾をつかんで、そのまま力の限り下へひっぱった。月面にマガンジーのからだが叩きつけられる。が、重力そのものが弱いため、ただ月の表面の砂ぼこりを軽くまきあげた程度の衝撃だ。
キラは爆縮爆弾のスイッチに手をかけた。
マガンジーの口へ手を突っ込む。
できるだけ奥へ——
あのとき、できるだけ亜獣の中心部へとねじ込んだ爆縮爆弾は、はからずも下半身に潜んでいた核、本体近くで爆発しただけだったのだ。
今度はそれをわかったうえで、それを再現しなければならない。
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