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第四章 第二節 犯罪組織グランディスとの戦い
第927話 自分の手のなかにドラゴンズ・ボールがある
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レイはすこしだけ浮き立っていた。
いま、自分の手のなかに、ドラゴンズ・ボールがある。
つまりはこのゲームの主役は自分になったということだ。
わくわくする気持ちは抑えられなかったが、レイは自分のいる階を特定されないよう、慎重にヤマトたちの位置をさぐりながら移動していた。
このゲームから早々に離脱するのだけは避けたかった。
「セイント、わたしはどこへむかえばいい?」
『ヤツラは一階づつ、しらみつぶしに調べているから、むしろチェック済みになった階にいくのがいいかもしれない』
「なら、タケルのいる、カジノにむかうわ」
「いや、レイ。こっちは無理だ」
ヤマトの声が聞こえた。
「さきほどの爆発で、かなりの怪我人がでてる。相当に混乱しているから……」
「だからいいんじゃない」
レイはヤマトの忠告をさえぎった。
「混乱に紛れることができるわ」
「そうならないんだ、レイ。このフロアの乗務員は怪我人を運びだすのに奔走している。かくいうぼくも今、それを手伝っている最中なんだ」
「じゃあ、そのフロアに行ったら……」
「ああ、きみも手伝わざるを得なくなる」
「そう。それじゃあ無理ね。そんなのに駆り出されたら、すぐにわたしの位置を特定される。アスカのいるフロアはどう?」
「こっちも似たようなモンよ。ただこっちは乗務員の素体が吹き飛ばされて、動けなくなってる。ほかの素体に紛れるもなにもないって状況」
「アスカは大丈夫なの?」
「まあね。まだ敵がうろついているから、動けないふりをしているけどね」
ふいに、この作戦は、とんでもない悪手だったのではないか、と感じてレイはセイントに率直に意見したくなった。
だが、さきに連絡してきのは、セイントのほうだった。
『みんな、あまりよくないニュースだ』
その声はすこし焦っているようだった。セイントらしくない。
『ヤツらの援軍が到着した』
視界の一角に船の外の様子の映像が映し出された。
船の甲板に集結してきているエア・バイクの映像。ゆうに20台はある。そしてその中央にヤタがいた。
「しつこい。またヤタがきたのね」
『この人数は想定していなかった。今、アスカくんをそちらにむかわせる』
「了解。単独で動いているよりマシ」
そのとき、階段の上のほうから、金属と金属がぶつかった、ガチンという甲高い音が聞こえた。ハッとして視線を上にあげる。
4階ほど上の階から、顔が覗いていた。
ヤタだった。
「見つけましたよ」
いま、自分の手のなかに、ドラゴンズ・ボールがある。
つまりはこのゲームの主役は自分になったということだ。
わくわくする気持ちは抑えられなかったが、レイは自分のいる階を特定されないよう、慎重にヤマトたちの位置をさぐりながら移動していた。
このゲームから早々に離脱するのだけは避けたかった。
「セイント、わたしはどこへむかえばいい?」
『ヤツラは一階づつ、しらみつぶしに調べているから、むしろチェック済みになった階にいくのがいいかもしれない』
「なら、タケルのいる、カジノにむかうわ」
「いや、レイ。こっちは無理だ」
ヤマトの声が聞こえた。
「さきほどの爆発で、かなりの怪我人がでてる。相当に混乱しているから……」
「だからいいんじゃない」
レイはヤマトの忠告をさえぎった。
「混乱に紛れることができるわ」
「そうならないんだ、レイ。このフロアの乗務員は怪我人を運びだすのに奔走している。かくいうぼくも今、それを手伝っている最中なんだ」
「じゃあ、そのフロアに行ったら……」
「ああ、きみも手伝わざるを得なくなる」
「そう。それじゃあ無理ね。そんなのに駆り出されたら、すぐにわたしの位置を特定される。アスカのいるフロアはどう?」
「こっちも似たようなモンよ。ただこっちは乗務員の素体が吹き飛ばされて、動けなくなってる。ほかの素体に紛れるもなにもないって状況」
「アスカは大丈夫なの?」
「まあね。まだ敵がうろついているから、動けないふりをしているけどね」
ふいに、この作戦は、とんでもない悪手だったのではないか、と感じてレイはセイントに率直に意見したくなった。
だが、さきに連絡してきのは、セイントのほうだった。
『みんな、あまりよくないニュースだ』
その声はすこし焦っているようだった。セイントらしくない。
『ヤツらの援軍が到着した』
視界の一角に船の外の様子の映像が映し出された。
船の甲板に集結してきているエア・バイクの映像。ゆうに20台はある。そしてその中央にヤタがいた。
「しつこい。またヤタがきたのね」
『この人数は想定していなかった。今、アスカくんをそちらにむかわせる』
「了解。単独で動いているよりマシ」
そのとき、階段の上のほうから、金属と金属がぶつかった、ガチンという甲高い音が聞こえた。ハッとして視線を上にあげる。
4階ほど上の階から、顔が覗いていた。
ヤタだった。
「見つけましたよ」
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