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第四章 第二節 犯罪組織グランディスとの戦い

第917話 アスカさん、こっちも動かない

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 けたたたましい音がして、両方のバイクがへしゃげ、部品があたりに飛び散った。下にいた人々は降り注いできた金属に驚いて、あたりにしゃがみ込んでいる。
 ぶつかったバイクは浮力をうしない、お互いの車体をめり込ませたまま、ドーンと勢いよく地面に落ちた。その衝撃でさらに部品があたりに飛び散る。
 
「アスカさん、大丈夫ですか!」
 クララはアスカのバイクの横に降下しようとした。

「クララ! 近づかないで!」
 ぐちゃぐちゃに潰れたバイクの運転席から、アスカの声がとんだ。
「バイクを奪われるわ!」

 クララはハッとして、すぐにスロットルをひねった。
 だが、間に合わなかった。

 ヤタの背中から3メートルほどの触手が飛び出したかと思うと、クララのからだを強力な力ではね飛ばした。首がもげるのではないか、という衝撃をくらい、あっけないほど簡単にバイクの座席からはじき飛ばされた。
 ごろごろと道端に転がされながら、クララは自分の失態に悔しさをにじませた。

 しくじった——

 ヤタは伸ばした触手でバイクの車体を掴むと、からだを自分のバイクからひきはがすようにして引寄せた。ヤタのからだがアスカのバイクの上をまたいで、中空を移動していく。
 衝突の衝撃で顔の半分は剥がれ落ち、機械部分がむきだしになっていた。左腕はだらりとさがり、下半身はぐちゃぐちゃで、左脚はもげかかっていた。ただドラゴンズ・ボールを握りしめている右腕は、損傷らしきものはない。

「クララ、ヤツをいかせないで!」
 
 アスカから叱咤されたが、みずから動かないところをみると、アスカもヤタとおなじような状態にちがいなかった。
 クララはヤタの逃亡を阻止しようと、立ち上がろうとした。だが、どんなに命令しても、脚部に力がはいらなかった。素体の下半身部分のどこかが破損しているようだった。
「アスカさん、こっちも動かない」

 ヤタがクララを見おろしながら言った。
「は、まったく無謀きわまりないですね」

「生身で戦ってるわけじゃないんですから、多少の無茶ぐらい……」
「にしてもです!」
 背中から出ている触手を器用に使って、バイクのハンドルを握る。
「どうやらあなたがたパイロットは、生存本能や危険回避のリミッターがはずれてるみたいですねぇ」
「かもしれませんわ。なにせ人類のなかで唯一、死と隣あわせのところで生かされている種族ですからね」

「ふ、じつに興味深いですねぇ」

 ヤタがスロットルをひねると、エア・バイクが浮遊しはじめた。
 が、50センチほど浮いたところで、突然、エア・バイクが落下した。

 上空からヤマトが狙いすました電磁パルス弾が、エア・バイクの車体を貫いていた。
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