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第四章 第二節 犯罪組織グランディスとの戦い

第908話 なによ、あれっ!!

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 ドーンという大きな音がして、車が下にぐぐっと沈み込んだ。天井の一部がベコっと凹む。
「セイント、そんなに持たない」
 ヤマトは天井の凹みを見あげながら言った。
 その瞬間、後部座席の両側の窓ガラスに、なにかが打ちつけられる衝撃があった。

 それはおおきな機械の腕だった。

「なによ、あれっ!!」
「あれはたぶん、工業用パワード素体」
 レイがいたって冷静に分析した。
「ビルの破壊や大型機器の破砕用の専用素体だと思う」
 
 ふたたび機械の腕がガラスに打ちつけられると、ガラスにヒビがはいった。
「セイント! 堅牢な強化ガラスじゃなかったのか」
『すまん、タケル。これは想定外だ。ヤツの腕にはドリルが取り付けられている。この車は耐衝撃はトップクラスなのだが、耐振動はそこまでじゃない』

 じゃあ、どうすれば?

 そのことばを発する前に、パワード素体の腕がガラスを砕いて、飛び込んできた。ドリルの先端が、ヤマトの肩を貫いた。手に持ったドラゴンズ・ボールが床にポトリと落ちる。

「レイ!」

 ヤマトが叫んだが、すでにそれよりもはやく、屈みこんだレイがボールを拾いあげていた。
「大丈夫、確保した」

 ヤマトは肩の具合を確認した。一瞬、力を失わされたが、機能そのものは維持できているようだった。
「外に出る!」
 そう叫ぶと、穴の開いたドアを開けて、車の天井に手をかけた。そこをドリルの腕で習われてはなすすべがないので、一気にからだをひきあげて、車の屋根ルーフへ飛びのった。

 そこに3メートルはあろうかと思うほどの大型素体がいた。
 からだのいたるところに、作業ごとに取り換え可能なアタッチメントを装着していて、人間が憑依可能な『素体』というより、武骨な作業機械といったほうがよかった。

「ヤマトタケルぅぅ」

 だが、おおきなからだに埋もれるように見えている顔は、ヤタだった。

「さすが。しつこいね」
「ダイ・ラッキー様はことのほかご立腹でね」
「まぁ、わかるよ。感情の起伏をコントロールできるぼくも、ダイ・ラッキーには腹がたってるからね」
「なぜ、きさまがダイ・ラッキー様に腹を立てる?」
「友人の死の記憶で勝手に荒稼ぎしていたっていうのと、大事な機密を平然と漏らしてくくれたというのが、その理由さ」
「どうでもいいことですね。わたしたちにとっては」

「だろうね」
 そう言いながらヤマトはかがんだまま、車内にむかって手を伸ばした。

「あんたらの組織、グランディスがどうなろうがどうでもいい、とぼくが思っているのと同じだ」

 ヤマトの手が、アスカがさしだしてきた機銃をつかんだ。
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