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第四章 第二節 犯罪組織グランディスとの戦い

第889話 金田日博士、四解文書を受け継ぐ2

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 金田日は金属的な材質をみて、機械、と思ったが、はたしてただしいのか疑問だった。

 それは金属でできた『大樹』にしか見えなかった。
 数十メートルも上にむけてそそり立つ幹からは、いくつもの枝が横にひろがり、天井を覆いつくしていた。そしてその先からは『蔓』のようなワイヤーが伸びて、天井や壁に貼り付いている。
 どうみても無機質な素材であるにもかかわらず、そこからは息吹が感じられた。

「あの樹の袂にある球体に触れてきてください」
 ヤマトが樹の根元に近い部分を指さした。金田日はそこにある球体に目をやった。その球体はあきらかに他とは違う色合いと輝きをしていた。

 この樹の実かなにかだろうか?

 一瞬、これが人工物であることを忘れて、金田日はそういう思いを巡らせた。
「どれくらい触っていればいいのかね」

「さあ。でも触ればわかると思うよ」

「わかった」
 金田日はこれ以上、事前情報を得たところで、なにも事態は変わらないと知った。
 己の不安が毛先ほど払拭されるだけで、この儀式を回避できるわけでもないのだ。

 金田日はすたすたと歩をはやめると、大樹の袂にある『実』に近づいた。

 その実はバスケットボールほどのおおきさがあった。
 表面はツルンとしていたが、よくみると見たことないような幾何学的な紋様が表面に浮き出ていた。

 文字——?

 その配列は紋様というより、文字の羅列だった。だが、地球上のどの文明の文字でもなかった。ラピッド・ラーニングで『言語学』を文字通り、あたまに叩き込んでいたので、それは間違いなかった。
 地球に現存するどの種族の文字でもなかったし、かつて存在したどんな文明の文字でもなかった。

 金田日は深呼吸をした。

 表層に浮き出している文字には興味が湧いたが、今はそんなことにかかわってる時ではない。

 金田日は目をつぶると、ゆっくりと『実』の上に手をおいた。


 一瞬、目の奥にフラッシュがまたたいた。


 ただそれだけだった。
 そしてそれだけで充分だった。

 頭のなかにひとつの文言が浮かんだ。
 そのことばはまるで灰色の脳細胞のひとつひとつに、刷り込まれていくように、じんわりと浸潤していった。

 だが、金田日はひどく混乱していた。

 その文言の意味も伝えたいことも、よくわかったし、理解した。
 にもかかわらず、なんの感情も感じなかった。


 怒りも湧いてこなかった——
 恐怖も覚えなかった——
 絶望に打ちひしがれることもなかったし——


 気が狂いそうになることもなかった。


 これはなんだ?
 なにを伝えようとしている。


 これを伝えられて、どんな反応をするのが正解なのだ?
 ほんとうにこれは「四解文書』の一節なのか——?

 これはなんなんだ——?
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