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第四章 第二節 犯罪組織グランディスとの戦い
第882話 キラの生い立ち
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キラが語る生い立ちは、まるで自分のそれをまるまるトレースしているような感じだった。すくなくとも、7500万キロメートルも離れた星の話とは思えないほど、共通点だらけだった。
すでにうっすらとしか思い出せなかったが、自分の記憶のなかの母は、いつも笑っていた。すくなくとも厳格な父とは対極にある存在だった。
だが、キラにとって母は父と同等の存在だったらしい。
最大の理解者であり、唯一の縁であり、自分を導く導師であり、なによりも忌むべき存在だった。
ただ母のアプローチは父とは若干異なっていた。
「物心ついた頃から、ずっと言われてたわ。『あなたは選ばれた人間なの。デミリアンを操る力を与えられた。だからそれを行使し地球を救ってあげなければならない』って」
父は自分を暴言と体罰を与えることで、マシンにしたてあげようとしたが、母はキラを褒め続けることで、ヒーローにしたてあげようとしたらしい。
「最初の頃は嬉しかったわ。舞いあがってた、と言ってもいい。でもね、そのために強いられたことは、けっして『選ばれた人』には似つかわしくないことばかりだった。もう嫌で嫌でしかたなかったわ……」
「お母様はそのときも、ずっとあたくしを褒め続けてたけど、あたくしにはもう呪詛にしか聞こえなかった」
キラがため息をついた。
ヤマトは一番気になっていることを尋ねた。もっともセンシティブなことだったので、質問のタイミングをさぐっていたが、今がその時だと判断した。
「それで……母さんは……今……」
「お兄さま、案外鈍いんですのね。今までの話で薄々気づいていただけたと思ったんでけど……」
「お母様は亡くなりましたわ。つい2ヶ月前、宇宙放射線病でね」
キラはびっくりするほど、あっけらかんと打ち明けてきた。
「そのあとすぐに亜獣が火星に現われたので、あたくしびっくりしましたわ。まるでこちらの事情を見計らったみたいで……」
それはその通りだ。まちがいない——
ヤマトは直感的にそう感じた。
亜獣たちは、リョウマという精神に弱みを抱えたパイロットを狙い撃ちし、レイに母親の幻影をぶつけ、アスカに亜獣化した兄を刺客として送り込んだりしてきた。
そして自分にはアイを蘇らせることで、ゆさぶりをかけてきた。
母が亡くなって気落ちしているであろうキラを狙わない理由がない——
「ご心配は無用ですわ。あたくしはお母様がいなくなったおかげで、今ここにいますのよ。もしそうでなければ、あたくしは1回も活躍することもなく、終戦を迎えていたかもしれないのですから」
「だからこれは運命。喪失感がないと言えば嘘ですけど、今、あたくし、わくわくしていますの」
すでにうっすらとしか思い出せなかったが、自分の記憶のなかの母は、いつも笑っていた。すくなくとも厳格な父とは対極にある存在だった。
だが、キラにとって母は父と同等の存在だったらしい。
最大の理解者であり、唯一の縁であり、自分を導く導師であり、なによりも忌むべき存在だった。
ただ母のアプローチは父とは若干異なっていた。
「物心ついた頃から、ずっと言われてたわ。『あなたは選ばれた人間なの。デミリアンを操る力を与えられた。だからそれを行使し地球を救ってあげなければならない』って」
父は自分を暴言と体罰を与えることで、マシンにしたてあげようとしたが、母はキラを褒め続けることで、ヒーローにしたてあげようとしたらしい。
「最初の頃は嬉しかったわ。舞いあがってた、と言ってもいい。でもね、そのために強いられたことは、けっして『選ばれた人』には似つかわしくないことばかりだった。もう嫌で嫌でしかたなかったわ……」
「お母様はそのときも、ずっとあたくしを褒め続けてたけど、あたくしにはもう呪詛にしか聞こえなかった」
キラがため息をついた。
ヤマトは一番気になっていることを尋ねた。もっともセンシティブなことだったので、質問のタイミングをさぐっていたが、今がその時だと判断した。
「それで……母さんは……今……」
「お兄さま、案外鈍いんですのね。今までの話で薄々気づいていただけたと思ったんでけど……」
「お母様は亡くなりましたわ。つい2ヶ月前、宇宙放射線病でね」
キラはびっくりするほど、あっけらかんと打ち明けてきた。
「そのあとすぐに亜獣が火星に現われたので、あたくしびっくりしましたわ。まるでこちらの事情を見計らったみたいで……」
それはその通りだ。まちがいない——
ヤマトは直感的にそう感じた。
亜獣たちは、リョウマという精神に弱みを抱えたパイロットを狙い撃ちし、レイに母親の幻影をぶつけ、アスカに亜獣化した兄を刺客として送り込んだりしてきた。
そして自分にはアイを蘇らせることで、ゆさぶりをかけてきた。
母が亡くなって気落ちしているであろうキラを狙わない理由がない——
「ご心配は無用ですわ。あたくしはお母様がいなくなったおかげで、今ここにいますのよ。もしそうでなければ、あたくしは1回も活躍することもなく、終戦を迎えていたかもしれないのですから」
「だからこれは運命。喪失感がないと言えば嘘ですけど、今、あたくし、わくわくしていますの」
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