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第四章 第一節 四解文書 第一節 それを知れば憤怒にかられる

第854話 あなたがたが唯一の存在だからです

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「AIの監視から逃れる? そんなことが可能だというのですか?」

「はい、アスナ・ユウキ様。あなたがたも魔法少女がおなじ手法を使っていたので、ご存知のはずでしょう。健康管理に関しては、AI管理にも穴があるのです」
「つまり、どんなに健康に問題がある行動をおこしても、AIに偽の情報をつかませることで、『警告』を送らせないようにするっていうことですの?」
「さすがデミリアンのパイロットだけある。クララ・ゼーゼマン様、おっしゃる通りです」

「ここでは犯罪も犯せるってこと?」


「いえ。レイ・オールマン様。それはできません。わたくしたちもここで犯罪を起こされては困りますし、その部分のAIの判定の基準は、人間には開示されてませんので、完全な対抗策が確立されていないのです」
「そう……」

「は、くだらない。つまりは健康には問題がでるくらいハメははずせるけど、犯罪を起こすような真似はできない、ってこと?」
「はい。ひらたく言ってしまえば……」

「それでなぜ、わたくしたちは、彼らにあんな後ろ指さされるような言われ方をされるのですか?」
 クララがヤタにふたたび問いかけた。


「それは、あなたがたが、エンベッデッドの命を奪う、唯一の存在だからです」


 ヤマトはまた苦笑いすることになった。
 答えはわかっていたが、あらためて直言されると、笑うしかない。

「彼らエンベッデッドは、自然死する可能性は皆無です。病死も突然死もありません。それだけじゃない。事故死することだって、天文学的確率です。この25世紀において、AIで管理された社会にその身をおく限り、自分たちが与えられた200年近い寿命をまっとうできる」

「亜獣に襲われない限りね」

 ヤマトは先回りして言った。

「はい。そうです。この25世紀において、ひとが寿命をまっとうできない可能性は、亜獣に遭遇するか否か。ほぼそれだけと言っていいでしょう」

「ちょ、ちょっとぉ。あたしたちはその亜獣に命が奪われないよう、戦ってるンでしょうがぁ」
「リュウ様、地球上の100億のだれひとりとして、そうは考えていませんよ。あなたがたが戦わなければ、うしなわれなかった命もあるのです」
「な、アンタ、なに言ってンのぉぉ。あたしたちが戦わなきゃ、もっと死んでるかもしンないのよぉ」


「かもしれない……でしょう」

 そう言うとヤタが脇にしりぞいた。

「到着しました。ボスの部屋です」
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