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第三章 第七節 さよならアイ

第827話 アルとエド 最高のコンビ

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「三代……目……か。ぼくは何代目なんだろ? どうも思い出せない……」

「無理するこたねぇ。すくなくともオレがかかわった亜獣責任者ンなかじゃあ、おまえさんが一番優秀だったのは間違いねぇ」
「うれしいな……」

「おべっかなんかじゃねぇぜ。なにせ、歴代一番亜獣を退治したのは、おまえさんなんだから」

「ああ……そうだね。歴代担当者の積み重ねてきたデータベースや、ヤマト・タケルというエースパイロットの存在はおおきいけど……」
「数字は嘘つかねぇ。だろ?」
「ああ…… まぁそうだ」
 エドは小刻みに頭をゆらしてうなずいた。

「そーいや、おまえさんのこと、みんなエドって呼んでるが、本当はフルネームで呼ばれたかったんじゃなかったのかい? ヤマト・タケルみたいにさ」
「気にしたことはないさ。アル、きみだってそうだろ? きみは正式な場でも苗字を呼ばれることがないじゃないか」

「そうだな。よくて三代目だ。ま、こいつぁ、屋号みたいなモンだからな、しかたねぇさ」だいたい『露伴ろはん』なんて古式ゆかしき苗字、おれにゃあ、分不相応さ」

「だったらぼくも由緒ある古めかしい苗字だし、名前だって『イアン』ってずいぶん堅苦しい感じだ。名前で呼ばれても、しっくりこないさ」

「そーかい、500年くらい前のイギリスのミステリ作家の名前をもらったって聞いたぜ」
「だからさ。そんな偉人の名前…… ぼくには似つかわしくな……」

 エドの背中の羽根がふいに、ジジジジジ……っと音をたてた。エドのからだがビクッと震えた。自分でも驚いたようだった。
「ああ…… もうそろそろらしい」

 エドがアルを見つめた。
「アル、頼みがある……」
「なんだい」
「ぼくは亜獣として死にたくない。人間として死にたい」
「ああ……わかってるさ」

「だから…… アル…… ぼくを殺してほしい……」

 アルはぽんぽんとエドの肩をたたいた。
「だからオレはここにいるのさ」

 アルはゆっくりと立ちあがると、対魔法少女用の短銃をエドにむけた。

「すまない、身勝手なこと言って……」
「気にしなさんな」
「だけどきみを犯罪者にしてしまう」
「なあに、草薙さんがうまく処理してくれるさね」
「だけどきみの心は……」

「相棒だろ。さいごのけじめくらい、オレにつけさせてくれや」


 エドは嬉しそうに口元をゆるめた。
「ありがとう。アル……」


「アルセーヌ・露伴ろはん・三代目」


「ああ、こっちこそ。長いあいだお疲れさん…… エド……」


「江戸川イアン」

 アルはとびっきりの笑顔をエドにむけた。
「エドとアル…… オレたちゃ、兄弟みたいに近しくて、そして最高のライバルだった」

 エドはメガネのツルを持ちあげながら、満足そうな笑顔で言った。

「バーロー」 

 アルは引金をひいた。

 ドンと重々しい銃声がして、あたりが静寂に包まれた。
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