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第三章 第七節 さよならアイ

第826話 ぼくは死ぬのか?

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「ぼくは死ぬのか?」

 エドは生気のない目をむけて言った。
 アルは一瞬、目をそむけそうになった。
 あまりにも変わり果てた姿。直視したくなかった。

 だが、アルはその気持ちをぐっとおさえて、エドを正面から見すえた。

「ああ…… すまねぇな。どうしようもねぇ。草薙さんが言うには、おまえさんはもうとっくに死んでるんだって話だ」
「死んでる?」
「ああ、魔法少女と契約した時点で、命と引き換えに力をもらったんだよ、おまえさんは」

 エドは口元をゆるめた。
「等価交換……ってわけか」

「ああ、魔法少女なりのルールってぇモンがあったんだろうな」
「それを最初に知ってれば、願わなかったのにな」
「いいや、おまえさんは願ったさ。亜獣の研究に命を捧げていたんだ。解明できなかった謎が、すこしでもわかるのなら、命をさしだしても構わないと思ったはずだ」

「ひどいな、アル。ぼくがそんなに亜獣に入れ込んでみえたのかい?」
「実際そうだったろ。おまえさんは亜獣にずっと魅了され続けていたんだから」

 エドは弱々しくうなずいた。
「ああ…… ぼくは亜獣が好きで仕方なかった。だから世界一くわしくなりたかった。世界で一番はやく亜獣の謎を解明したかった」
「国際連邦軍の亜獣の責任者になれたのも、それくらい亜獣に詳しくなったからだろ?」
「たぶんね。でも最前線で亜獣と対峙すればするほど、わからないこともいっぱいでてきて、どんどん深みにはまっていったんだ」
「ああ……わかるぜ。武器開発もそうだからな。うまくいく武器を作ったって思ったら、それを無効にしてくるヤツがでてきやがってきりがねぇ」
「そうだったね。アル、あんたはよくそうやって、ぼくに愚痴ってきた」
「おれの悩みがわかンのは、エド、おまえさんしかいねぇからな」
「右腕の玄羽《くろう》くんがいるじゃないか?」 
「あいつは武器には詳しいし、いい発想をもってるが、まだ責任を負いきれねぇよ」
「アル、あんたが甘やかしてるのさ」

「そんなことあるかい。地球の命運がかかってる責任なんて、簡単に押しつけられやしねぇよ。おれもふくめて、そんなの個人が負えるもんじゃねぇよ」
「たしかにな…… 責任が重すぎる」

「そう考えれば、エド、おまえさんはよくやってきたさ。前の担当者よりずっと熱心だったし、亜獣退治に対する情熱もあった……」

「ま、融通はきかなかったがな」

 エドが弱々しく笑った。
「それでよくぶつかりもしたよね」
「おまえさんは簡単には引き下がらなかったがな。ま、それがよかった」
「よかった?」
「ああ、こっちも武器の開発に妥協できなくなった。おまえさんをぎゃふんと言わせたくてな」
「なるほど…… たしかにあんたの開発した兵器は、どれも見事だった」


「三代目の意地っていうヤツさね」
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