827 / 1,035
第三章 第七節 さよならアイ
第826話 ぼくは死ぬのか?
しおりを挟む
「ぼくは死ぬのか?」
エドは生気のない目をむけて言った。
アルは一瞬、目をそむけそうになった。
あまりにも変わり果てた姿。直視したくなかった。
だが、アルはその気持ちをぐっとおさえて、エドを正面から見すえた。
「ああ…… すまねぇな。どうしようもねぇ。草薙さんが言うには、おまえさんはもうとっくに死んでるんだって話だ」
「死んでる?」
「ああ、魔法少女と契約した時点で、命と引き換えに力をもらったんだよ、おまえさんは」
エドは口元をゆるめた。
「等価交換……ってわけか」
「ああ、魔法少女なりのルールってぇモンがあったんだろうな」
「それを最初に知ってれば、願わなかったのにな」
「いいや、おまえさんは願ったさ。亜獣の研究に命を捧げていたんだ。解明できなかった謎が、すこしでもわかるのなら、命をさしだしても構わないと思ったはずだ」
「ひどいな、アル。ぼくがそんなに亜獣に入れ込んでみえたのかい?」
「実際そうだったろ。おまえさんは亜獣にずっと魅了され続けていたんだから」
エドは弱々しくうなずいた。
「ああ…… ぼくは亜獣が好きで仕方なかった。だから世界一くわしくなりたかった。世界で一番はやく亜獣の謎を解明したかった」
「国際連邦軍の亜獣の責任者になれたのも、それくらい亜獣に詳しくなったからだろ?」
「たぶんね。でも最前線で亜獣と対峙すればするほど、わからないこともいっぱいでてきて、どんどん深みにはまっていったんだ」
「ああ……わかるぜ。武器開発もそうだからな。うまくいく武器を作ったって思ったら、それを無効にしてくるヤツがでてきやがってきりがねぇ」
「そうだったね。アル、あんたはよくそうやって、ぼくに愚痴ってきた」
「おれの悩みがわかンのは、エド、おまえさんしかいねぇからな」
「右腕の玄羽《くろう》くんがいるじゃないか?」
「あいつは武器には詳しいし、いい発想をもってるが、まだ責任を負いきれねぇよ」
「アル、あんたが甘やかしてるのさ」
「そんなことあるかい。地球の命運がかかってる責任なんて、簡単に押しつけられやしねぇよ。おれもふくめて、そんなの個人が負えるもんじゃねぇよ」
「たしかにな…… 責任が重すぎる」
「そう考えれば、エド、おまえさんはよくやってきたさ。前の担当者よりずっと熱心だったし、亜獣退治に対する情熱もあった……」
「ま、融通はきかなかったがな」
エドが弱々しく笑った。
「それでよくぶつかりもしたよね」
「おまえさんは簡単には引き下がらなかったがな。ま、それがよかった」
「よかった?」
「ああ、こっちも武器の開発に妥協できなくなった。おまえさんをぎゃふんと言わせたくてな」
「なるほど…… たしかにあんたの開発した兵器は、どれも見事だった」
「三代目の意地っていうヤツさね」
エドは生気のない目をむけて言った。
アルは一瞬、目をそむけそうになった。
あまりにも変わり果てた姿。直視したくなかった。
だが、アルはその気持ちをぐっとおさえて、エドを正面から見すえた。
「ああ…… すまねぇな。どうしようもねぇ。草薙さんが言うには、おまえさんはもうとっくに死んでるんだって話だ」
「死んでる?」
「ああ、魔法少女と契約した時点で、命と引き換えに力をもらったんだよ、おまえさんは」
エドは口元をゆるめた。
「等価交換……ってわけか」
「ああ、魔法少女なりのルールってぇモンがあったんだろうな」
「それを最初に知ってれば、願わなかったのにな」
「いいや、おまえさんは願ったさ。亜獣の研究に命を捧げていたんだ。解明できなかった謎が、すこしでもわかるのなら、命をさしだしても構わないと思ったはずだ」
「ひどいな、アル。ぼくがそんなに亜獣に入れ込んでみえたのかい?」
「実際そうだったろ。おまえさんは亜獣にずっと魅了され続けていたんだから」
エドは弱々しくうなずいた。
「ああ…… ぼくは亜獣が好きで仕方なかった。だから世界一くわしくなりたかった。世界で一番はやく亜獣の謎を解明したかった」
「国際連邦軍の亜獣の責任者になれたのも、それくらい亜獣に詳しくなったからだろ?」
「たぶんね。でも最前線で亜獣と対峙すればするほど、わからないこともいっぱいでてきて、どんどん深みにはまっていったんだ」
「ああ……わかるぜ。武器開発もそうだからな。うまくいく武器を作ったって思ったら、それを無効にしてくるヤツがでてきやがってきりがねぇ」
「そうだったね。アル、あんたはよくそうやって、ぼくに愚痴ってきた」
「おれの悩みがわかンのは、エド、おまえさんしかいねぇからな」
「右腕の玄羽《くろう》くんがいるじゃないか?」
「あいつは武器には詳しいし、いい発想をもってるが、まだ責任を負いきれねぇよ」
「アル、あんたが甘やかしてるのさ」
「そんなことあるかい。地球の命運がかかってる責任なんて、簡単に押しつけられやしねぇよ。おれもふくめて、そんなの個人が負えるもんじゃねぇよ」
「たしかにな…… 責任が重すぎる」
「そう考えれば、エド、おまえさんはよくやってきたさ。前の担当者よりずっと熱心だったし、亜獣退治に対する情熱もあった……」
「ま、融通はきかなかったがな」
エドが弱々しく笑った。
「それでよくぶつかりもしたよね」
「おまえさんは簡単には引き下がらなかったがな。ま、それがよかった」
「よかった?」
「ああ、こっちも武器の開発に妥協できなくなった。おまえさんをぎゃふんと言わせたくてな」
「なるほど…… たしかにあんたの開発した兵器は、どれも見事だった」
「三代目の意地っていうヤツさね」
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
狭間の世界
aoo
SF
平凡な日々を送る主人公が「狭間の世界」の「鍵」を持つ救世主だと知る。
記憶をなくした主人公に迫り来る組織、、、
過去の彼を知る仲間たち、、、
そして謎の少女、、、
「狭間」を巡る戦いが始まる。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
MMS ~メタル・モンキー・サーガ~
千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』
洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。
その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。
突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。
その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!!
機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる