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第三章 第七節 さよならアイ

第819話 エドにロケット・ランチャーを撃ち込む

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 サイトーはアルに軽く頭をさげると、ロケット・ランチャーを肩にかつぎあげて、照準をあわせた。エドの顔が照準レンズのなかでアップになる。トリガーに指をかける。

 その瞬間、エドの目がカッと見開いた。
 サイトーがひきがねをひく。
 バシュっという破裂音とともに、ロケットが飛び出し、すぐにビルに着弾した。

 ドォォォォン!

 すさまじい音とともに、爆風がはねかえってきた。サイトーは撃つと同時にその場を離脱していたが、それでも爆風に飲みこまれた。ロケット・ランチャーは10メートル前の目標物を撃つようにできてないので当然だった。

 草薙はロケットの着弾を見ていたが、エドに直撃したかまでは確認できなかった。網膜スクリーンに表示されているエドのヴァイタル・データに注意をむける。
 エドは生きているというデータのままだった。

「エドは逃げた。全員位置データを確認しろ!」

 そう言ったとたんエドのヴァイタルデータの信号がふっと消えた。
「消えました!」
 ひとりの隊員が大声をあげた。草薙は言われなくてもわかる、と叱りかけたが、思い直した。

「ヤツはAIですらあざむける能力がある。注意しろ!」
「みんな、エドを人間だと思わねぇでくれ」
 アルが脳内通信内で訴えてきた。

「あいつは、特殊能力を備えた『亜獣』だ。見た目に騙されちまったら、命をうしなっちまう。あんたたちに持たせた武器は、その『亜獣』を倒すために、オレが開発したものだ。遠慮しないで使ってくれ」

「だそうだ」
 草薙はアルの決意を無為にしたくなかった。

「エドと長年のパートナーだったアルが、エドをしとめるために、私情を抑えてこの武器を用意してくれた。我々のやるべきことは、アルの思いに応えて、エドを無力化することだ」

 草薙はとっさに『無力化』ということばを使った。本来なら『殲滅』や『掃討』という言い方をするべきだが、アルへのせめてもの配慮と考えた。

「草薙さん、すまねぇな。だけど無用は気づかいは無用ですよ」



「そうか…… わかった」

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仲間たちに裏切られた——

 みんなが自分を殺そうとしている。
 エドの頭のなかは、復讐心でいっぱいにふくれあがっていた。この恨みつらみをどう形してやろうかという思考だけが、めまぐるしく頭に浮かびあがっている。

 アルに秘密を隠匿された。
 草薙大佐に自分の作戦を却下された。
 ウルスラ総司令が自分を泳がす作戦に加担していた。
 そして、ヤマト・タケルが自分に協力するふりをして、動向をさぐっていた。
 
 わざわざ凄腕ハッカーのセイントを紹介してくれてまでして、極秘データを盗みださせる真似までさせられた。
 
 このままでは金田日に自分のポジションを奪われるのも腹立たしかった。
 腸が煮えくり返る思いといってもいい。
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