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第三章 第七節 さよならアイ

第808話 おれはあいつの最後を看取りてぇ

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「各位、魔法使いエドは、どこに隠れているかわからない。油断しないように」

 草薙素子は脳内通信で、引き連れてきた兵士たちに伝えた。あの武器倉庫でエドと戦った4人と、あらたに招集した10人という、貧弱な布陣であったがいかんともしがたかった。
『ここにバットーやトグロがいないのが腹立たしいな』
 そのこころのなかの本音はフィルタリングされず、兵士たちに届いてしまったらしく、サイトーがいきりたったように言ってきた。
「なに言ってるんです、大佐。ぼくがいるじゃないですか!」
「ああ、そうだな。だがおまえは先ほどの戦いで、怪我をしているだろう」
「それは大佐もおなじでしょう?」
「まぁな……」

 目の前のゲートがひらいて『シミュレーション・エリア』の広大な区画が目に飛び込んできた。草薙はエア・バイクを下に降ろしながら、後部座席のアルに声をかけた。
「アル、あなたはどうするつもり?」
「どうするって?」
「今からわたしたちはエドを殺害するために全力をかける。あなたにそんなところを見せたくない」
「ここで待ってろってか?」
「そうしたほうがいい、と思う」
 アルは後部座席に座ったまま、首をうなだれていた。

「わたしも、あなたをうしろに乗せたまま、戦うっていうことはできないし……」
 草薙が口をひらくと、アルが手をあげてことばを制した。
「草薙さん、お気遣い、すまねぇな。だが、おれはあいつの最後を看取りてぇ」
 アルは後部座席から降りながら言った。
「さいわい、ここにはエア・バイクの予備がある」
「いや、しかし……」
「けっして、あんたらの邪魔はしねぇ!」
 アルが強い口調で訴えた。
「うしろからついていかせてもらえねぇかい。安全な場所まで後退しろ、と言われれば、命令にしたがう。だがもし叶うなら、あいつと最後のことばを交わしてぇんだ」

 そのまなざしはいつになく真剣そのものだった。草薙は説得するのも、時間の無駄だと思った。
「エア・バイクの操縦の経験は?」
「バカ言っちゃあ困るよ。ここに納品される機器は、すべておれがチェックしてるんだ。イシカワ少佐ほどの腕はねぇが、つかずはなれずくらいの距離くらいで運転するのは問題ねぇ」
「じゃあ、30秒で用意してちょうだい」

 アルは格納庫のほうへ駆け出した。

『大佐、大丈夫ですかね?』

 サイトーが草薙の頭上に、バイクを滑らせてきて言った。
「まぁ、しかたがあるまい。なにかあったときは、サイトー、おまえが援護してやってくれ」

『了解しました。でも、まぁ、そうしてもらったほうが、こっちもやりやすい』
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