766 / 1,035
第三章 第六節 ミリオンマーダラー
第765話 草薙の失態1
しおりを挟む
断じて油断したわけではない——
自分が自分に課している戦い方は、そして部下にしいている心構えは、そんな生ぬるいものではない。
だが、そんなことを自負しても、なんの意味もなかった。
結果として草薙は、目の前でエドにまんまと逃げられた。
草薙は脳内通信システムと館内放送でどうじに警告を発した。
「日本支部各位、緊急事態宣言を継続する。エド博士が館内を逃亡中。なんぴとたりとも室内から出ないように。
エド博士は魔法少女。くりかえす。エド博士は魔法少女。近づけば魔法少女にされる。けっして近づかないように!」
そう強い口調で警告してから、サイトーの方に目をむけた。
「サイトー。館内の警護部の連中に、この敵への注意を伝えてくれ」
サイトーはからだの痛みに顔をしかめながら、小刻みにうなずきながら、了解の意をつたえてきた。まだ声がきけずにいるらしい。
つぎに草薙は倉庫の柱の陰で、うずくまっているアルに声をかけた。
「アル、無事か?」
アルは柱の陰からからだを覗かせて「あぁ、ひとまず5体はそろっているさ」と言うと、ぷるぷると震えている指先をこっちにむけながら「しばらく使いモンにはなんねぇがな」と苦笑いした。
「アル、対魔法少女用ロケット・ランチャーを貸し出してほしい」
「いや、草薙さん、すまねえが、ありゃ試作品だし、基地内での使用許可はでてませんぜ」
「いま何門ある?」
アルは抵抗してきたが、反問をゆるさない口調で強引におしきった。
「あ、いや、全部で五門でさぁ」
「ありがとう。それを借りるぞ。案内してくれ」
そう言うなり、ふたたびテレパス・ラインでサイトーに連絡をいれて、アルについていくように命じた。
草薙はサイトーと残りの4人の部下がよろよろと、アルのうしろに歩いてついていくのを確認すると、エドがでていったセキュリティ扉の方を見た。
あの時のエドへの包囲作戦はまさにシミュレーション通りだった。
まずエドの四方を4台のエア・バイクが固めた。
エドは分解光線を出せないとは聞いていたが、念のため5メートル以上離れた。兵士は包囲した時点で、マジカル・ソードを構えており、槍の先はエドのからだまで1メートルの位置に突きつけられていた。万が一の飛翔を考えて、上方にはマジカル・ソードを構えたサイトーが控えている。
そしてアルを守るため、草薙はエドとアルのあいだにエア・バイクを位置取りしていた。アルはさらに10メートルほど離れたところにある、この倉庫のおおきな柱の陰に身を潜めた。
この時点では完璧に、この場をコントロールしていた、はずだった。
自分が自分に課している戦い方は、そして部下にしいている心構えは、そんな生ぬるいものではない。
だが、そんなことを自負しても、なんの意味もなかった。
結果として草薙は、目の前でエドにまんまと逃げられた。
草薙は脳内通信システムと館内放送でどうじに警告を発した。
「日本支部各位、緊急事態宣言を継続する。エド博士が館内を逃亡中。なんぴとたりとも室内から出ないように。
エド博士は魔法少女。くりかえす。エド博士は魔法少女。近づけば魔法少女にされる。けっして近づかないように!」
そう強い口調で警告してから、サイトーの方に目をむけた。
「サイトー。館内の警護部の連中に、この敵への注意を伝えてくれ」
サイトーはからだの痛みに顔をしかめながら、小刻みにうなずきながら、了解の意をつたえてきた。まだ声がきけずにいるらしい。
つぎに草薙は倉庫の柱の陰で、うずくまっているアルに声をかけた。
「アル、無事か?」
アルは柱の陰からからだを覗かせて「あぁ、ひとまず5体はそろっているさ」と言うと、ぷるぷると震えている指先をこっちにむけながら「しばらく使いモンにはなんねぇがな」と苦笑いした。
「アル、対魔法少女用ロケット・ランチャーを貸し出してほしい」
「いや、草薙さん、すまねえが、ありゃ試作品だし、基地内での使用許可はでてませんぜ」
「いま何門ある?」
アルは抵抗してきたが、反問をゆるさない口調で強引におしきった。
「あ、いや、全部で五門でさぁ」
「ありがとう。それを借りるぞ。案内してくれ」
そう言うなり、ふたたびテレパス・ラインでサイトーに連絡をいれて、アルについていくように命じた。
草薙はサイトーと残りの4人の部下がよろよろと、アルのうしろに歩いてついていくのを確認すると、エドがでていったセキュリティ扉の方を見た。
あの時のエドへの包囲作戦はまさにシミュレーション通りだった。
まずエドの四方を4台のエア・バイクが固めた。
エドは分解光線を出せないとは聞いていたが、念のため5メートル以上離れた。兵士は包囲した時点で、マジカル・ソードを構えており、槍の先はエドのからだまで1メートルの位置に突きつけられていた。万が一の飛翔を考えて、上方にはマジカル・ソードを構えたサイトーが控えている。
そしてアルを守るため、草薙はエドとアルのあいだにエア・バイクを位置取りしていた。アルはさらに10メートルほど離れたところにある、この倉庫のおおきな柱の陰に身を潜めた。
この時点では完璧に、この場をコントロールしていた、はずだった。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
全ての悩みを解決した先に
夢破れる
SF
「もし59歳の自分が、30年前の自分に人生の答えを教えられるとしたら――」
成功者となった未来の自分が、悩める過去の自分を救うために時を超えて出会う、
新しい形の自分探しストーリー。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる