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第三章 第六節 ミリオンマーダラー
第749話 ヴェスビオ火山噴火4
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うごきだそうとしたその瞬間、セラ・ヴィーナスの顔の近くでなにかが爆発した。
すぐ脇にあるビルのガラスが砕け散り、外装は粉砕されて、そのブロック片がヴィーナスの顔にあたる。爆発しか思えなかった衝撃は、自分のすぐ隣にあったビルに、噴石が衝突したものだった。
まさか…… 10キロ以上離れてンのよ、ここ。
あたしはヴェスビオ火山のほうへ目をむけた。
火口からおおきな火柱があがり、噴石がふたたび放出されたのが見えた。雨粒のように隙間なく、無数の石飛礫がながい炎の尾をひいて、こちらめがけて飛んでくる。問題はその飛礫がより遠くまで飛んでこようとしていること、そして大きさがリンの指摘通り、三階建てのビルほどあることだ。
どうやっても避けようもない。
「アイ! そのビルの陰に隠れて!」
タケルの叫び声が聞こえた。
喉が一発で涸れちゃうんじゃないかって思うほど、余裕のない逼迫した声。
あたしはなにをもおいてそれに従った。さきほど噴石がぶつかったビルの背後にまわりこむと、セラ・ヴィーナスのからだをそのビルの側面に、ぴたりとくっつけて衝撃にそなえた。
これで大丈夫。タケルが言うんだから、まちがいない。
あたしはそう思った。
だけどそれはとんだ勘違いで、ただの慢心だったことを思い知らされた。ミサイルのような威力をもった火山弾は、マシンガンさながらに間断なくビルにぶち当たってきた。
それはあたしが隠れたビルだけでなく、ビルというビルを無差別に破壊した。高いも低いも、古いもあたらしいも、スタイリッシュも武骨も、まったくお構いなしだった。ガラスや看板などの装飾などの脆弱な箇所は、情け容赦なく破壊され、強固なはずの柱や外装、梁なども、おそろしいほど易々と削りとられ、そして砕かれていった。
あたしの隠れていたビルは、街のシンボル的な高層ビルの一棟で、比較的あたらしくかなり堅牢な造りだった。そのおかげでしばらくは噴石の攻撃に持ちこたえた。
それでもそう長くは耐えきれないということは、直感的にわかった。
その抜きんでた高さのせいで、噴石の被害はほかのビルの比ではなかったし、火の玉がビルに激突するたび、左、右と揺らぎはじめていたからだ。いいように殴りつけられる、サンドバック状態と言っていいかもしれない。
あたしはどこかに移動できるビルがないかと、あたりを見回した。が、通りの並びのビルはどこもおなじような惨状で、身を守る、という期待には応えてくれそうもない。
そこでビルのなかに目をむけ、このビルの手前側のほうをのぞき見てみた。
ビルの窓からフロア越しに、様々なものが見てとれた。
すぐ脇にあるビルのガラスが砕け散り、外装は粉砕されて、そのブロック片がヴィーナスの顔にあたる。爆発しか思えなかった衝撃は、自分のすぐ隣にあったビルに、噴石が衝突したものだった。
まさか…… 10キロ以上離れてンのよ、ここ。
あたしはヴェスビオ火山のほうへ目をむけた。
火口からおおきな火柱があがり、噴石がふたたび放出されたのが見えた。雨粒のように隙間なく、無数の石飛礫がながい炎の尾をひいて、こちらめがけて飛んでくる。問題はその飛礫がより遠くまで飛んでこようとしていること、そして大きさがリンの指摘通り、三階建てのビルほどあることだ。
どうやっても避けようもない。
「アイ! そのビルの陰に隠れて!」
タケルの叫び声が聞こえた。
喉が一発で涸れちゃうんじゃないかって思うほど、余裕のない逼迫した声。
あたしはなにをもおいてそれに従った。さきほど噴石がぶつかったビルの背後にまわりこむと、セラ・ヴィーナスのからだをそのビルの側面に、ぴたりとくっつけて衝撃にそなえた。
これで大丈夫。タケルが言うんだから、まちがいない。
あたしはそう思った。
だけどそれはとんだ勘違いで、ただの慢心だったことを思い知らされた。ミサイルのような威力をもった火山弾は、マシンガンさながらに間断なくビルにぶち当たってきた。
それはあたしが隠れたビルだけでなく、ビルというビルを無差別に破壊した。高いも低いも、古いもあたらしいも、スタイリッシュも武骨も、まったくお構いなしだった。ガラスや看板などの装飾などの脆弱な箇所は、情け容赦なく破壊され、強固なはずの柱や外装、梁なども、おそろしいほど易々と削りとられ、そして砕かれていった。
あたしの隠れていたビルは、街のシンボル的な高層ビルの一棟で、比較的あたらしくかなり堅牢な造りだった。そのおかげでしばらくは噴石の攻撃に持ちこたえた。
それでもそう長くは耐えきれないということは、直感的にわかった。
その抜きんでた高さのせいで、噴石の被害はほかのビルの比ではなかったし、火の玉がビルに激突するたび、左、右と揺らぎはじめていたからだ。いいように殴りつけられる、サンドバック状態と言っていいかもしれない。
あたしはどこかに移動できるビルがないかと、あたりを見回した。が、通りの並びのビルはどこもおなじような惨状で、身を守る、という期待には応えてくれそうもない。
そこでビルのなかに目をむけ、このビルの手前側のほうをのぞき見てみた。
ビルの窓からフロア越しに、様々なものが見てとれた。
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