739 / 1,035
第三章 第六節 ミリオンマーダラー
第738話 アイの回想 ナポリの戦い1
しおりを挟む
ナポリに亜獣が出現したという第一報を受けたとき、あたしはタケルのベッドの中にいた。
裸のまま抱きあったまま微睡んでいて、とってもすてきな夢がみれそうな気分でいたので、ひや水をぶっかけてきたようなアラートにはむかっ腹がたった。
だけどすでにタケルはベッドから飛び起きていて、部屋の隅で『コンバットスーツ』用の『超導体スプレー』を素っ裸のからだに噴霧しているところだった。
あたしも起きようとしたけど、自分が服をきてないことに気づいて、あわててシーツをひっかぶった。
「タケル、あたしのほうにそのスプレー投げて!」
タケルは不思議そうな目をむけた。
「アイもこっちでやったらどう?」
「いやよぉ、あたし裸なのよ」
「だから?」
「はずかしいでしょ」
「今さらぁ。もうおたがいの裸は見慣れてるだろ」
「見慣れてる? 見飽きたってこと?」
「そんなわけないじゃないか。ぼくらはまだ結ばれてないんだから、いつだってアイの裸は刺激的さ。がまんするのに必死だよ」
あたしは恥ずかしさで顔を真っ赤にして呟いた。
「でも、タケル、がまんしてくれてる……」
「うん。アイのことが大事だからね」
「ありがと…… でもスプレーしてるとこ見られたくない」
タケルはくすりと笑うと、ぽーんとスプレーをあたしのほうへ放り投げてくれた。
あたしはシーツの下に身を隠すようにして、スプレーを肌にふきつけはじめた。
コンバットスーツを装備してデミリアン格納庫へ行くと、春日リンとアルとエドの三人の責任者が雁首をそろえて待ち構えていた。
就寝中をたたきおこされたはずにもかかわらず、リンはパリッとした白衣に身を包んでいて隙がなかった。ただアルはそのまま寝ていたのか、いつものシミのついた作業服のままだったし、エドはそこらの白衣をひっつかんで羽織ったのだろう、よれよれの上、ボタンがかけちがいになっていた。
あたしはそれを見て、自分もどこかに着衣に乱れがないかと、あわてて自分の身だしなみをチェックした。ついさきほどまで、タケルのベッドに潜り込んでいたのだ。それに気づかれるような、まぬけなミスは絶対に勘弁だ。
「ヤマトくん、アイくん。こちらにくるあいだに、概要は把握しているよね」
エドが眼鏡をずりあげながら、開口一番そう言ってきた。こういう仕草のときは、自分がうしろめたいのをごまかしている時だ。
「なぁに言ってンのよ、エド。亜獣の形状不明ってどういうことよぉ。把握もなにも、情報はスッカスカじゃないのさ」
裸のまま抱きあったまま微睡んでいて、とってもすてきな夢がみれそうな気分でいたので、ひや水をぶっかけてきたようなアラートにはむかっ腹がたった。
だけどすでにタケルはベッドから飛び起きていて、部屋の隅で『コンバットスーツ』用の『超導体スプレー』を素っ裸のからだに噴霧しているところだった。
あたしも起きようとしたけど、自分が服をきてないことに気づいて、あわててシーツをひっかぶった。
「タケル、あたしのほうにそのスプレー投げて!」
タケルは不思議そうな目をむけた。
「アイもこっちでやったらどう?」
「いやよぉ、あたし裸なのよ」
「だから?」
「はずかしいでしょ」
「今さらぁ。もうおたがいの裸は見慣れてるだろ」
「見慣れてる? 見飽きたってこと?」
「そんなわけないじゃないか。ぼくらはまだ結ばれてないんだから、いつだってアイの裸は刺激的さ。がまんするのに必死だよ」
あたしは恥ずかしさで顔を真っ赤にして呟いた。
「でも、タケル、がまんしてくれてる……」
「うん。アイのことが大事だからね」
「ありがと…… でもスプレーしてるとこ見られたくない」
タケルはくすりと笑うと、ぽーんとスプレーをあたしのほうへ放り投げてくれた。
あたしはシーツの下に身を隠すようにして、スプレーを肌にふきつけはじめた。
コンバットスーツを装備してデミリアン格納庫へ行くと、春日リンとアルとエドの三人の責任者が雁首をそろえて待ち構えていた。
就寝中をたたきおこされたはずにもかかわらず、リンはパリッとした白衣に身を包んでいて隙がなかった。ただアルはそのまま寝ていたのか、いつものシミのついた作業服のままだったし、エドはそこらの白衣をひっつかんで羽織ったのだろう、よれよれの上、ボタンがかけちがいになっていた。
あたしはそれを見て、自分もどこかに着衣に乱れがないかと、あわてて自分の身だしなみをチェックした。ついさきほどまで、タケルのベッドに潜り込んでいたのだ。それに気づかれるような、まぬけなミスは絶対に勘弁だ。
「ヤマトくん、アイくん。こちらにくるあいだに、概要は把握しているよね」
エドが眼鏡をずりあげながら、開口一番そう言ってきた。こういう仕草のときは、自分がうしろめたいのをごまかしている時だ。
「なぁに言ってンのよ、エド。亜獣の形状不明ってどういうことよぉ。把握もなにも、情報はスッカスカじゃないのさ」
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
狭間の世界
aoo
SF
平凡な日々を送る主人公が「狭間の世界」の「鍵」を持つ救世主だと知る。
記憶をなくした主人公に迫り来る組織、、、
過去の彼を知る仲間たち、、、
そして謎の少女、、、
「狭間」を巡る戦いが始まる。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
MMS ~メタル・モンキー・サーガ~
千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』
洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。
その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。
突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。
その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!!
機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる