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第三章 第六節 ミリオンマーダラー
第707話 あの亜獣はひとを食べてる……?
しおりを挟む「ええ、ミサトさん、もちろんです」
「じゃあ、教えて、タケル!。あのエンアイムはなにをしようとしてるの?」
「そうですね。単純な答えは、あの亜獣は、ひとを食べてる、ですかね」
司令室内の空気がざらついた——。
おおくのクルーが感じていることを、ヤマトが率直に解答したことで、胸のなかにあった嫌な予感が現実化した。そんな印象を受ける。
「あなた、本当にそう思ってる?」
「ミサトさん、情報不足ですよ。現時点では、ぼくには判断がつきません」
ミサトは顔を軽く顔をしかめてから、別のモニタにちらりと目をやった。
おそらくレイに意見を聞こうとしたのだろう。だが、そのモニタが現在真っ暗になっており、信号がまったくきていない。すぐにそれに気づいて、下唇をぎゅっとかんだ。
「レイはどうなってンの、ミライ」
「レイは今、ユウキと合流するため、連絡通路の縦穴を滑りおりてます。その間は有線ケーブルを使えないので、連絡は……」
「もういいわ!」
そう言うなり、モニタのむこうのヤマトをにらみつけた。
「タケル。わたしなりの解釈を言わせてもらっていい?」
「なにを?。司令官の解釈なら、別にぼくの許可なんて……」
「女の勘ってヤツで言わせてもらいたいの。もちろん性的な能力差を口にするのは、時代錯誤だし、性差別だってわかってるわ。でもね、男とちがって、女は右脳と左脳が脳梁で繋がっているという物理的なちがいがある。『女の勘』は400年前に科学的に証明されている」
「エクスキューズはいいですよ。なにが閃いたんです?」
「あのおんなはなにかたくらんでいるのよ」
「あのおんな……って?」
「あのエンアイムは、あんたの恋人だったエンマ・アイ、そのものでしょうがぁ。だからなんとなくわかるの。腹立たしいけどね」
「なにを言っているのか……」
「あなたの彼女は、あなたを驚かせたいと願っているはず。だからなにかサプライズを仕込んでいるような気がするの」
自分に言い聞かせるようにミサトは言ったが、ミライはその意見にハッとさせられた。
「ミサト司令。わたしもそう思います」
気づくと、その感嘆の気持ちとともに口から同意することばが漏れでていた。
ミサトは一瞬キョトンとして表情筋をゆるめたが、すぐに真顔で口元をひきしめた。
「めずらしいじゃない。ミライ副司令。あなたとわたしは水と油そのものだから、意見があうことがないと思ってたわ」
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