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第三章 第五節 エンマアイの記憶

第687話 倒したはずの魔法少女の遺体はどこへ?

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 アルはどこにいる?。

 エドは施設までのルートを確認するふりをして、脳内でアルの位置を尋ねた。すぐにAIがそれに答えてくれた。ここからむかうエリアの2ブロックほど離れた位置に、オレンジ色の光が点滅し、『アル』という文字がその上に浮き出していた。

「エド博士。どうされました?」

「いや、不審人物がうろついてないのか気になってね」
「ご心配なく。それはわれわれが秒単位でチェックしております」
「あぁ、すまない。さすがに不安でね」
「ご心配は無用です。われわれは草薙大佐より詳細な指示を受けておりますので」
「そうなんですか。安心しましたよ」
 エドは兵士に見とがめられたのをごまかしたくて、すこしばかりオーバーリアクション気味に喜んで見せた。だが兵士たちは顔色も態度も変えることなく、あたりに細心の注意をはらいながら、歩をすすめていった。
 数十歩程度歩いたところで、兵士のひとりが「足元にご注意ください」と声をかけてきた。

「さきほどの草薙大佐たちと魔法少女と戦闘のせいで、天井が破壊されててすこしばかり暗くなっています。床や壁なども破壊されて、転がっていますのでつまずかないようにしてください」

 そう注意を促されて、あたりを眺めてみると、床には焼け焦げた痕や、えぐれた痕、通路の壁には崩れている箇所もあった。
 天井のライトがチカチカとまたたいている。

 ふと疑問が浮かんで、エドは兵士に尋ねた。
「先ほど草薙さんたちが魔法少女と交戦したのは、ここだったんだよね」

「はい。そのとおりです」
「たしか、魔法少女を倒したはずだが、その遺体……はどこへ?」
「あぁ……。それはドロイドが片づけましたよ」
 それを受けてもうひとり、先頭を歩いている兵士が相槌を打った。
「パーツが再利用されかねませんからね。すぐに回収して『エレメント・フリージング(元素凍結)』にまわされたはずです」

「ああ、なるほど……」

 エドがそう言った瞬間だった。
 背後でゴトンとなにかが落ちる鈍い音がした。
 エドはあわてて振り向いたが、その落ちてきたものは、ころころと廊下を転がってきてエドの足元でとまった。


 それは人間の頭だった。
 血まみれで真っ赤に染まった頭。顔にはおびただしいキズがあり、一番おおきなキズは、口元を真横にぱっくりと切り裂いていた。

 目がかっと見開かれる。

 エドの心臓がとまりそうになった。
 その頭はなにか呪文を呟いた。エドにはそう見えた。
 だが、ぱっくりと切り裂かれた口は、それを音にできるように動かなかった——。

 エドにはそれでもその呪文が聞こえた。


 まじかるぅぅ——。
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