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第三章 第五節 エンマアイの記憶

第668話 ブライトの謝罪と後悔に困惑した

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『カツライ司令。ヤツラの本当の狙いはヤマト・タケルだ』
 ブライトは強い口調で言った。
『あの亜獣はエンマ・アイの脳を盗み、その記憶を利用して地球上を混乱におとしいれた。それもこれも、ヤマトを精神的に追い詰め、人類のさいごの頼みの綱を機能不全、もしくは葬りさることだ——』

『そして、そのためのすべてのカードをヤツラは手にしている』

「ど、どういうことよ?」

『このあと起きることこそが重大なのです』

 ブライトが核心に迫ろうとしていた。
 ふいに不安に駆られたショートは、マンゲツのコックピット内のヤマトの映像に目をむけた。ヤマトは胸の前で腕を組んで、シートに深く体を沈めていた。首を前にたおしているため、表情は見えなかったが、微動しない様は眠っているように見えた。

 ブライトのことばが続く。

「このときのヤマトの怪我はロシアで亜獣『ライデーン』と戦ったときに負傷したものです。このときの戦いで彼は3ヶ月以上、戦列を離脱させられた」
「ああ……、あの戦いの……。どうりで……」

『ええ。この戦いでわれわれ人類は、ヤマト隊長とツルゴ副隊長のふたりをうしない、三体のデミリアンを大破させられた。そのうえヤマトは重傷をおった……』

「わたしたちなら、最新医療の『ラピッド・ヒーリング』で数日で完治できそうだけど、パイロットは自然治癒が義務づけられている……、そうね。かかるわね」
『彼が入院中は、神名朱門かみなあやととエンマ・アイのふたりで、亜獣対応をせざるを得ませんでした。ですが……』

 そこで文節を切ってブライトが、ショートの方に目配せのような視線を送ってきた。そこには若干の気まずさと、強い悔恨の念、そしておおきな覚悟のようなものが見てとれた。
『ですが、私の判断ミスで、わずかな被害者の救助を優先したために、アヤトに出撃をしいたのです。結果、アヤトを失ってしまいました』
 ブライトは申し訳ていどに、頭をさげてから話を続けた。

『アヤトには自分の武器と亜獣の相性が悪い、と反対されました。アルが開発したあたらしい兵器を、セラ・マーズにマッチングさせるまで待つべきだと。だが、わたしはそれを無視して、命令をくだした……』

『悔やんでも悔やみきれない。彼には、アヤトには申し訳ないことをした……』

 ショートはブライトの謝罪と後悔に困惑した。

 こんなとき、どんな感情を沸き立たせればいいのかわかない——。
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