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第三章 第五節 エンマアイの記憶
第661話 司令部!。なにか変なものが見える!
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【だけどあたしは人類を救いたい】
ふいにアスカの頭に声が響いた。
「なに……?」
アスカは最初、疑似脳内通信装置『インフォ・ギア』を通じた脳内の声だと思った。が、すぐにそれがちがうことがわかった。
視界にどこかの部屋らしき光景が、スーッと広がりはじめたからだ。アスカは自分がだれかの心の中に入りこんだと感じた。手のこんだヴァーチャル空間になんの説明もなく投入された感覚。だが没入観はカケラもない。あくまでも傍観者の立場でそれを眺めているという疎外感がおおきい。
まるで自分が幽体にでもなったかのような視点。だが、そこにいるだれかの感情が、耳元で聞いているように伝わってくる。
「司令部!。なにか変なものが見える!」
『アスカ!、こっちもそう。私たちも全員それが見えて……いえ、感じてる』
春日リンがアスカの質問に答えると、ユウキもとまどいを隠せない様子で言った。
「アスカくん、わたしにも見えているのだよ」
「どういうこと。皆で亜獣の術にはまったの?」
「いいや、これからはめられるんだ」
その声はヤマトタケルだった。
ヤマトはマンゲツのコックピットに座って、すでに準備万端に整えた状態だったが、顔に余裕がないように見えた。
「ぼくを狙った、心理攻撃だ」
そう言われたのと同時に、目の前にぼんやりとしたイメージがゆっくりと、しっかり形作られていった。
そこにいたのは、ベッドで上半身を起こした状態のヤマトだった。すこし幼い印象を受けるが、ヤマトに間違いなかった。だがこのヤマトは見るからに痛々しい怪我をしていた。
左の肩口はギプス状のもので固定され、手のひらには包帯が巻かれている。顔や首など見えている部分には、擦り傷や打ち身に伴う皮下出血が見られた。パイロットはDNAに影響するため、近代的処置は施されないので、そのような旧態依然とした処置となっているのだろう。
ベッドの脇からひとりの少女が近づいてくると、着ていた服をさらりと落とすようにして脱いだ。その下にはなにも着ていなかった。彼女は素っ裸のままヤマトに近づくと、覆いかぶさるようにして、ヤマトの顔を覗き込んで言った。
【タケル、今すぐあたしを抱いて——】
【そしてあなたの子種をあたしにちょうだい】
ふいにアスカの頭に声が響いた。
「なに……?」
アスカは最初、疑似脳内通信装置『インフォ・ギア』を通じた脳内の声だと思った。が、すぐにそれがちがうことがわかった。
視界にどこかの部屋らしき光景が、スーッと広がりはじめたからだ。アスカは自分がだれかの心の中に入りこんだと感じた。手のこんだヴァーチャル空間になんの説明もなく投入された感覚。だが没入観はカケラもない。あくまでも傍観者の立場でそれを眺めているという疎外感がおおきい。
まるで自分が幽体にでもなったかのような視点。だが、そこにいるだれかの感情が、耳元で聞いているように伝わってくる。
「司令部!。なにか変なものが見える!」
『アスカ!、こっちもそう。私たちも全員それが見えて……いえ、感じてる』
春日リンがアスカの質問に答えると、ユウキもとまどいを隠せない様子で言った。
「アスカくん、わたしにも見えているのだよ」
「どういうこと。皆で亜獣の術にはまったの?」
「いいや、これからはめられるんだ」
その声はヤマトタケルだった。
ヤマトはマンゲツのコックピットに座って、すでに準備万端に整えた状態だったが、顔に余裕がないように見えた。
「ぼくを狙った、心理攻撃だ」
そう言われたのと同時に、目の前にぼんやりとしたイメージがゆっくりと、しっかり形作られていった。
そこにいたのは、ベッドで上半身を起こした状態のヤマトだった。すこし幼い印象を受けるが、ヤマトに間違いなかった。だがこのヤマトは見るからに痛々しい怪我をしていた。
左の肩口はギプス状のもので固定され、手のひらには包帯が巻かれている。顔や首など見えている部分には、擦り傷や打ち身に伴う皮下出血が見られた。パイロットはDNAに影響するため、近代的処置は施されないので、そのような旧態依然とした処置となっているのだろう。
ベッドの脇からひとりの少女が近づいてくると、着ていた服をさらりと落とすようにして脱いだ。その下にはなにも着ていなかった。彼女は素っ裸のままヤマトに近づくと、覆いかぶさるようにして、ヤマトの顔を覗き込んで言った。
【タケル、今すぐあたしを抱いて——】
【そしてあなたの子種をあたしにちょうだい】
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