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第三章 第五節 エンマアイの記憶
第653話 この子、ほかのとちがう!!
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レイは薙刀のサイズを最大サイズにした。
そしておおきく振りかぶると、走っている勢いを借りて、槍投げのようにして薙刀を亜獣めがけて投げつけた。方向やタイミングはアジャストできていた。
だが手から離れた武器は『移行領域(トランジショナル・ゾーン)』のベールのむこうにとどく力を急速にうしなう。
跳ね返されるか、そのまま通り抜ける——。
レイはそう思った。
が、そうならなかった。
穴のなかに引っ込む寸前の亜獣の顔の先端部分に、薙刀が突き刺さりそのまま柄の中腹まで突き抜けた。あたりに血と体液が飛び散った。
この子、ほかのとちがう!!。
この亜獣はこのていどでは動きをとめなかった。体躯をのたうち回らせながら、すぐにダクトのなかへからだを引っ込めようとした。が、先端部を貫かれた柄が、まるで閂のようにダクト入り口にひっかかり、それをはばんだ。
この閂をはずそうと亜獣がもがく。ガシャン、ガシャンと音をたてて必死で、首を引っ込めようとする。
レイは亜獣の真下まで行き、どうしたものかと考えを巡らせはじめていると、クララのセラ・ジュピターがやってきた。
「レイさん、どうしました?」
「さっきの長いのは?」
「死にましたよ。見事な背二枚下ろしになってね」
「あれは手ごたえのない弱い奴だった」
「ええ、そうですね。刺したときもてんで手応えがありませんでした」
「でも、最後のこの一体だけがちがっている」
亜獣は相変わらずガンガンとけたたましい音をたてて、逃げようとあがいていた。
「わたくしのロング・ソードでとどめを刺しましょうか?」
クララはソートを持ったまま手を伸ばして、亜獣の顔に押しあてた。
「ちょっと待って、クララ」
「どうしたんです?」
「三体の質感の差が気になる」
「わかりました。ひきずり出しましょう」
クララはそう言うなりソードを床において、亜獣を貫いている槍の刃のほうに回り込んだ。刃に触らないように、慎重に刃の峰部分に両手を乗せて体重をかけた。
「レイさん、反対側をお願いします」
クララにそう促されて、レイは薙刀の柄の終端側に手をかけた。
「1・2の3で一気に下に引っぱって、引きずりだしますよ。どうせ指なんですから、はやく片づけてしまいましょう」
クララにイニシアチブを握られた形で、戦っているのはレイとしては不思議な気分だったが、やりたいことはおなじだったので素直に従った。
レイはセラ、サターンの腕に力を入れた。掛け声にあわせて両側から勢いよく引っぱる。
予想外の抵抗があった。
レイは途中でプチンと切れるか、槍が顔を突き破って抜けてしまう、と想定していただけに、驚きは隠しきれなかった。
「もっと力をこめて!」
クララが指示を飛ばす。
そしておおきく振りかぶると、走っている勢いを借りて、槍投げのようにして薙刀を亜獣めがけて投げつけた。方向やタイミングはアジャストできていた。
だが手から離れた武器は『移行領域(トランジショナル・ゾーン)』のベールのむこうにとどく力を急速にうしなう。
跳ね返されるか、そのまま通り抜ける——。
レイはそう思った。
が、そうならなかった。
穴のなかに引っ込む寸前の亜獣の顔の先端部分に、薙刀が突き刺さりそのまま柄の中腹まで突き抜けた。あたりに血と体液が飛び散った。
この子、ほかのとちがう!!。
この亜獣はこのていどでは動きをとめなかった。体躯をのたうち回らせながら、すぐにダクトのなかへからだを引っ込めようとした。が、先端部を貫かれた柄が、まるで閂のようにダクト入り口にひっかかり、それをはばんだ。
この閂をはずそうと亜獣がもがく。ガシャン、ガシャンと音をたてて必死で、首を引っ込めようとする。
レイは亜獣の真下まで行き、どうしたものかと考えを巡らせはじめていると、クララのセラ・ジュピターがやってきた。
「レイさん、どうしました?」
「さっきの長いのは?」
「死にましたよ。見事な背二枚下ろしになってね」
「あれは手ごたえのない弱い奴だった」
「ええ、そうですね。刺したときもてんで手応えがありませんでした」
「でも、最後のこの一体だけがちがっている」
亜獣は相変わらずガンガンとけたたましい音をたてて、逃げようとあがいていた。
「わたくしのロング・ソードでとどめを刺しましょうか?」
クララはソートを持ったまま手を伸ばして、亜獣の顔に押しあてた。
「ちょっと待って、クララ」
「どうしたんです?」
「三体の質感の差が気になる」
「わかりました。ひきずり出しましょう」
クララはそう言うなりソードを床において、亜獣を貫いている槍の刃のほうに回り込んだ。刃に触らないように、慎重に刃の峰部分に両手を乗せて体重をかけた。
「レイさん、反対側をお願いします」
クララにそう促されて、レイは薙刀の柄の終端側に手をかけた。
「1・2の3で一気に下に引っぱって、引きずりだしますよ。どうせ指なんですから、はやく片づけてしまいましょう」
クララにイニシアチブを握られた形で、戦っているのはレイとしては不思議な気分だったが、やりたいことはおなじだったので素直に従った。
レイはセラ、サターンの腕に力を入れた。掛け声にあわせて両側から勢いよく引っぱる。
予想外の抵抗があった。
レイは途中でプチンと切れるか、槍が顔を突き破って抜けてしまう、と想定していただけに、驚きは隠しきれなかった。
「もっと力をこめて!」
クララが指示を飛ばす。
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