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第三章 第五節 エンマアイの記憶

第644話 その瞬間、エドの顔から血の気がひいた

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 無理やり送りつけられた映像には、二体の亜獣のリアルな3D映像が映し出されていた。
 右に今イシカワが相手にしている、レイ・クララ組の熱海側の亜獣、そして左にアスカ・コウキ組を襲った箱根側の亜戦の姿。こんな緊急事態のさなかに、わざわざこれを見るよう強要してくる金田日に、エドは腹が立った。

 が、その映像が動き始めると、エドはそれに思わず見入った。

 それは表示されている二体の亜戦を、ひとつの亜獣として認識した場合の合理的かつ、集計されたデータから想定される『姿』であった。
 二体の亜獣の上方にあらたなる部位が、レンダリングされていくと、この二体が実は巨大なからだの一部であることがわかりはじめる。画面が遠隔ズーム・アウトされていき、さきほぼまでアップで映っていた二体の亜獣は、みるみる小さく表示されていく。

 ユウキのセラ・マーズのからだを貫いた針を持つ生体は、この亜獣の右腕であると導き出されていた。その腕は下にだらりと伸びていて、ユウキたちを襲ってきたのは手首から先の部分に相当する箇所だった。
 そこだけで20メートル——。
 そこから導きだされる亜獣の全体の姿は、200メートルを超えると想定されていた。おそらくその体重を支えるためなのか、脚部は脚と明確にわかる部位はなく、まるでスカートのようにお椀状に膨らんだ形になっていた。
「こ、こんなに巨大……なのか……」
「あぁ、今までこんな巨大な亜獣はいなかった。わたしも信じられない……」
 
 続いて左腕の映像が映しだされていった。
 左腕は右腕同様、下にだらりと垂れさがっていて、その一番下の手首にあたる部位から、あの軟体生物がつながっていた。
「数百台のAIにパラメーターを変えたデータを突っ込んで計算させて、導きだされた亜獣の全体像がこれだ。突貫でやったから細部はちがっているかもしれん……」
 エドはここまでみせておいて、いまさらながら言い訳めいたことを口にする、金田日の態度が解せなかった。
「だが、ほとんどあっていると、わたしは信じている。だから……」
 そう言いながら、指先で3D映像を動かして、正面図の亜獣を横側を見せてきた。

 その瞬間、エドの顔から血の気がひいた。
 自分で意識できるほどの衝撃だった。

 あの兵士を喰った軟体動物の亜獣は、手先部分ではなかった。
 指先だった。
 そして、その指は……、三本あった。

 その瞬間、エドはマイクをひきちぎるように掴んで、悲鳴のように叫んでいた。


「イシカワ少佐ぁぁぁ。そいつは三体いるっっっ!!」
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