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第三章 第五節 エンマアイの記憶

第636話 メイ!。なにがあったの?

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「ちょ、ちょっとぉ!!、どういうことよ。ミサト。あちら側に亜獣が現れたわ」

 アスカは画面にうつるカツライ司令官に怒りをぶつけた。
「そのようね」
「なに、そのいい草。こっちに出てくるンじゃなかったの?」
「なに言ってンの、アスカ、あんたが勝手にそう思っただけでしょうがぁ。それに今はそっちに構ってられないの。通信切るわよ!」
 そう言うなり司令部からの通信が切れ、目の前に浮かんでいたミサトの映像が霧消した。
「ど、どういうこと?。亜獣がでたほうが優先だからって……」
「たしかに……」
 モニタのむこうからユウキがアスカの怒りととまどいに同意してきた。
「ずいぶん、ぞんざいな扱いですね」
「ぞんざいな扱いで済ませるわけいかないでしょう。こっちは魔法少女と戦ってるのよ」
 すぐに春日リンの映像をメインモニタのほうへつなぎ直した。
「メイっっっ!。本部どうなってンのぉぉぉぉ」
 画面に映ったリンは忙しそうに、どこかに連絡をとっている様子で、アスカの怒気にまったく反応をしめそうとしなかった。背後で数人のクルーたちが走り回っており、モニタ越しにもかかわらず、現場の緊張感が一瞬にして伝わってくる。
「メイ!。なにがあったの?」
 画面のむこうのリンが顔をあげてカメラのほうをみた。ちょうど用事が終わったようだった。
「アスカ……」
 そう言ってリンは口ごもった。そして、画面のフレームの右側に視線をむけた。ほんの数秒の間をおいて、リンが口をひらいた。
「アスカ、ユウキ。本部内に魔法少女が出現したの。今のところ追尾できているのは3体——」
「出現した?。どこから侵入したのよ」
「いいえ。内部から出現したの。侵入したんじゃなくて。これがどういう意味かわかるわね」
「本部内に、すでに契約者がいた、ということなのですか?」
 ユウキが動揺を隠せない表情で、リンに尋ねた。
「えぇ。すくなくとも三人が魔法少女にされた、というのが、エドの見解」
 いろいろな可能性がアスカの頭のなかに渦巻きはじめた。が、すぐに一番重要なことに思い当たって、声を荒げた。
「タケルは!。タケルはどうしてるの?!」
「それを今、ヤシナ・ミライ副司令が指揮しているとこ。そのあいだ、ミサトが両方を見なくちゃならない。だから余裕がないの」
「ミライはなにするつもり?」
「魔法少女の狙いはタケルくん。だから避難させる。マンゲツのなかにね」
「護衛は大丈夫なの?」
「心配ないわ。草薙大佐がその任にあたる。さすが草薙大佐ね。あからじめ万が一の事態を想定して、シミュレーションをしていたそうなの」
「でもバットーやトグロがいないんでしょう、大丈夫なの?」
「運を祈るしかないわね。今、アルが対魔法少女用のマジカル・ソードとマジカル・スピアを用意しているところ。今、緊急事態宣言が館内に発令された。あと数分後に基地内の隔壁は閉ざされて、各部屋はロックされる。通路内にいるものは容赦なく射殺されるの」
「生ぬるい……。そんなので魔法少女からタケルを守れやしないでしょ」
 アスカは足先から這いのぼってくる、えも言われぬ不安感をふり払うように叫んだ。

「カオリ!、勝手をいわないで!!」
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