617 / 1,035
第三章 第四節 エンマ・アイ
第616話 セラ・ヴィーナスが背中を下にして落ちて行く
しおりを挟む
「わかってるわよ。そのための『万布』でしょ。あたしがあいつらを叩き落とすだけで、とどめを刺せないのがどれだけストレスかわかってるぅ?」
文句を言いながらも、アスカは上へ上へとのぼっていく。あっという間にセラ・ヴィーナスは天井近くに達しようとしていた。
ふと手をとめてあたりを見回す。
自分がさきほどとは比べ物にならないほど高い位置にいることがわかった。おそらくこの地下都市でもっとも高いビルによじ登ったらしかった。高度480メートルという数字がモニタに映し出されている。
「注意して!、アスカ。魔法少女たちが気づいたわ」
「そりゃ、気づいてもらわなきゃ、困るってモン……」
そう言い放ったところで、魔法少女たちが一斉にステッキをふったのが見えた。距離はかなりある。『分解光線』なら届きっこない!。
が、そこから飛び出した攻撃は、またもや物理攻撃だった。
なにかの飛礫がセラ・ヴィーナスのからだを打ちのめした。今度は『万布』を盾にする間もなかった。なにかが体表付近で破裂したなにかに、からだを横殴りにされた。からだがうしろにはじき飛ばされる。ビルのでっぱりにひっかけていた指がはなれて、セラ・ヴィーナスのからだがビルから引きはがされた。
アスカは空中で手をかいて、どこかのでっぱりに指をひっかけようともがいたが、指がかからない。セラ・ヴィーナスは背中を下にして落ちて行く。
「アスカ、ビルを蹴飛ばして!。うしろのビルに飛び移るの!!」
リンの叫び声が聞こえた。アスカはなにも考えず、脊髄反射的にその指示にしたがった。背後のカメラで後方をチラリと確認しただけで、膝をぐっと折り曲げてビルの側面を蹴飛ばした。その勢いでからだがうしろむきのまま、後方に飛ばされると、セラ・ヴィーナスのからだがそびえ立っていたビルにぶつかった。
セラ・ヴィーナスはビルにぶつかると同時に、手をのばして背後のビルにつかまろうとした。
「この体勢じゃあ無理じゃないのぉぉぉ」
が、うしろむきのままぐっと腕を伸ばしたとたん、右腕がぐるんと肩からはずれて反対にまわった。まるで背中が正面であるように、右腕がうしろに突き出すと、その指がビルのでっぱりにガチッとひっかかった。
そこでセラ・ヴィーナスの落下はとまった。
セラ・ヴィーナスはビルの中腹あたりで右腕いっぽんでぶらさがっていた。
アスカはほっとしたため息をつくと、自分に攻撃をしかけてきた魔法少女を睨みつける思いでみあげた。いたるところでなにかが崩れている音がしている。
そのとき、春日リンが屈託もない様子で、声をはずませて言ってきた。
「アスカ、よかったわね。ずいぶん便利な腕になったじゃないの!」
文句を言いながらも、アスカは上へ上へとのぼっていく。あっという間にセラ・ヴィーナスは天井近くに達しようとしていた。
ふと手をとめてあたりを見回す。
自分がさきほどとは比べ物にならないほど高い位置にいることがわかった。おそらくこの地下都市でもっとも高いビルによじ登ったらしかった。高度480メートルという数字がモニタに映し出されている。
「注意して!、アスカ。魔法少女たちが気づいたわ」
「そりゃ、気づいてもらわなきゃ、困るってモン……」
そう言い放ったところで、魔法少女たちが一斉にステッキをふったのが見えた。距離はかなりある。『分解光線』なら届きっこない!。
が、そこから飛び出した攻撃は、またもや物理攻撃だった。
なにかの飛礫がセラ・ヴィーナスのからだを打ちのめした。今度は『万布』を盾にする間もなかった。なにかが体表付近で破裂したなにかに、からだを横殴りにされた。からだがうしろにはじき飛ばされる。ビルのでっぱりにひっかけていた指がはなれて、セラ・ヴィーナスのからだがビルから引きはがされた。
アスカは空中で手をかいて、どこかのでっぱりに指をひっかけようともがいたが、指がかからない。セラ・ヴィーナスは背中を下にして落ちて行く。
「アスカ、ビルを蹴飛ばして!。うしろのビルに飛び移るの!!」
リンの叫び声が聞こえた。アスカはなにも考えず、脊髄反射的にその指示にしたがった。背後のカメラで後方をチラリと確認しただけで、膝をぐっと折り曲げてビルの側面を蹴飛ばした。その勢いでからだがうしろむきのまま、後方に飛ばされると、セラ・ヴィーナスのからだがそびえ立っていたビルにぶつかった。
セラ・ヴィーナスはビルにぶつかると同時に、手をのばして背後のビルにつかまろうとした。
「この体勢じゃあ無理じゃないのぉぉぉ」
が、うしろむきのままぐっと腕を伸ばしたとたん、右腕がぐるんと肩からはずれて反対にまわった。まるで背中が正面であるように、右腕がうしろに突き出すと、その指がビルのでっぱりにガチッとひっかかった。
そこでセラ・ヴィーナスの落下はとまった。
セラ・ヴィーナスはビルの中腹あたりで右腕いっぽんでぶらさがっていた。
アスカはほっとしたため息をつくと、自分に攻撃をしかけてきた魔法少女を睨みつける思いでみあげた。いたるところでなにかが崩れている音がしている。
そのとき、春日リンが屈託もない様子で、声をはずませて言ってきた。
「アスカ、よかったわね。ずいぶん便利な腕になったじゃないの!」
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
全ての悩みを解決した先に
夢破れる
SF
「もし59歳の自分が、30年前の自分に人生の答えを教えられるとしたら――」
成功者となった未来の自分が、悩める過去の自分を救うために時を超えて出会う、
新しい形の自分探しストーリー。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる