上 下
607 / 1,035
第三章 第四節 エンマ・アイ

第606話 通路を完全に塞がれています

しおりを挟む
「天井と壁が壊れて、通路を完全に塞がれていますわ」
 クララが第8隔壁が崩落した土砂で埋まっているのをみて思わず叫んだ。

 数十キロにもおよぶ長い通路は、その当時、放射能の嵐の侵入をふせぐため、10のブロックに仕切られていて、そのブロックごとに放射能防御用のものものしい隔壁が設けられていた。その隔壁は開かれたままになっていたが、あと2ブロックの位置まできたところで問題が生じた。
 隔壁まわりの天井や壁の崩落——。
 あと2枚の隔壁を通り抜ければよいところで、閉鎖された隔壁が出現した。だが、その隔壁は土砂にうまっており、進路が完全に塞がれてしまっていた。
 屋根部分にあいたおおきな穴から落ちた土砂が、隔壁の前の地面に堆積して通路いっぱいに広がっている。さらに横っ腹にはあきらかに外側から内側にむけて爆発があったような痕もあった。横壁のパネルの何枚かは吹き飛び、爆発に耐えたパネルはベッコリと内側にへこんでいる。上と横からなだれ込んだ土塊や土石が通路の大半をふさいでおり、わずかに上のほうの隙間から人間ひとりが通れるかどうかの隙間があるだけだった。7~80メートルもある天井までギリギリまで埋め尽くしているのでは、さすがのデミリアンでもいかんともしがたい状況だった。
「これだけ壊れているのでは、これ以上進めないじゃないですか」
 クララは繰り言を口にしたが、レイがすぐに訂正した。
「ちがう。壊れているんじゃなく、壊されている」
「壊されている……ですって?」

「レイ、あなたはなぜ壊されていると?。壊れている、ではなく……」
 レイの見解にモニタのむこうの草薙が、興味深そうに尋ねてきた。
「もし老朽化で壊れているのなら、ここまでの隔壁にもなにか異常があったはず。でもどの隔壁にもひびひとつ入っていなかった。ここだけ天井も横壁も壊れるなんて不自然すぎる。それに壊れているところ見て。あきらかに爆発のような強力なパワーが働いている」
「ちょ、ちょっと……。だれかが壊したっていう意味がわかりません。だいたい誰が壊したっていうんですの?」
 クララはレイの解答がになってきたので、うんざりする気分でレイを問いただした。が、レイはあっさりと自分の意見を口にした。

「亜獣。たぶん亜獣が壊した」

「ちょっとぉ、それ、どういうことっ?、レイ!」
 その回答にまっさきに食いついてきたのは、司令部のカツライ・ミサト司令官だった。モニタのむこうからヒステリックに声を荒げた。
「ミサト、ことばのまま。これは亜獣が壊した」
「なぜ、そんなことが言えるの?」


「たぶんこの一枚の隔壁だけ閉まっているのでは不安だったんだと思う……」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

狭間の世界

aoo
SF
平凡な日々を送る主人公が「狭間の世界」の「鍵」を持つ救世主だと知る。 記憶をなくした主人公に迫り来る組織、、、 過去の彼を知る仲間たち、、、 そして謎の少女、、、 「狭間」を巡る戦いが始まる。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

謎の隕石

廣瀬純一
SF
隕石が発した光で男女の体が入れ替わる話

イヤホン型意識転送装置

廣瀬純一
SF
自分の意識を他人に転送できる世界の話

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

MMS ~メタル・モンキー・サーガ~

千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』 洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。 その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。 突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。 その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!! 機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!

処理中です...