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第三章 第四節 エンマ・アイ
第593話 金田日、危険だ。近づくな
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「うわははは……。バットー、やっぱ、あんたの面じゃあ、サムライに見えねぇんだよ」
アルがあまりに大笑いしているのを、バットーが苦笑いしながら言った。
「言ってくれるな、アル。これでも日本人のサムライの血が流れてることにゃあ、誇りをもってるんだからよぉ。この面でもサ。まぁ、今じゃあ銃しか使う機会もねぇが」
「不謹慎だが、ある意味ラッキーだったんじゃねぇか。今回の魔法少女戦、あんたの剣術の腕を存分にふるえる機会なんだからさ。すでにブライトさん救出ンときに、一体、真っ二つに叩き切ってんだろ」
「あぁ。自分で言うのもなんだが、見事に真っ二つさ。日頃の鍛練の成果だろうな」
「だったら、この戦いでもその腕存分に振るってくれや」
アルはそう激励しながら、片目でウインクした。
「そうしてくれると、こちとらも貴重なデータがたっぷりとれるしな」
その場に笑いがはじけた。
金田日もつられるように笑った。命懸けの戦いを前にした、一種の異様な高揚感がそうさせているような気もしたが、こんな頼もしい連中と一緒に戦えることを誇らしく感じた。
怖いという気持ちと同時に、なにかこころ踊るような多幸感——。
脳内でいくつものホルモン物質が一斉に吹きだしているに違いない。
あまり変化が多いと、生体管理局のAI管理官からアラートが送られそうだ。
が、そのとき、頭のなかで声が響いた。
『金田日、危険だ。近づくな』
エドの声——。
冷や水をぶっかけられたように、一瞬にしてスーッと血の気がひいていく。
いつの間にか脳内通信システム『テレパス・ライン』が起動して、エドとつながっていることに気づいた。
あわててエドの姿を探す。
エドはこちらを見ていなかった。こちらに目をくれることもなく、警告を発してきていたのだ。
『エド、なにが危険なのか……』
全部を訊きだす必要はなかった。
エドはアルをじっと見つめていた。その顔には憎悪とも怒りともとれる、ゾッとするような歪みが浮かんでいた。
エドとアルのあいだに、なにがあったのか……?。
問いただしたい、という気持ちが咳き上げてきたが、金田日はそうしなかった。彼はエドとの『テレパス・ライン』の回線を、いきなり断ち切った。
聞きたくなかったからではない。
訊いてしまっては、あとに引き戻れなくなるかもしれない——。
そんな原理的な恐怖からだったからにほかならない。
アルがあまりに大笑いしているのを、バットーが苦笑いしながら言った。
「言ってくれるな、アル。これでも日本人のサムライの血が流れてることにゃあ、誇りをもってるんだからよぉ。この面でもサ。まぁ、今じゃあ銃しか使う機会もねぇが」
「不謹慎だが、ある意味ラッキーだったんじゃねぇか。今回の魔法少女戦、あんたの剣術の腕を存分にふるえる機会なんだからさ。すでにブライトさん救出ンときに、一体、真っ二つに叩き切ってんだろ」
「あぁ。自分で言うのもなんだが、見事に真っ二つさ。日頃の鍛練の成果だろうな」
「だったら、この戦いでもその腕存分に振るってくれや」
アルはそう激励しながら、片目でウインクした。
「そうしてくれると、こちとらも貴重なデータがたっぷりとれるしな」
その場に笑いがはじけた。
金田日もつられるように笑った。命懸けの戦いを前にした、一種の異様な高揚感がそうさせているような気もしたが、こんな頼もしい連中と一緒に戦えることを誇らしく感じた。
怖いという気持ちと同時に、なにかこころ踊るような多幸感——。
脳内でいくつものホルモン物質が一斉に吹きだしているに違いない。
あまり変化が多いと、生体管理局のAI管理官からアラートが送られそうだ。
が、そのとき、頭のなかで声が響いた。
『金田日、危険だ。近づくな』
エドの声——。
冷や水をぶっかけられたように、一瞬にしてスーッと血の気がひいていく。
いつの間にか脳内通信システム『テレパス・ライン』が起動して、エドとつながっていることに気づいた。
あわててエドの姿を探す。
エドはこちらを見ていなかった。こちらに目をくれることもなく、警告を発してきていたのだ。
『エド、なにが危険なのか……』
全部を訊きだす必要はなかった。
エドはアルをじっと見つめていた。その顔には憎悪とも怒りともとれる、ゾッとするような歪みが浮かんでいた。
エドとアルのあいだに、なにがあったのか……?。
問いただしたい、という気持ちが咳き上げてきたが、金田日はそうしなかった。彼はエドとの『テレパス・ライン』の回線を、いきなり断ち切った。
聞きたくなかったからではない。
訊いてしまっては、あとに引き戻れなくなるかもしれない——。
そんな原理的な恐怖からだったからにほかならない。
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