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第三章 第四節 エンマ・アイ

第589話 二ヶ所の第三東京区地下都市

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「みんな知っていると思うけど、この地下都市は150年ほど前の第三次世界大戦時に、東京都民の疎開先として建設され、今は封鎖されている場所。熱海の地下の第二東京区、箱根の地下の第三東京区の二箇所がつくられたわ」
 ミサトはさきほどのリストを画面から引っ込め、かわりに箱根付近の地図を呼びだして表示した。
「都心から近いということ、マグマの熱エネルギーを利用する地熱発電が可能ということ、地上に芦ノ湖があることで豊富な水源を利用できる上、相模湾に排水を流せるという地の利があったからね」
 レイが声もなく手を挙げたかと思うと、指名される前に質問を口にした。

「なぜ、ここに魔法少女の巣窟があるって、すぐにわからなかったの?」

 ミサトは自分のプレゼンを邪魔されて忌々しく思ったが、すぐにエドのほうに目をむけた。が、エドはなぜかぼうっとしてあらぬ方向を見ていた。ミサトは役にたちそうもないと判断して、すぐに金田日のほうへ話をふった。
「博士、なぜ発見できなかったか、説明願えますか?」
 金田日はすぐに立ちあがった。うろたえた様子もないということは、あらかじめこのような質問がくることは想定していたのだろう。
「それを阻んだふたつの要因がある。ひとつめの要因は、恥ずかしい話だが、われわれ専門家が亜獣に騙されたっていうことだ。あの世界中の電源を一瞬切断した『フリートウッド作戦』のあと、あっという間に世界中の主要都市に赤い点が灯った時、ほんの一時だけだったが、この日本にはその赤い点が灯らなかった。それで日本には魔法少女の重要な隠れ家はないと……」
 金田日はわざと咳払いをして、間をおいた。
「わざとらしい刷り込みだったが、そのせいでほかの主要都市に注意をむけさせられた。まんまとね。もうひとつの要因は、この地下都市にはあらゆる電波が届かない構造になっていたということだ」
「電波が届かないってどういうこと?」
 レイが金田日に言ったが、ミサトがなかに割って入る形で説明を引き継いだ。
「それはね、レイ……」
 本人からすれば、ただ疑問を口にしただけだったろうが、もろもろの責任を金田日へ追求しているようにしか聞こえない。これ以上とがめを受けさせられないという判断だ。
「第三次世界大戦の時に、放射能の爆風が地下都市まで届かないよう、地下深くつくられたうえ、通路を何重もの隔壁で遮断されていたからなの」

 金田日が目で謝意を伝えてくるのが、ミサトの目の端にはいった。
 レイの前では専門家も形なしなのがすこし気の毒だった。
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