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第三章 第四節 エンマ・アイ
第581話 これも魔法少女の力なのかい?
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「ああ、そうさ。正直なところ、最近のぼくの評判は芳しくない。なんとか挽回したいと恥を忍んできみを紹介してもらった」
「だったら、早く『監視映像』を確認したらどうだい?。キミの未来がかかってるんだろ?」
もったいぶった言い方がが鼻に付いたが、エドは促されるまま『監視データ』を脳内で検索した。データはすぐに『パーソナル・ウエアハウス』内でヒットした。自分の脳内だけで再現可能な『想起領域』内に新着データとしてそれは存在した。
「かなりの深層記憶に送り込んだものだね」
「うかつに他人にかいま見られるわけにはいかないだろ」
「だからと言って、この場所は……」
「自分の本物の記憶と混同して思いだしてしまうかもしれない……とでも?。もし気になるようだったら、あとで『忘却領域』に移動しておきますよ」
無責任とも思える言い草に腹をたてかけたが、エドはかるく鼻をならしただけで、『網膜スクリーン』にその映像を投影しはじめた。
映像面は四分割された形で表示された。
人工林が大量に植えられている、かなり鬱蒼とした場所を四台のカメラが監視していた。真夜中頃なのだろうか、どの映像も暗くてほとんどなにも見えない。
「暗いな」
ついそう呟いてしまうと、セイントが呆れたように指摘してきた。
「きみの網膜側を暗示モードにすりゃいいだろ」
エドは一度深呼吸をすると、念を送って眼球内のモードを切り替えた。映像が真昼のように明るくなる。ほんのすこし画素が粗かったり、ハレーションをおこして『白トビ』をおこしている箇所もあったが、見やすさは段ちがいだ。
画面は基地の辺境にある、人工林を映していたことがわかった。一台のカメラがすこし離れた場所にあるローディングエプロン(乗降のための駐機場)を映していた。到着した物資をロボット作業員たちが仕分けしている様子が見切れている。
どのモニタにも特段変わった様子や変化は見られなかった。が、再生をはじめて一分ほどすると、誰かがカメラのちかくにやってきた気配が感じられた。動体を検知した一台の監視カメラが動いて、やってきた人物を捉える。
が、そこに映っていた人物は、あの魔法少女がつけていたチープな少女のお面で、顔を隠されていた。実際にかぶっているのではなく、疑似的なデータで処理されている。
だがそれだけではない。
首から下はなぜか、カリカチュアライズされた3Dイラストになっていた。魔法少女が着ていたひらひらとした衣装が、そこにあてがわれている。
「ど、どういうことだ。これじゃあ誰だかわからない」
「そうなんだよね。ローデータ(未加工のデータ)でこれなんだ。おそらくリアル・タイムで加工されてる。これも魔法少女の力なのかい?」
「あぁ……、いや……」
エドは一瞬、ことばを濁しかけたが、思い直して素直に感想を述べた。
「あぁ、たぶんそうだろうね。ただこれは初めて見たよ。とても希少なデータだ」
そのとき、映像のなかの人物が声を発した。
「だったら、早く『監視映像』を確認したらどうだい?。キミの未来がかかってるんだろ?」
もったいぶった言い方がが鼻に付いたが、エドは促されるまま『監視データ』を脳内で検索した。データはすぐに『パーソナル・ウエアハウス』内でヒットした。自分の脳内だけで再現可能な『想起領域』内に新着データとしてそれは存在した。
「かなりの深層記憶に送り込んだものだね」
「うかつに他人にかいま見られるわけにはいかないだろ」
「だからと言って、この場所は……」
「自分の本物の記憶と混同して思いだしてしまうかもしれない……とでも?。もし気になるようだったら、あとで『忘却領域』に移動しておきますよ」
無責任とも思える言い草に腹をたてかけたが、エドはかるく鼻をならしただけで、『網膜スクリーン』にその映像を投影しはじめた。
映像面は四分割された形で表示された。
人工林が大量に植えられている、かなり鬱蒼とした場所を四台のカメラが監視していた。真夜中頃なのだろうか、どの映像も暗くてほとんどなにも見えない。
「暗いな」
ついそう呟いてしまうと、セイントが呆れたように指摘してきた。
「きみの網膜側を暗示モードにすりゃいいだろ」
エドは一度深呼吸をすると、念を送って眼球内のモードを切り替えた。映像が真昼のように明るくなる。ほんのすこし画素が粗かったり、ハレーションをおこして『白トビ』をおこしている箇所もあったが、見やすさは段ちがいだ。
画面は基地の辺境にある、人工林を映していたことがわかった。一台のカメラがすこし離れた場所にあるローディングエプロン(乗降のための駐機場)を映していた。到着した物資をロボット作業員たちが仕分けしている様子が見切れている。
どのモニタにも特段変わった様子や変化は見られなかった。が、再生をはじめて一分ほどすると、誰かがカメラのちかくにやってきた気配が感じられた。動体を検知した一台の監視カメラが動いて、やってきた人物を捉える。
が、そこに映っていた人物は、あの魔法少女がつけていたチープな少女のお面で、顔を隠されていた。実際にかぶっているのではなく、疑似的なデータで処理されている。
だがそれだけではない。
首から下はなぜか、カリカチュアライズされた3Dイラストになっていた。魔法少女が着ていたひらひらとした衣装が、そこにあてがわれている。
「ど、どういうことだ。これじゃあ誰だかわからない」
「そうなんだよね。ローデータ(未加工のデータ)でこれなんだ。おそらくリアル・タイムで加工されてる。これも魔法少女の力なのかい?」
「あぁ……、いや……」
エドは一瞬、ことばを濁しかけたが、思い直して素直に感想を述べた。
「あぁ、たぶんそうだろうね。ただこれは初めて見たよ。とても希少なデータだ」
そのとき、映像のなかの人物が声を発した。
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