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第三章 第四節 エンマ・アイ
第574話 スージー・クワトロ中佐 拝命
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あざとい……
国連軍の司令官力ツライ中将から、面とむかってね
ぎらいのことばをかけられてスージー・クワトロ中佐はそう思った。
「無理を言ったんじゃなければいいんだけどぉ」
「いえ、そんなことはありません。わたくしはよろこんで、招聘に応じております。国連軍の最前線で戦え、しかも一階級昇格という条件では、お断りすることなど……」
「ほんとうに?。無理じいしてないのだったらいいのだけど……」
まただ——。
結局のところ、この司令官は自分でひとを呼びつけておきながら、なにかあっても自分の責任を回避するための予防線を張ることに躍起になっているのだ。
スージーはさすがにこのやりとりに嫌気がさしてきて、ほんとうにこの話に乗ってよかったのかと、迷いが生じはじめた。
「わたしは先の対魔法少女戦でおおくの部下を死なせてしまい、このままアメリカ軍に残り続けることはできないと思っていました。部下の無念を晴らす機会をうしなってしまう、ことだけが、心残りでしたが、カツライ中将からお声掛けをいただき決断した次第です」
「こころよい返事をくれたこと感謝します」
スージーのことばに答えたのは案内係をかってでてくれていたヤシナ・ミライ少将だった。
「わたしたち日本支部はあなたのような優秀な兵士を歓迎します。あの戦いでの犠牲は残念でしたけど、あの時の作戦で魔法少女を殲滅できたのは、あなたの隊とロシア軍の隊だけでした。ロシア軍はあなたの隊の5倍ほどの兵力の『連隊』でしたから、あなたは実に立派な戦いをしたのはまちがいありません」
「ありがとうございます」
スージーはかしこまって謝意を述べた。
「クワトロ中佐、到着早々、申し訳ありませんが、数日後に決行される作戦のサポートをしていただきたいの」
「了解いたしました」
「これは亜獣の巣窟と目される場所に、こちら側から先制攻撃を加える作戦です。デミリアンと一緒に出動して、行く手を阻んでくる魔法少女を駆除しにいきます」
ミライ副司令は要件を伝えるなり、「草薙隊長」と奥の方に声をかけた。声をかけたほうから、隙のない身なりと身のこなしで、ひとりの女性が近づいてきた。
「こちらはあなたの直属の上司になる警備隊の草薙素子大佐」
スージーはひと目みるなり、この女性隊長が相当に切れ者だと確信した。
「警備隊長の草薙です」
草薙はそう言って握手をかわすなり、すぐに質問してきた。
「クワトロ……。スージーQ……、どう呼べばいい?」
「呼び方はなんでもかまいません。ですが、以前はスージーと呼ばれていました」
「ではスージー。あなたのあの時の戦い、映像で見させてもらった。あざやかなお手並みだった……」
草薙はそこで声のトーンを落とした。褒めようとしているわけではない、とスージーは直感的にわかった。
「だが……。もしあの大水槽の爆破がうまくいかなかったら、どうするつもりだった?」
国連軍の司令官力ツライ中将から、面とむかってね
ぎらいのことばをかけられてスージー・クワトロ中佐はそう思った。
「無理を言ったんじゃなければいいんだけどぉ」
「いえ、そんなことはありません。わたくしはよろこんで、招聘に応じております。国連軍の最前線で戦え、しかも一階級昇格という条件では、お断りすることなど……」
「ほんとうに?。無理じいしてないのだったらいいのだけど……」
まただ——。
結局のところ、この司令官は自分でひとを呼びつけておきながら、なにかあっても自分の責任を回避するための予防線を張ることに躍起になっているのだ。
スージーはさすがにこのやりとりに嫌気がさしてきて、ほんとうにこの話に乗ってよかったのかと、迷いが生じはじめた。
「わたしは先の対魔法少女戦でおおくの部下を死なせてしまい、このままアメリカ軍に残り続けることはできないと思っていました。部下の無念を晴らす機会をうしなってしまう、ことだけが、心残りでしたが、カツライ中将からお声掛けをいただき決断した次第です」
「こころよい返事をくれたこと感謝します」
スージーのことばに答えたのは案内係をかってでてくれていたヤシナ・ミライ少将だった。
「わたしたち日本支部はあなたのような優秀な兵士を歓迎します。あの戦いでの犠牲は残念でしたけど、あの時の作戦で魔法少女を殲滅できたのは、あなたの隊とロシア軍の隊だけでした。ロシア軍はあなたの隊の5倍ほどの兵力の『連隊』でしたから、あなたは実に立派な戦いをしたのはまちがいありません」
「ありがとうございます」
スージーはかしこまって謝意を述べた。
「クワトロ中佐、到着早々、申し訳ありませんが、数日後に決行される作戦のサポートをしていただきたいの」
「了解いたしました」
「これは亜獣の巣窟と目される場所に、こちら側から先制攻撃を加える作戦です。デミリアンと一緒に出動して、行く手を阻んでくる魔法少女を駆除しにいきます」
ミライ副司令は要件を伝えるなり、「草薙隊長」と奥の方に声をかけた。声をかけたほうから、隙のない身なりと身のこなしで、ひとりの女性が近づいてきた。
「こちらはあなたの直属の上司になる警備隊の草薙素子大佐」
スージーはひと目みるなり、この女性隊長が相当に切れ者だと確信した。
「警備隊長の草薙です」
草薙はそう言って握手をかわすなり、すぐに質問してきた。
「クワトロ……。スージーQ……、どう呼べばいい?」
「呼び方はなんでもかまいません。ですが、以前はスージーと呼ばれていました」
「ではスージー。あなたのあの時の戦い、映像で見させてもらった。あざやかなお手並みだった……」
草薙はそこで声のトーンを落とした。褒めようとしているわけではない、とスージーは直感的にわかった。
「だが……。もしあの大水槽の爆破がうまくいかなかったら、どうするつもりだった?」
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