541 / 1,035
第三章 第三節 進撃の魔法少女
第540話 掴みます!
しおりを挟む
『掴みます!』
そう聞こえた瞬間、驚くほど強い力で上腕をつかまれた。だが勢いのあまり腕をつかむ手が滑っていく。が、からだがおおきく振られて、ふわりと浮いた。あっと思ったときには李子は、バイクの後部シートに座らされていた。たぶんに荒っぽい着座だったが、一瞬の浮力を利用してたぐり寄せたのだ。
李子がシートに座ったとみるや、トグロはすぐさまブレーキをかけて、バイクを水平に戻した。
「アイダ先生。大丈夫ですか?」
うしろ手に腕を伸ばしたトグロに、腕をつかまれたまま答えた。
「あ、ええ……」
声がうまくでてこなかった。トグロは上半身をひねると、自分のかぶっていたヘルメットを脱いで、有無を言わさず李子の頭の上からかぶせた。
『アイダ先生、深呼吸をしてください』
意味がわからなかったが、言われるがまま大きく息を吸い込んだ。なんともいえず甘い匂いが鼻腔をくすぐった。たぶんトグロの体臭と香水がまじった匂いなのだろう。甘さのなかにわずかにスパイシーさが混じる。
ちっとも嫌な匂いではなかった。
『すみません。一個しかないので、わたしので我慢してください。酸素が足りてないので、それでゆっくりと補給を……』
なんとも申し訳なさげな表情に、おもわず口元がほころんだ。命の恩人なのに、謝ってくるなんて、なんて謙虚なひとなのだろう……。
『まだ上空1000メートルはありますので、まずは地上に降りることにします。わたしの腰をしっかりと掴んでもらえますか?』
李子はおずおずとトグロの腰に手を回した。マッチョな体躯のせいで李子には手をまわしきれなかった。鍛えこんだ腹横筋がまわした腕の下に感じられる。
たちまち、李子は安堵感につつまれた。安心しすぎて腰から下が脱力するような感覚にさえ感じられた。
その時、自分の左足に何とも言えない違和感を感じた。
李子はなにげなく自分の足首に目をやった。
誰かの手が自分の足首をつかんでいた——。
そう聞こえた瞬間、驚くほど強い力で上腕をつかまれた。だが勢いのあまり腕をつかむ手が滑っていく。が、からだがおおきく振られて、ふわりと浮いた。あっと思ったときには李子は、バイクの後部シートに座らされていた。たぶんに荒っぽい着座だったが、一瞬の浮力を利用してたぐり寄せたのだ。
李子がシートに座ったとみるや、トグロはすぐさまブレーキをかけて、バイクを水平に戻した。
「アイダ先生。大丈夫ですか?」
うしろ手に腕を伸ばしたトグロに、腕をつかまれたまま答えた。
「あ、ええ……」
声がうまくでてこなかった。トグロは上半身をひねると、自分のかぶっていたヘルメットを脱いで、有無を言わさず李子の頭の上からかぶせた。
『アイダ先生、深呼吸をしてください』
意味がわからなかったが、言われるがまま大きく息を吸い込んだ。なんともいえず甘い匂いが鼻腔をくすぐった。たぶんトグロの体臭と香水がまじった匂いなのだろう。甘さのなかにわずかにスパイシーさが混じる。
ちっとも嫌な匂いではなかった。
『すみません。一個しかないので、わたしので我慢してください。酸素が足りてないので、それでゆっくりと補給を……』
なんとも申し訳なさげな表情に、おもわず口元がほころんだ。命の恩人なのに、謝ってくるなんて、なんて謙虚なひとなのだろう……。
『まだ上空1000メートルはありますので、まずは地上に降りることにします。わたしの腰をしっかりと掴んでもらえますか?』
李子はおずおずとトグロの腰に手を回した。マッチョな体躯のせいで李子には手をまわしきれなかった。鍛えこんだ腹横筋がまわした腕の下に感じられる。
たちまち、李子は安堵感につつまれた。安心しすぎて腰から下が脱力するような感覚にさえ感じられた。
その時、自分の左足に何とも言えない違和感を感じた。
李子はなにげなく自分の足首に目をやった。
誰かの手が自分の足首をつかんでいた——。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
全ての悩みを解決した先に
夢破れる
SF
「もし59歳の自分が、30年前の自分に人生の答えを教えられるとしたら――」
成功者となった未来の自分が、悩める過去の自分を救うために時を超えて出会う、
新しい形の自分探しストーリー。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる