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第三章 第三節 進撃の魔法少女
第487話 あたしは動揺なんかしてやらなかった
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ヤマトの衝撃的な告白を聞いてもアスカは動揺しなかった。
あたりまえだ。
女の子だったら誰だって気づく。そしてすぐに覚悟する。
だから動揺しなかった。
いや、あたしは動揺なんかしてやらなかった——。
だからといって腹を括れているわけではない。不安が毛穴という毛穴から、ひたひたと浸潤してきて、こころを蝕もうとしているのがわかる。
ちらりとクララを見る。
彼女は画面のなかのヤマトから目を反らそうともせず、険しい視線をむけたままでいる。
さすがよ、クララ。
アスカはヤマトの次のことばを待った。訊きたいことも、言いたいこともごまんとあった。だけど意地でも自分の方から口を開いて、問いただすような真似はしたくなかった。
女としての矜持だ。
「たしか、ぼくが三歳の時、アイはこの日本支部に引き取られてきた。地球最後の純血の日本人少女、99・0%として。それから一緒に育って、12歳の時から一緒に亜獣と戦うようになった。でも3年前、アイは逝った。亜獣に勝てなかった……」
アスカはおおきく息を吸って、肺にいっぱい空気を満たした。思いの丈を一気にぶつけてやるつもりだった。だが、先にヤマトを詰問したのは、クララだった。
「今も愛してるってことですか!」
さきほどとおなじ姿勢でヤマトを睨みつけているのが見える。でも目がすこし充血していた。アスカはことばを飲み込んだ。
これはクララの思いの丈だ——、
「愛してる……?」
ヤマトはそう呟くなり、そのことばを舌先で転がしたかと思うと、弱った顔で答えた。
「ごめん、クララ。ぼくにはわからない。そういう感情がもてないように、もたないように育てられた。だから愛という感情があてはまるか判断がつかない」
「でも、タケルさんは、さっき大切な人だとおっしゃいました」
「ああ、大切な人だった。それは父もそうだったし、テツゴおじさんやシモン、いやカミナ・アヤトもそうだ。今は君たちパイロットも大切だし、ここで話をきいているクルーのみんなも……」
「ごまかさないでください!」
その非難めいたクララの叫びにアスカは彼女の本気を感じた。頼もしく思えたが、自分のこころなかの襞をわずかばかりかを抉られたような気がした。
「大切な人と、一番大切な人はちがうでしょう。わたしたちにむけられる通り一遍のものと同等に語らないでください」
クララはそう言ったまま答えを待った。険しい視線でヤマトに答えを促していた。
「クララの言うとおりかもしれない。ぼくは感情を動かされないよう訓練されているから、そこにどれほどの違いがあるかわからない。でも、そう……、うん、彼女は、エンマ・アイは特別なひとだ」
アスカはふいに涙がこみあげそうになった。
ギッと奥歯を噛みしめてこらえる。デミリアンとの接続は解除されているから、どんな感情をもっても問題はない。
だからといって、このパイロット・シートの上に座っている限り、ここで感情を露にしていいはずはない。
これはパイロットとしての矜持だ——。
あたりまえだ。
女の子だったら誰だって気づく。そしてすぐに覚悟する。
だから動揺しなかった。
いや、あたしは動揺なんかしてやらなかった——。
だからといって腹を括れているわけではない。不安が毛穴という毛穴から、ひたひたと浸潤してきて、こころを蝕もうとしているのがわかる。
ちらりとクララを見る。
彼女は画面のなかのヤマトから目を反らそうともせず、険しい視線をむけたままでいる。
さすがよ、クララ。
アスカはヤマトの次のことばを待った。訊きたいことも、言いたいこともごまんとあった。だけど意地でも自分の方から口を開いて、問いただすような真似はしたくなかった。
女としての矜持だ。
「たしか、ぼくが三歳の時、アイはこの日本支部に引き取られてきた。地球最後の純血の日本人少女、99・0%として。それから一緒に育って、12歳の時から一緒に亜獣と戦うようになった。でも3年前、アイは逝った。亜獣に勝てなかった……」
アスカはおおきく息を吸って、肺にいっぱい空気を満たした。思いの丈を一気にぶつけてやるつもりだった。だが、先にヤマトを詰問したのは、クララだった。
「今も愛してるってことですか!」
さきほどとおなじ姿勢でヤマトを睨みつけているのが見える。でも目がすこし充血していた。アスカはことばを飲み込んだ。
これはクララの思いの丈だ——、
「愛してる……?」
ヤマトはそう呟くなり、そのことばを舌先で転がしたかと思うと、弱った顔で答えた。
「ごめん、クララ。ぼくにはわからない。そういう感情がもてないように、もたないように育てられた。だから愛という感情があてはまるか判断がつかない」
「でも、タケルさんは、さっき大切な人だとおっしゃいました」
「ああ、大切な人だった。それは父もそうだったし、テツゴおじさんやシモン、いやカミナ・アヤトもそうだ。今は君たちパイロットも大切だし、ここで話をきいているクルーのみんなも……」
「ごまかさないでください!」
その非難めいたクララの叫びにアスカは彼女の本気を感じた。頼もしく思えたが、自分のこころなかの襞をわずかばかりかを抉られたような気がした。
「大切な人と、一番大切な人はちがうでしょう。わたしたちにむけられる通り一遍のものと同等に語らないでください」
クララはそう言ったまま答えを待った。険しい視線でヤマトに答えを促していた。
「クララの言うとおりかもしれない。ぼくは感情を動かされないよう訓練されているから、そこにどれほどの違いがあるかわからない。でも、そう……、うん、彼女は、エンマ・アイは特別なひとだ」
アスカはふいに涙がこみあげそうになった。
ギッと奥歯を噛みしめてこらえる。デミリアンとの接続は解除されているから、どんな感情をもっても問題はない。
だからといって、このパイロット・シートの上に座っている限り、ここで感情を露にしていいはずはない。
これはパイロットとしての矜持だ——。
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