465 / 1,035
第三章 第二節 魔法少女大戦
第464話 こちらのことばを理解し、受けこたえする亜獣
しおりを挟む
「しゃべったわよ」
司令室からミサトがボソリと呟く声が漏れ聞こえた。
ヤマトはこのイレギュラーが発生した事態で、動揺しているとわかることばを、司令官が迂闊に口にだすのは勘弁してほしいと思った。が、ヤマトが危惧したように、このことばに司令室のクルーたちの動揺は共有され、千キロメートルも離れた場所にいるコックピットにまで伝わってきた。
「アスカ、ユウキ、平常心だ」
「心配はいらない、タケルくん。亜獣がしゃべったくらいで動じたりなどしないさ」
コウキは力強くそれに答えたが、アスカは憤慨をあらわにして鼻でわらってみせた。
「は、しゃべる亜獣なんかはじめてじゃないでしょう。レイの母親はしつこくレイをなじったし、あたしは、兄に化けた亜獣に説教されてんだから」
さすがだ——。
ヤマトは二人の落ち着き払った姿勢を高く評価した。
だがヤマト自身はそうではなかった。
じぶんからふたりに忠告していながら、足が震え出しそうなほどの衝撃を受けていた。自分が怖れていた方向に、自分が心底避けたかった事態に、粛々とむかっているのが、肌で感じられた。
そのとき、アスカがなにかに気づいて刮目した。
「いやだ。あいつ、イオージャだわ」
「イオージャ?。アスカくん。たしかに似てはいるが、あんなに可愛らしい生物がイオージャのわけあるまい?」
「いいえ。あれは本物のイオージャよ。あの口元みて!。さっきあたしが槍先で切り裂いた痕がある」
そう言って輝舳と名乗った小動物の口元を強制的にクローズ・アップにした。アスカの主張どおり、たしかに左側の口元は裂けており、そこからまだ血が惨んでいた。
「アスカくん。きみの言う通りかもしれない」
ユウキが意見に賛同するやいなや、アスカは拡声器のスイッチをオンにして、外にむかって声をあげた。
「ちょっとぉ、輝舳だっけ。あんた、さっきあたしに口元を切り裂かれた亜獣でしょ?」
「ああ、君はさっき上から狙ってきたヤツだね」
キーヘーが屈託もなく返事をした。とたんに司令部の空気がゾワッと震えたのが、ヤマトにはモニタ画面を通してもわかった。
しゃべるだけではなく。こちらのことばを理解し、受けこたえする亜獣——。
そのなかでもエドや金田日の驚愕や困惑は、ほかの人たちの比ではない。亜獣と直接コンタクトができることなど夢にも思わなかっただろう。
「80年間、100体との戦いで一度もこんなことは……」
金田日の口から恨み節とも、言い訳ともいえないことばがこぼれでる。
司令室からミサトがボソリと呟く声が漏れ聞こえた。
ヤマトはこのイレギュラーが発生した事態で、動揺しているとわかることばを、司令官が迂闊に口にだすのは勘弁してほしいと思った。が、ヤマトが危惧したように、このことばに司令室のクルーたちの動揺は共有され、千キロメートルも離れた場所にいるコックピットにまで伝わってきた。
「アスカ、ユウキ、平常心だ」
「心配はいらない、タケルくん。亜獣がしゃべったくらいで動じたりなどしないさ」
コウキは力強くそれに答えたが、アスカは憤慨をあらわにして鼻でわらってみせた。
「は、しゃべる亜獣なんかはじめてじゃないでしょう。レイの母親はしつこくレイをなじったし、あたしは、兄に化けた亜獣に説教されてんだから」
さすがだ——。
ヤマトは二人の落ち着き払った姿勢を高く評価した。
だがヤマト自身はそうではなかった。
じぶんからふたりに忠告していながら、足が震え出しそうなほどの衝撃を受けていた。自分が怖れていた方向に、自分が心底避けたかった事態に、粛々とむかっているのが、肌で感じられた。
そのとき、アスカがなにかに気づいて刮目した。
「いやだ。あいつ、イオージャだわ」
「イオージャ?。アスカくん。たしかに似てはいるが、あんなに可愛らしい生物がイオージャのわけあるまい?」
「いいえ。あれは本物のイオージャよ。あの口元みて!。さっきあたしが槍先で切り裂いた痕がある」
そう言って輝舳と名乗った小動物の口元を強制的にクローズ・アップにした。アスカの主張どおり、たしかに左側の口元は裂けており、そこからまだ血が惨んでいた。
「アスカくん。きみの言う通りかもしれない」
ユウキが意見に賛同するやいなや、アスカは拡声器のスイッチをオンにして、外にむかって声をあげた。
「ちょっとぉ、輝舳だっけ。あんた、さっきあたしに口元を切り裂かれた亜獣でしょ?」
「ああ、君はさっき上から狙ってきたヤツだね」
キーヘーが屈託もなく返事をした。とたんに司令部の空気がゾワッと震えたのが、ヤマトにはモニタ画面を通してもわかった。
しゃべるだけではなく。こちらのことばを理解し、受けこたえする亜獣——。
そのなかでもエドや金田日の驚愕や困惑は、ほかの人たちの比ではない。亜獣と直接コンタクトができることなど夢にも思わなかっただろう。
「80年間、100体との戦いで一度もこんなことは……」
金田日の口から恨み節とも、言い訳ともいえないことばがこぼれでる。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
全ての悩みを解決した先に
夢破れる
SF
「もし59歳の自分が、30年前の自分に人生の答えを教えられるとしたら――」
成功者となった未来の自分が、悩める過去の自分を救うために時を超えて出会う、
新しい形の自分探しストーリー。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる