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第三章 第二節 魔法少女大戦

第433話 ヤマトタケル、降下を中止して!

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『あなた実戦はまだでしょ』
 アスカにそう指摘されてユウキは急に自信が萎えていくのを感じた。それは恥じいることでも、卑下することでもなかったが、自分がまだ戦力として認められていないと、あらためて気づかされた。
 それでも仲間としては認めてもらっている——。
 それだけでも大きな前進だ。たった0・03%の血の濃さの違いで、あれほど毛嫌いされて侮蔑の対象となってきたことを考えれば、あのアスカにそう言わせたのだから長足の進歩と胸をはっていいのではないか……。 
 いやわたしはそれだけではまだ足りない。真からの信頼を手にするには、亜獣を倒すことは絶対なのだ。
「パイロット各位、準備して。もうすぐ東京トンキンに到着するわ」
 ミライの警告を聞くなり、ユウキはすばやくモニタ画面全部に目を走らせた。
 イオージャと魔法少女の殺戮さつりくはまだとまる様子はなく、すでに1000人を超える人々が犠牲になっていることがわかった。
 ユウキはヤマトタケルの映るモニタにむかって最終確認をした。
「タケルくん、プランAを最終決定でいいかな」
「あぁ。プランAのままでいい。アスカとユウキが魔法少女を引きつけて、その間に、イオージャをぼくが討つ」
「いいわよ。こっちはまだリハビリ中だから、大物の相手はタケルに譲ったげる」
「では、わたしはアスカくんと、魔法少女たちの徹底的な殲滅せんめつに努めるとしよう」
 
 亜獣本体を真っ向に相手にできないのは残念だったが、一撃必殺のある相手に軽々しい気持ちで臨めないのも確かだった。
「そろそろ降下にはいる。スタンバイを」
 ヤマトがそう言った瞬間だった。
「ヤマトタケル、降下を中止して!」
 カツライ・ミサトの声でストップがかかった。とてもせっぱ詰まった声色。ただならぬ事態を予感させる。
「各位、降下準備中止。その場で待機」
 すぐさまヤマトがミサトの指示に従った。
「ミサトさん、どういうことです。こんなギリギリのタイミングで!」
 命令をすぐに履行したものの、このタイミングでの無茶な指示にヤマトはすこし機嫌がわるそうに言った。が、それに答えたのはミサトではなく、草薙大佐だった。

「タケルくん、申し訳ない。カツライ司令に止めてもらったのはわたし……」
「なにがあったんです?」
 タケルの声色がすぐに変わった。
 ユウキはその様子にただならぬことが起きたと感じた。ヤマトが人前でこんなにあからさまに態度を変えるのは見たことがなかったからだ。
 草薙大佐がこれだけ無茶を通したのは、喫緊きっきんの事態が起きたからに違いない。そしてそのことは、ユウキたち以上に、ヤマト本人がわかっていることなのだろう。

「死体が逃げ出したの」
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