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第三章 第二節 魔法少女大戦

第386話 こんな屈辱はない——

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 その時、ヤマトが意見を口にした。
「ぼく個人としては、この作戦はやはり承服できないね。しかもまちがいなくぼくの命が助からないのではなおさらね」
 ヤマトがエドの方を見て続けた。
「可能性を示してくれたことには感謝するけど、ぼくは草薙大佐の、世界中の電源を止めるという作戦を支持したい。一万人はいると推定されている魔法少女が、戦いの場に参加してくるのは願い下げたい。ふたたびイオージャと共に現れたら、ぼくらの戦いのおおきな障害になる……」
 ヤマトがことばを切ったところで、クララが深く感じ入る様子で口をひらいた。
「前回、レイさんやユウキさんのおかげで、なんとか無事に帰り着きました。でもあれは魔法少女の数がすくなかったからです。次の戦いでもし魔法少女の数が増えたら、今度はあの魔法を『移行領域』のベールで回避できないかもしれない……」
「そう。電撃攻撃浴びて動けなくなったところ、狙い撃ちされたら、クララのセラ・ジュピターがバラバラに解体されちゃうかもしれない」
 レイがクララのほうを見ることもなくぼそりと意見を述べた。当事者でしかも窮地という窮地を巧みに脱したレイのことばは、ことのほか重たく会議の席の全員に響いた。ユウキがクララをかばうように、あわてて口を差し挟む。
「レイくん。クララくんに限った話ではない。数千人の魔法少女にもしとり囲まれたら、だれだってやられる可能性があるのではないかね」
「そ、そうよ。このあたしだって、一瞬の隙をつかれて、腕を吹き飛ばされたことがあるのよ。あの数に取り囲まれたら、どこかしらの隙をつかれるにきまってるわ」
 アスカがクララを励ますように声高に言った。
 エドはアスカらしくない——と思った。
 いままではいつもその場で一番有利になる『ペルソナ』をかぶって、自分中心にその場をたくみに支配しようとしていた。『仲間思い』などというのは今いちばんアスカに似つかわしくない『ペルソナ』だ。
 エドはなんとなくそう感じながら、今自分がもっとも無様なペルソナを演じていると自虐的に思いはじめた。演じたくて演じているわけではない。本来ならみなに讚えられて、その作戦の指揮に参画している晴れがましい自分を演じているはずだった。

 こんな屈辱はない——。

「一人で二人でも減らせてもらえるなら、魔法少女の巣窟を発見して欲しい」
 レイが珍しく懇願しているような口調でみんなに訴えていた。
「イオージャ単体なら、たぶん簡単にやっつけられたはずだから……」
「マジなのぉ」
 レイの意見を聞いてミサトが反応した。だが、その口調にはまだ煮えきれなていない。すこしでも否定的ニュアンスを会議の場に残そうとしているように感じられた。

 だがエドにはそんなことはもはやどうでもよかった。
 エドの頭の中には屈辱の思いがいっぱい満たされていた。そしてそれと同時に、どうすればそれを挽回できるかというリベンジの要求がもたげてきた。
 今の自分には自分の失墜した信用を回復する手だてはなにもなかった。
 
 最高の切り札をすでに切ってしまっていたのだから……。

 どうすればいい?。
 疑問符だけが頭の中を堂々巡りする。

 その時、ふっと天啓のようなものが閃いた。ちらりと金田日のほうを見る。
 そうだ。この男が言っていたではないか。この基地内に魔法少女がいるかもしれないと。

 もしそれを自分が誰よりも先んじて見つけることができたら……。
 自らの手でその謎を解明することができたとしたら……。


 エドは口元に笑みがついて出てくるをとめられなかった。
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