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第三章 第二節 魔法少女大戦

第380話 対魔法少女、青山通りでの攻防

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 国連軍の敷地内へ侵入してきた魔法少女たちは、シミュレーション・エリアの手前にある資材置き場の上空に達していた。あと数百メートルで建物内に侵入してくる。
 が、その資材置き場に隠しておいた『レーザー砲』が、光の針山を上空に解き放つ。
 空中に隙間なく光の針が埋め尽くし、通り抜けようとした魔法少女を串刺しにしていく。さらにはるか上空に待機していた『エア・バイク』部隊が、下方にむけて『ガトリング・レーザー』の雨を降らせる。後部座席に乗った射撃手がレーザー光線を土砂降りにまき散らしている合間に、操縦士のほうは通常の『ガトリング銃』で、チタニウム合金の弾を地面に打ちつけていく。
 上下から挟み撃ち、しかもレーザーと弾丸のデュアル攻撃。
 魔法少女たちはその猛攻撃を防ぎきれなかったり、不完全なベールの隙間から攻撃を浴びたりして、ボタボタと地面に落ちていく。
 資材置き場の屋根をつき破る者、窓や壁に激しく激突しグチャッと潰れてしまう者。たちまち地面には魔法少女の死体が転がりはじめる。
 だが、それで削れた魔法少女の数は2割くらい——。
 ほとんどの魔法少女がそれらをいとも簡単にすり抜けた。彼女たちはすぐさま数人で手をつないで、全方位に移行領域(トランジショナル・ゾーン)のベールをおおきく広げる。
 魔法少女のグループがシミュレーション・エリアに突入してくる。
 いくつもの魔法少女が塊になったまま市街地に到達する。

「くるぞ!。油断するな」
 草薙がモニタを見ながら、兵士たちに檄をとばす。
 真っ黒に塗りつぶされた渋谷の街に魔法少女が飛び込んでくる。
 だが真っ黒なビル・看板・道路・空中回廊・標識などのなかでは、魔法少女たちのパステルカラーの衣装は、かっこうの標的と言わんばかりだ。

 おもったより多い——。 

 草薙は作戦室のAIのカウントデータを見ながらそう呟く。本来の計画では半分以下になっている予定——。だが、モニタには現存率63%と点滅している。

 青山通りを滑空してきた魔法少女は渋谷のスクランブル交差点方向を目指す。
 そこに日本国防軍の精鋭が待ち受けている。
 青山通り沿いにあるすべてのビルの一階部分や歩道に、日本国防軍は重火器を設置している。通りを挟んだ両岸に敷設された兵器の数はかるく百基を超える。
 魔法少女が青山通りに侵入してくると、日本国防軍が道路の両岸から攻撃がはじまる。 青山通りを挟んだ近距離で、両側のビルから惜しげもなく放たれるミサイル。
 ミサイルがお互いの対面にあるビルの高層階を直撃し、上からガラスやビルの破片が落ちてくる。だがその威力は圧倒的で、奇襲をうけた先頭の群れは、あっという間に蜂の巣になっていく。地面に次々と墜落していく魔法少女。
 上下に移行領域(トランジショナル・ゾーン)のベールを展開していたせいで、両側からの攻撃に瞬時に反応できなかった連中だ。
 だが、そのすぐうしろの群れは、すぐさま防御をととのえる。
 そしてステッキを手にすると、自分たちに不意打ちを仕掛けた日本国防軍たちにむけて振る。

「まじかるぅぅぅぅ」
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