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第三章 第二節 魔法少女大戦

第359話 この死体の写真を見てちょうだい

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「参ったな。さすが草薙大佐だ」
 ヤマトはわざとらしく肩をすくめてみせた。
「たしかにふたつの事件にはどうしても無視できない、おなじ謎がある。『どうやって持ち去ったのか』と『どうやって持ち込んだか』の違いはあるけどね」
「そう。アレを奪ったのは、おそらく龍リョウマの分身。あそこへの入室できるのはパイロットだけですものね。でもそのあとどうやってアレを持ちだしたのが疑問。あなたたちが『幽世かくりょの間』と呼んでいるあのエリアは、監視システムを免除されている。だけどそれ以外は別。あそこから出た途端、たちまち感知されるし記録にも残る。そうでしょう、タケルくん」
「えぇ。だけどどこにも記録はなかった。だからぼくは亜獣であるリョウマが、あの場所から『移行領域(トランジショナル・ゾーン)』を通り抜けさせて、持ち出したのではないかと推察しています」
「その意見を否定する論理的な解をわたしは持っていない。だからそれをそうだと肯定したとしたら、おなじように、あのフリートウッドの倉庫に誰にも気づかれずに数百体の死体を運び込んだ方法もおなじではないか、という仮説が成立する。子細に検証しても合理的疑いはない」
 草薙はうんざりと言わんばかりに吐息とともに結論を吐き出した。
「そして、どちらも人間の仕業ではなく、亜獣の仕業だという結論にいきつく」

「ええ。そこまでは、まぁ意見はおなじだとしても、草薙大佐、それがなぜ魔法少女に結びつくんです?。等身大の亜獣の可能性はあったとしても、それがすぐさま魔法少女とは言い切れないと思いますけど……」
 草薙は中空で指を動かすと、ジェスチャーで映像スクリーンを呼び出した。草薙とヤマトのあいだに3Dスクリーンが展開する。
「この報告書は極秘で手に入れたものだけど……」
 草薙はそう言いながら、バラバラになった死体の写真を映し出した。そのなかにある、女性の頭らしい写真をアップにすると、それを指でひねるようにして、180度くるりとまわしてみせた。首の切断面がヤマトのほうにむく。
「その断面をみてちょうだい」
 その断面はなにかで切断したり、ちぎれたりした痕跡がなかった。
 切断面は皮膚か脂肪で覆われており、血管や骨、脊髄などは見えないよう、きれいに表面処理されていた。切断された首というより、元々別パーツだった『首』という単体の部位のようだ。
 草薙は今度は腕や脚が映っている箇所をアップにしてみせた。こちらもおなじようにきれいに処理されていて、人間の四肢がばらばらになった、とは感じられない。
「どう感じた?」
「ずいぶん不自然なパーツですね。人間の死体を切断して処理してもこうはならない」

「ええ。まるで各部位が分解された人間の組立パーツのよう」
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