上 下
349 / 1,035
第三章 第二節 魔法少女大戦

第348話 ヤマト・タケルのたくらみ

しおりを挟む
「十三、絶対バレないよね」

 ヤマト・タケルが『リアル・ヴァーチャリティー装置』のフェイス・ラッピング・ディスプレイを、顔からはぎ取りながら言った。
 今は真夜中で、だれもが眠りについていたが、ヤマトはパイロットエリアのキッチン奥の隠し部屋にいた。一緒にいるのは沖田十三だけだった。これは国際連邦軍の連中はもちろん、アスカたちほかのパイロットたちにも気取られてはならない案件だった。
「エル様、ご心配なく。エル様がジョン・ブランドーという男の、ペルソナを乗っ取って行動していたことは一切知られることはございません」
「テンマ・セイヤか?」
「はい。前回調達した重装機甲兵『ジドム』と同様、今回も彼の仕事です」
「なら、頼みたいことがある。つなげるか?」
 ヤマトがそう言うと十三は返事をすることなく、すぐに回線を接続させた。

 伝増・星埜(テンマ・セイヤ)はすぐに繋がったが、部屋は暗くてほとんど見えなかった。モニタ画面から漏れでる光のおかげで、かろうじてそこに人がいることがわかるという状態だった。黒い影が忙しく指をヴァーチャル・コンソールにむかって動かしているのがわかる。そのスピードは尋常ではない。
 黒い影が顔をあげた。目だけしかみえない。だが、相手はヤマト・タケルであることを知って、思わず声をあげた。
「おやおや、ヤマト・タケル、珍しいね。ぼくの仕事は気に入ってもらえたかい?」
「『生体認証』や『個人ID』も問題なくすり抜けた。さすがだよ」
「ジョン・ブランドーはお堅いきみにはぴったりのペルソナだったろ。本物は今ごろちょうど叩き起こされた頃だと思うがね」 
「そうか……。彼には災難だったね。でもいい仕事だった」
「親父さんの頃からのご贔屓だからね。お役にたてて嬉しいよ。気になっていることはわかったかね?」
「今回の事件がわかって本当によかった。もうすこしで大変なことになるところだった」
「それはよかった。報告したかいがあるってもんさね」
「この事件のこともきみが十三に連絡を?」
「まぁね。なにせ、親父さん、いや、今までのデミリアンパイロットたちの遺志だからね。きな臭い事件を感知するシステムに抜かりはないよ」

「さすが、神の名を騙る男、星埜セイヤだ。助かったよ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

イヤホン型意識転送装置

廣瀬純一
SF
自分の意識を他人に転送できる世界の話

MMS ~メタル・モンキー・サーガ~

千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』 洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。 その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。 突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。 その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!! 機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!

狭間の世界

aoo
SF
平凡な日々を送る主人公が「狭間の世界」の「鍵」を持つ救世主だと知る。 記憶をなくした主人公に迫り来る組織、、、 過去の彼を知る仲間たち、、、 そして謎の少女、、、 「狭間」を巡る戦いが始まる。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

未来への転送

廣瀬純一
SF
未来に転送された男女の体が入れ替わる話

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...