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第二章 第二節 電幽霊(サイバー・ゴースト)戦
第215話 さあ、みんな、今からダンジョンで戦ってもらう
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「タケルさん。わたしのは用意されてない、ですよね」
クララはタケルに思い切って声をかけた。目の前でアスカがタケルといちゃついているのを見ていられなかった。それを指摘すれば、ヤマトもアスカも口を揃えて、それを否定するのは間違いないだろう。だが、傍からみれば心を通わせたもの同士の、戯れあいか、馴れ合いにしか思えない。
耐えがたい空間、我慢できない時間。
自分にできるのは邪魔をすることだけ。
「ごめん、クララ……」
ヤマトはクララのほうへ向き直って、許しを乞うような仕草をした。
「ちょっときみに向かないかもしれないけど、もうひとつアバターが余っているので、それを使ってもらおうと思う」
「は、クララ、あんたは余り物で充分でしょ」
たちまちアスカが雑っ返したが、ヤマトはそれには耳もかさずに、空中にメニュー画面を呼びだすと、いくつかのエリアをタップした。
「クララ、着替えてみて!」
クララは言われるがままに、手を前につきだして『着替え』のコマンドのポージングをした。たちまちからだが衣装に覆われはじめた。
変身が終わると、クララはまるで18世紀の貴婦人のようないでたちをしていた。これでもかというひらひらとしたフリルに、ドレッシーさを強調するようなドレープが幾重にもほどこされ、幾層にも重なったスカートは、腰元からおおきくふくらんでいた。ウエストはコルセットでぎゅっと絞られており、そのせいか胸元がやたら強調されて見えた。
だが、その手には不釣り合いなほどバカでかいガトリング銃が握らされていた。物理的にまったく重たさは感じられなかったが、とにかく仰々しいほど大きい。
「タケル、なによ。あの格好!!」
クララはまだ自分の姿にとまどっていたが、不機嫌さをあらわにしたアスカは、ヤマトに食ってかかっていた。
「いや、これしか余ってなかったんだ……」
ヤマトにそう弁解されると、それ以上は文句が言えないと感じたのか、今度はクララのほうへ矛先をむけてきた。
「だいたい、クララ。あんた、銃ってずるいじゃないのサ」
クララは胸が強調された服装をアスカが気に入っていないのに気づいて、わざと胸を突きだすように背をすっと伸ばして言った。
「そんなこと言われましても、わたしが用意したものじゃないですわ。タケルさんのお見立てなんですからね」
「はん、タケルも趣味がわるいわ」
「あら、アスカさん。あなたも、タケルさんが見立てたものでしょ。さっき喜んでいたような気がしましたけど……」
ふたりの小競り合いにわってはいるように、ヤマトがみんなにむかって言った。
「さあ、みんな、今からダンジョンで戦ってもらう」
「え、今すぐですか?。タケルさん」
クララはすかさず訊いたが、ヤマトは当然という顔で答えた。
「え、だってみんな武装したんだから、電幽霊と戦わないと」
「ちょっと待ってください、さっきのあんな気色わるいヤツラと戦うんですか?」
「まさかぁ。ちがうよ……」
「戦うのは、こんな弱いヤツじゃないさ」
クララは絶句しそうになったが、ここで怖じ気づいているのを、気取られたくなかったので、咽から絞り出すようにしてヤマトにこたえた。
「気色……わるくなければ……いいです」
ヤマトはそのことばを、額面通りに受け取ったのか、満足そうににっこり笑うと、中空によびだしたメニューを操作しはじめた。ヤマトはいくつかのキーをタッチしてから、クルリとみんなのほうを振り向いて言った。
「あぁ、ごめん。どのルートも気持ち悪いのは我慢してもらうしかなさそうだ」
「ちょっとぉ……」
クララよりさきにアスカが口を開きかけたところで、目の前の風景がふっと消え、次の瞬間には、見たこともないような別の場所に移動していた。
クララはタケルに思い切って声をかけた。目の前でアスカがタケルといちゃついているのを見ていられなかった。それを指摘すれば、ヤマトもアスカも口を揃えて、それを否定するのは間違いないだろう。だが、傍からみれば心を通わせたもの同士の、戯れあいか、馴れ合いにしか思えない。
耐えがたい空間、我慢できない時間。
自分にできるのは邪魔をすることだけ。
「ごめん、クララ……」
ヤマトはクララのほうへ向き直って、許しを乞うような仕草をした。
「ちょっときみに向かないかもしれないけど、もうひとつアバターが余っているので、それを使ってもらおうと思う」
「は、クララ、あんたは余り物で充分でしょ」
たちまちアスカが雑っ返したが、ヤマトはそれには耳もかさずに、空中にメニュー画面を呼びだすと、いくつかのエリアをタップした。
「クララ、着替えてみて!」
クララは言われるがままに、手を前につきだして『着替え』のコマンドのポージングをした。たちまちからだが衣装に覆われはじめた。
変身が終わると、クララはまるで18世紀の貴婦人のようないでたちをしていた。これでもかというひらひらとしたフリルに、ドレッシーさを強調するようなドレープが幾重にもほどこされ、幾層にも重なったスカートは、腰元からおおきくふくらんでいた。ウエストはコルセットでぎゅっと絞られており、そのせいか胸元がやたら強調されて見えた。
だが、その手には不釣り合いなほどバカでかいガトリング銃が握らされていた。物理的にまったく重たさは感じられなかったが、とにかく仰々しいほど大きい。
「タケル、なによ。あの格好!!」
クララはまだ自分の姿にとまどっていたが、不機嫌さをあらわにしたアスカは、ヤマトに食ってかかっていた。
「いや、これしか余ってなかったんだ……」
ヤマトにそう弁解されると、それ以上は文句が言えないと感じたのか、今度はクララのほうへ矛先をむけてきた。
「だいたい、クララ。あんた、銃ってずるいじゃないのサ」
クララは胸が強調された服装をアスカが気に入っていないのに気づいて、わざと胸を突きだすように背をすっと伸ばして言った。
「そんなこと言われましても、わたしが用意したものじゃないですわ。タケルさんのお見立てなんですからね」
「はん、タケルも趣味がわるいわ」
「あら、アスカさん。あなたも、タケルさんが見立てたものでしょ。さっき喜んでいたような気がしましたけど……」
ふたりの小競り合いにわってはいるように、ヤマトがみんなにむかって言った。
「さあ、みんな、今からダンジョンで戦ってもらう」
「え、今すぐですか?。タケルさん」
クララはすかさず訊いたが、ヤマトは当然という顔で答えた。
「え、だってみんな武装したんだから、電幽霊と戦わないと」
「ちょっと待ってください、さっきのあんな気色わるいヤツラと戦うんですか?」
「まさかぁ。ちがうよ……」
「戦うのは、こんな弱いヤツじゃないさ」
クララは絶句しそうになったが、ここで怖じ気づいているのを、気取られたくなかったので、咽から絞り出すようにしてヤマトにこたえた。
「気色……わるくなければ……いいです」
ヤマトはそのことばを、額面通りに受け取ったのか、満足そうににっこり笑うと、中空によびだしたメニューを操作しはじめた。ヤマトはいくつかのキーをタッチしてから、クルリとみんなのほうを振り向いて言った。
「あぁ、ごめん。どのルートも気持ち悪いのは我慢してもらうしかなさそうだ」
「ちょっとぉ……」
クララよりさきにアスカが口を開きかけたところで、目の前の風景がふっと消え、次の瞬間には、見たこともないような別の場所に移動していた。
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