猛毒の果実はとても甘い

6個目 もう1人の青年は、苦味を知っていた。

小学6年の夏まで、俺には1人の大親友がいた。
そいつの名前は、鹿島太陽。
名前の通り、とても明るくて、優しい奴だった。2年の時に転校してきた俺に、1番に話しかけてくれた。その明るい笑顔に、
僕は虜になってしまった。

俺は、太陽のお陰で、友達が何人かできた。毎日が楽しかった。

太陽とは、家が近くて、一緒に帰っていた。
この学校の近くについてや、クラスについて、太陽自身のことを教えてくれた。



6年の夏、太陽は転校することになった。
お別れ会では、クラスの全員が、明るくて優しくて、人気者の太陽がいなくなることを悲しんでいた。


放課後、俺と太陽は、屋上にいた。
そして、太陽が言い残した言葉。
「僕は転校が辛い。それは、みんなに執着してたからかな？失った時にわかるんだよね、こーゆーのって！」
「太陽…」
太陽は笑っているけど…

「執着って、怖い」

太陽は笑った顔に、涙を浮かべて走り去った。



1人に人に執着すると、
失った時にとても苦い。
自分の太陽が居なくなって、前が見えない。


中学からは、普通に友達を作った。
意外とモテるらしい自分は、彼女もできた。
苦いものはもう無かった。
でも、甘くも無かった。
あの時以上の甘さって、あるのだろうか。


本当に、人を好きになったら、甘いのだろうか